第6話

8日目

きょうこそ 彼女の名前を聞こう

今更おかしな話しだが

君の名前は?って言ったら

戸惑うだろうな…そんなことを考えながら いつもの呼び出し音が 雑音に変わるのを待った

「おはよう!ご機嫌はどう?」

しばらくガサゴソとした音の中から

急に「こうちゃん usaねぇ……」


その名前に 僕の心の中で

何かが爆発した!!

全身が痺れて 意識が薄れていくような気配の中で 携帯からではなく 記憶の中の兎沙が 僕に語りかけてくる


「珍しい?兎沙の名前? 母さんがね私を産んだ日 窓から満月が見えて 兎がお餅をついていたんだって!それを見て 兎沙って付けたんだよ 笑えるよね」そう言って兎沙はケラケラ笑った

大好きだった

兎沙の笑顔が大好きだった


次から次へと

兎沙の言葉と いくつもの表情が

僕を埋め尽くしていく

真剣な顔や 泣いた顔 怒った顔

そうだ!

朝が大の苦手の兎沙

だから 出来る限り モーニングコールをした


付き合って5年目

「こうちゃん いっしょに住むなら20歳の最後がいいな 30歳から二人でスタートするの ふたりでクラウチングスタートだよ!ハハハハ」

その時も 兎沙は笑っていた


愛していた

誰よりも彼女を愛していた

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