月のウサギ 短編小説 EP1〜EP11完結

N.仁奈子

第1話

僕は外資系IT企業に勤める

澤木厚一 29歳

取り立てて イケメンでもないし

際立つ特技があるわけでもない


大学を出て将来を見据えて

今の会社を選んだが

小難しそうな面接官の

メガネのテンプルを触る癖を

冷ややかに見ながら

何度となく予習した志望動機を

スラスラと答えていた


気が付けば 入社後7年

そろそろ中堅クラスの年齢になっていた


今朝はどんよりと曇った空で

窓から見える木々の緑に

しずくが見える

昨夜降りだした雨は朝方まで

続いていたのだろうか

今年の梅雨は例年と違う

7月も半ばになるのに

朝晩は冷んやりとしている


きょうはテレワークで

出社する予定はない

なのにいつもどおりの6時に

目が覚めてしまった

窓のカーテンを引こうとして

ふと、同僚のアレンに連絡することを思い出した


彼はきょうフレックスタイムを使うから

そろそろ会社に向かっている頃だ

携帯を手にした時 ふと思い出した

そう言えばアレンに 番号を渡されていた

いつもの携帯が使えなくなっているらしい

どうも彼女とトラブルがあったみたいだ

それはいずれ彼から聞かされることになるだろう


それより そのメモ メモ!

彼のダイアリーの1枚をちぎった紙片を見つけた

そこには11桁の数字が並んでいた

彼は何人の人に コレを渡したのだろうと思いながら

僕は携帯のキーパッドに 数字を並べていった

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月のウサギ 短編小説 EP1〜EP11完結 N.仁奈子 @n-ninako

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