第18話 課題テスト、その結果③
「どっちの方が点が高いと思う?」
北山さんも、一体どちらがテストで高得点を取ったのか気にはなるのだろう。
だが、あまりにも真剣過ぎる二人に割って入る度胸はなかったらしい。
テストごときに
「そりゃ、宮野じゃないの」
僕は即答する。
入学してから今までのテスト全てで、学年トップを逃したことの無い神崎さん。
今まで勉強しなかったにもかかわらず学年トップクラスの学力を有する宮野。
その二人が、片や学年トップの
今回の課題テスト、この二人のどちらかが学年トップで、もう片方がそれに次ぐ高得点をたたき出していると見て間違いないだろう。
そして経験上、身贔屓かもしれないが、宮野がコミュニケーション以外で誰かに劣るとは考えづらい。
「私は美空の勝ちに一票かな、学年トップの座は伊達じゃないよ」
「いやいや、流石の神崎さんも、全力を出した宮野には及ばないんじゃね」
「美空の方が凄いもん!」
「おいおい、ウチの宮野をなめんなよ。アイツが
身贔屓なのは北山さんも同じようだ。
僕と北山さんはその場で、友達自慢合戦を始まり──、
「そういや、アイツらはまだテスト結果を見比べてるのかな?」
そこでふと、宮野たちが静まり返ってることに今更ながら気がついた。
テストの点数や順位を見せ合い、比較するだけならそんなに時間はかからないはずなんだが……。
かといって、結果が出ているなら今頃、勝ち負けに関係なしに宮野が
「そうだね。何かあったのかな、誤字でもあったとか?」
「ちょっと確認してこようか」
「それはいいけど、ホラーやミステリーだと、今の村上君みたいに他人の様子確認しに行った人とか、確認しに行く原因になった人達ってよく死ぬよね。カップルの次くらいの確率で」
「何故そんなことを思ったのかは知らないけど、それだと最悪北山さん以外全員死亡だよ」
「それってつまり、究極の放置プレイ?」
「笑顔でなんてこと言うんだ。少なくても殺人事件だった場合、犯人は消去法で北山さんだよ」
「文字通り、人を消していった結果だね」
誰も、上手いこと言えだなんて言ってない。
そんなことを思いながら、宮野たちに視線を向けると二人揃って、気まずそうというかその……とにかく微妙な顔をしていた。
「そんな顔してどうしたの、二人とも」
「……あぁ、村上か」
「うん村上だよ。で、テストの点はどっちの方が高かったの?」
「実は……」
神崎さんから二人分の、テスト結果報告書を手渡される。
僕はそれを、隣から覗き込んできた北山さんと一緒に、宮野と神崎さんのテストの結果を確認する。
どれどれ、テストの点はいかほどか……。
────…………。
興味本位で見て思わず、沈黙する。
ある意味予想通り。けれどやっぱり予想外。
そんな、実際に目にする機会がなく、見たら驚かずにはいられない結果が、報告書に記されていた。
「スゴいね」
北山さんの口から驚きの声が出た。
だが、おそらく意識して口にしたわけではない。
僕には、北山さんが驚かずにいられなかったその気持ちが理解できた。
北山さんが見ていた二枚の報告書。
そこにはただ、全教科満点という結果が記載されていた。
「そうだね」
北山さんのつぶやきに同意する。
まさか二人とも満点を取るとは……。
うちの学校の課題テストは三教科のみであり、また、出題内容も難しかしくはないがその分、定期テストよりも幅広い範囲から出題される。
昨年に習った内容全ての復習と、今年の一学期に習う内容の予習。
その二つをしっかりしておかないと、満点を取れない仕様になっているそうだ。
そのため、そこそこの点数は誰でも取れるが、八十点以上の高得点、ましてや満点を取れる生徒はなかなかいない。
そういったことを前に僕たちの担任教師、松倉先生は言っていた、そんな気がする。
そこまで思って、僕は報告書から目を離す。
二人とも満点というのはわかった。
「──で、二人の学年一位様はなんでそんな微妙な顔をしているの?」
「「勝てないわけない、って言っておきながら引き分けという微妙な結果だったからですが何か」」
「アンタら一周まわって、ただのバカだろ」
賢すぎるのも考えものだ。
「美空って、そういうところあるよね」
「別に、対決相手に負けたわけじゃないんだから、学年トップという結果を素直に喜べよ。理想を高く持つなと言うつもりはないけどな、かといって高すぎる理想にとらわれてると現実にある幸せを取り逃がすぞ」
「村上……」
「というか、それでいったら五十六位の僕はどうするんだよ。こっちが惨めになるじゃねーか、人の気持ちを少しは考えろ!」
「お前は本当にシリアスが長続きしないな」
「僕の気持ちを考えろ! ってことだね」
「村上さんはもう少し勉強をするべきだと思いますよ」
「そうだな、また勉強会でもするか」
「いいんじゃないかな。美空はどう?」
「もちろん大丈夫よ」
僕を置いて勉強会の話で盛り上がる。
少々不本意な方向にではあるけど、どうやら微妙な雰囲気は解消できたようだ。
そう判断した僕は、ひとまず現在の会話を断ち切るために大きく音を鳴らすように気を配り、手を叩く。
パァン!!!
「「「!?」」」
「勉強会もいいけどさ──」
音に驚いてこちらを向く三人。
予想以上に驚いてる様をおかしく感じながら一つ提案する。
「折角テストが終わったんだ。なら、勉強会よりもまず──やるでしょ、打ち上げ」
打ち上げをするという発想がないのか、あるいは僕がみんなで遊びに行くことを提案したことが不思議だったのか。
三人は揃って首を傾げた。
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