第4話 これが僕の日常ではありません! ②

「では時間もなくなってきたことだし、おっぱいの話はいったん置いといて、そろそろ用件を聞こうか」

「置いておくだけなんだね……」



 とりあえず生乳を見せてもらうのは後回しにして用件を聞くことにした。

 気がつけばいつの間にか残り20分くらいあった休み時間が残り5分を切っていたからだ。

 別に、北山さんの殺意に屈したってわけじゃないんだからね!

 あと、別にどうでもいいことだが—―



「休み時間が残り少なくなったのは誰のせいでもなく、多分世界のせいだと思う」

「ねぇ、一体誰に向けて喋っているの?」



 あえて言うなら読者に向けてである。



「というか、時間がなくなってきたのは、村上君が土下座や泣き落としとあらゆる手段を用いて、生乳をいやらしい目で見ようとしてたからだよね」

「ふむ、要するにその原因を作った北山さんのせい、と言いたいんだね」

「全然違うよ村上君⁉」



 一体何が違うのだろう? 100パーセント間違ってない気がするけど、女子と男子では感じ方が違うのかな?

 男子にとって女心はいつだって不可解だ、まったく理解できない。



「それに私はよこしまな村上君とは違うんだよ!」

「ほう、何を根拠に僕が邪でお前は違うというのかな⁉」



 ぜひとも聞かしてもらおうではないか⁉



「私の場合は村上君性欲の権化と違って」

「ん? 今僕の名前を変な風に読まルビが降られてなかった?」



 聞き間違いかな?

 うん、聞き間違いだな!



「全力で私のおっぱいを見ようとした性欲の権化と違って、」

「別に村上君性欲の権化を性欲の権化に直してほかったわけではないんだよ⁉ってか聞き間違いじゃなかったのね、コンチクショー!」

「ただいやらしい視線を堪能したかっただけで本当に見てほしかったわけじゃないから私は悪くないよ!」

「おっと、どうやら頭が悪いようですね」

「なんでそうなるの村上君!?」

「むしろなんで意外そうなリアクションが出来るの北山さん!?」



 むしろ僕が意表を突かれたよ!

 あと、薄々思っていたけどこの人ってマゾの気があるよね⁉なんか反応に困っ興奮しちゃうからやめて!



「ってか、また話がそれてるよ北山さん⁉」

「今回キミのせいだよね村上君⁉」

「なんだと⁉大体な—―」



 この後しばらく女子相手にガチの喧嘩をした挙句、5限目の授業をサボってしまったのは余談である。




 ■ ■ ■




 ―—約45分後。


 屋上には激闘の末、傷だらけの格好で倒れ伏している者と、数ヶ所だけ傷を負って顔を赤くして震えている者(恍惚とした表情をしているように見えなくはないけど気のせいはずだ)がいた。


痛みをこらえて体を起こす。



「よし、不毛な争いはやめてそろそろ用件を聞こうか」(←全身ズタボロで起き上がれない人)

「ハァハァ……さっきも似たやったような気がするんたけど」(←ほぼ無傷な人)



 お願いだからそういう事言うのやめて、パターンから推測するに話が前に進まなくなっちゃうから!

 いや、さすがにそんなことにならないか…うん、そうだよね、大丈夫だよね!それにほら、3回目と言えばこんなことわざがあったはず、確か——



「二度あることは三度ある?」

「あってたまるか!」



 なんで人の心を読んだ挙句に心の中でのセリフを遮ってまでボケるの⁉ ってか、なんで心の声読めるんだよ⁉ 今更だけど怖えーよ、思考もツッコミも追いつかねーよッ!

 もうなんなの、この人僕に用があったんじゃなかったの⁉

 読者様に申し訳ないレベルで話が前に進んでないよ、ぐだぐだだよッ!


 ちなみに僕が言いたかったの正解は『三度目の正直』である。



「——ふふ、ふふふっ」

「?」



 僕が頭を抱えていると一体何がおかしかったのかはわからないが北山さんは急に笑い始めた。


 一体何がそんなにおかしかったのだろう?

 もし僕が頭を抱えている姿を笑っているのならば彼女はきっと酷い性格の持ち主だろう。なぜって、今僕が頭を抱えているのは北山さんがさっさと本題に入らないせいで昼休みの大半第3話を無駄にしたのが原因なのだし。

 さっさと乳房を見せてくれてたらもっと早く本題に入れていったというのに。


「なんか責任転嫁されている気がするんだけど村上君」

「気のせいですよ北山さん」



 全く、北山さんは何を言っているのだろう。

 そんなことよりも早く本題に入って欲しいものである。


 そんなことを思っていると今度は困ったような苦笑いを北山さんは浮かべていた。

 一体どうしたのだろう、なにか相談しづらいような事なのかな?

 まぁ確かに人目を気にせず話すためにわざわざ屋上に来ないといけないような内容な可能性は高いかもだけど……。



「大丈夫、わたしにとっては重要な話だけど村上君てきにはそんなに大したことことじゃないから」

「確かにそうかもなぁ、今僕にとって大したことなのは、ナチュラルに僕の心が読まれてるだからね」



 心の中の言葉に返事を返さないで欲しい、割とビックリするから。



「別に心を読んでるわけじゃなくてただ単に君の場合、顔や態度に出てるだけなんだけど」

「ダダ漏れ過ぎだろ僕の心!?」



 そこまで表情に出てたかな!? 別に隠してるつもりもなかったけれどもっ。



「楽しい雑談はこれくらいにして」

「え、そんな要素あった?」

「そろそろ本題を話そうか」

「あ、僕の言葉はスルーですね、はい」



 なにはともあれ、やっと本題に入るみたいだ。


 ……とはいえ、僕としては今更感が半端なかった。

 だってここに呼び出された用件について今までのやりとりでなんとなく察しがついてたし……。


 今まで人気のない場所に呼ばれたことは何度かあった。まぁ、そのほとんどがカツアゲやリンチとかだったけど……。

 けど、北山さんの場合はそういったことカツアゲやリンチが目的ではないだろう。

 それが目的なら僕をボコッた時に達成しているだろうし、今話した感じ北山さんはそういうのを好まないだろう。

 ……される側なら歓迎しそうだが。北山さんの性格M属性的に。

 となれば残る可能性は限られてくる。



「実は村上君に頼みがあるんだ」

「へぇ」



 やっぱりか……。

 陰キャに女子がわざわざこんな所に呼び出してまでする話って他にないよね。うん、分かってた。

 今までも似たようなことはあったんだ。


 僕なんかをわざわざ呼び出してする話、そう、それは『恋の話』──宮野と恋人になるためのキューピット役のお願いをおいて他にいない!




「一体どんな内容?それ次第では協力するよ」



 一応聞くだけ聞いてみるけど多分手伝わない。

 今までもそうしてきた。

 だって他人の恋の手伝いなんてめんどくさいし。



「そう、ありがとう。頼みたいことっていうのはね──」

「うん」



 さぁ来い、心の準備は出来ている!



美空私の親友宮野君の友達を恋人にする手伝いをして欲しいの」



 どうやら予想とは少し違ったようだ。

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