太郎くんの好奇心事情
@Gehirn
第1話
これは持論だが、「行き過ぎた好奇心」とは全く恐ろしいものである。
「え?何?」
がしかし、人は好奇心なくして学ぶことは不可能である。現在休み時間。あそこに三人で固まってゲームをしている生徒がいる。
「あ、うん。田中くんと山本くんと、猿投山くん?」
彼らが片手に持っている文明の機器(スマートフォン)も、それに限らずこの教室にあるものも、人が作りしものはだいたいなんらかの好奇心が生み出したものと言っても過言ではないだろう。無知だった人類が燃えさかる炎に手を伸ばしたのもはじめ好奇心からだったはずだ。好奇心というのは人類の進化、文明の発達には必要不可欠である。しかしここで問題にしたいのは「行き過ぎた好奇心」だ。こいつがいかに厄介で怖いものか、それを解説するために僕が思い浮かぶ中で一番わかりやすく代表的な例を挙げるとするならば、それは………
「それは………?」
「…うるせええっ!」
僕は横からの忌々しい相づちに思わず反応してしまった。無視しようと思っていたのに。
「ふぇっ!?…びっくりしたぁ…」
「なんなんだお前はぁ!?僕の思考に横からふにゃふにゃと!何、何なの?エスパーなの!?」
「ふにゃふにゃ?」
「擬音についてはこの際なんだって良いの!」
さっきの話じゃあないが、普段から1人でいるが故に近寄り難い生徒(自分で言うのもなんだが自覚はある。)だと思われる僕に時々近づいてくるこの少女の動機も好奇心からだろうか。だとすればそれも「行き過ぎた好奇心」であり余計なお世話である。これだから前述した通り恐ろしいのだ。
っていうかなんでこいつはのうのうと超能力使ってんの?エスパーなんて使えてたっけ。
「違うよ!わたしはもともとそんな特殊能力なんかっ…って、ことはやっぱり自覚無しってことか…」
「だから僕の脳内を覗くなって、自覚…?あぁそうか僕はまた…」
彼女いそう言われ、僕は気づいた。
どうやら僕には少し特殊な癖がある。僕の周りに驚くほど人が寄り付かなくなって行ったのは、おそらくこの“癖”というのも関係してきているかに思える。
「また僕は口に出していたのか。」
独り言、つまり思考の過程を無意識に口に出してしまう癖を持っている。
「休み時間中一度も席を立たずにずうっとブツブツ言ってるんだもん。流石の私も詠に近づくことを一回躊躇したんだよ?前はこんな感じじゃなかったのになぁ」
三上 詠。(サンジョウ エイ)それが、僕の名前だ。無意識に考えている事を口に出してしまう。どうもこれが側から見ると印象がよろしくないらしく、人が寄り付かなくなっていた。正直友達は欲しいが、いまの生活を変えてまで欲しいとは思わない。部活は未所属。趣味はサッカーの観戦だがそんなに詳しくないから同じ趣味の人の話にもあまりついていけない。
最近前髪が気になってくるぐらいに長くなってきたと感じる。現在私立枢軸高校の高校1年生だ。
そして今僕の目の前で顔に手を当てて落胆した様子を見せている少女、猪瀬 早苗(イノセサナエ)は中学校が同じだった頃からの知り合いでこの学校で僕が知っている数少ない人間のうちの1人である。美術部と文芸部に所属していておとなしい性格だと思われがちだがそんなことはなく本人曰く「部員が少ないから入ってくれってお願いされてさ
何というか私、頼みごと断るのあまり得意じゃなくて。まっ美術も文芸もやって見たら意外と楽しかったんだよ」だそうだ。放課後には友達と遊ぶのに忙しいらしく人付き合いも良好なようだ。
髪は後ろにおろしていて腰のところまで伸びている。背丈は低くもなく高くもない。意外としっかりした性格で制服は律儀に着こなしていてよくクラスの仕事も自ら引き受けている様でなにかと忙しそうだ。同じく枢軸高校1年生。
「あぁそう。それで、いつも休み時間は友達と楽しそうに会話をしている猪瀬が今日は僕のところにきたってことは何か用があるんじゃないの?」
僕は彼女に一回躊躇したがそれでも僕に近づいた用を聞いてみた。
「あっ、そうだった。詠ってさぁ…」
彼女は腕を組んだまま眉をハの字にして一見呆れたような調子で話し始めた。しかしそれは僕からすればどこか少し嬉しそうな、いやなんというか僕に対して呆れているというような感じではないような気がした。
太郎くんの好奇心事情 @Gehirn
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