第4話 何か出来ると信じていた
何か出来ると信じていたようだが、しばらく無力を感じている。
近藤のいじめを止めることなんて無理だし、ましてや近藤を救うなんて無理な話だ。
梅澤はトイレの個室ドアを開け、洗面台で手を洗う。
廊下に出れば、多くの生徒が立ち話をしていた。その所為か、騒がしい。
時は昼休みである。
一人の女子生徒が梅澤の下へ来る。
「ねぇ、さっきの時間なんか変なこと言ってたらしいね。」
スマホ片手に梅澤の顔を見ずに吐き捨てる。
「え?変なこと?」
女は少し語気を強めて言った。
「授業中、こそこそとしゃべってたらしいじゃん。それ、やめて、迷惑だから。」
きつい言葉を浴びせられている筈だが、梅澤は、
「らしい?さっきから、よくわかんないんだけど……クラスの子が盗み聞きしてたってことかな?」
梅澤は顎に手をやっている
「どうでもいいよ、そんなこと。とりあえず、やめて、うざいから。」
「えっと……どういうこと?貴方は誰?うざいってどういうこと?」
「めんどくせーな。お前さ、ちゃんと聞こえてる?注意してあげてるんだよ?素直に聞けよ?」
「ごめんなさい。誰かわからない人の話なんて聞く気はないわ。」
身体を教室に向ける。梅澤の肩が軽やかに動こうとしているとき、女の身体が梅澤の行路を遮る。
「何?」
梅澤は無視しようとするが取り巻きが邪魔する。
「だから、何?」
「何?って、こっちのセリフだわ。言ってるよね、メイワクだって。」
「メイワク?私……貴方に迷惑なことした?」
再三言っているのに、しつこく尋ねる梅澤に呆れる女。
「だから……砂川のこと、勘繰らないで。」
取り巻きは口々に耳元で話し合っている。
「砂川……さん?えっと……誰かな?差支えなければ、教えてほしんだけど。」
うろたえた女は静かに口を開く。
「近藤を苛めてる奴」
女は吐き捨てた。
「……あいつも事情があるから、だから根ほり葉ほり探らないでほしい……」
「その事情といじめは関係あるの?」
静寂が2人の間を流れる。
予鈴が鳴った。廊下にいる皆は、散々に教室に向かい始める。
「そういうことだから……余計なことしないで」
流れに乗るように女含む取り巻きは歩き出す。
梅澤はさっと身体を縦にして女らを避けた。
「余計なこと?いじめを止められて何か不都合な点でもあるのかな?」
梅澤は疑問を口にした。
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