裏切り

翌日の土曜日、徹は仕事だと言い家を出る。

今日は一緒にデートをする約束だったのに・・・。仕方ない、家の事をやるか。

ポンっと携帯が鳴る。

桐谷からだ・・・。

『今日は徹いる?』

『仕事行ったよ』

今さら何の用だろうか。

『お茶しない?』

『徹が嫌がるから行かない』

軽々しくお茶に誘うなんてどういうつもり?

『徹に内緒で話があるんだ、聞いてくれないかな』

昨日の私なら嬉しがっていたかもしれない。

渋々、行くことになった。

徹に内緒で話があるってどんな話よ!

いつも乗らない電車を使い、待ち合わせ場所まで行く。

桐谷は駅の銅像の前にいる。

「桐谷くん」

手を振って呼ぶとすぐに気づく。

「ゆうりちゃん!」

お洒落なカフェへ案内された。

「どうしたの?話って何??」

席に着いてカフェラテを一口飲む。

「ゆうりちゃん、ごめん!!」

突然どうしたんだろうか。

「ゆうりちゃんに会いたくて話があるって口実で呼び出したんだ」

逢いたいって言えば来ないだろうと言う。

確かに逢う必要はないしね。

「徹に悪いと思うんだけど、俺ゆうりちゃんの事・・・好きだ」

目が点になってしまった。

友達だって言ってたのに・・・。

「ゆうりちゃんの事、友達だって言ったのは照れ隠しなんだよ。徹に悪いと思ったし、だけどやっぱり考えちゃって・・・」

わたしだってそうだ。

彼の髪に触れる。

彼はその手を取り、見つめてくる。

わたしは目を閉じる。

彼の唇とわたしの唇が重なる。

微かにコーヒーの味がする。

唇を離し、目を開けると桐谷は微笑んだ。

「ゆうりちゃん、嬉しいよ。あの時のメールで俺、へこんでた。なんであんなこと送ったのかって」

「ううん、いいの」

「この事・・・絶対に内緒な」

わたしはこくりと頷く。

こんなこと徹には絶対に言えない。








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