プラトニック・ラブ

夕方になり、桐谷は車で家まで送ってくれた。

あのあと、カフェで時間が許すまで2人で話していた。

家に着き、シャワーで桐谷の香りを落とす。

キスをしたときについてしまった香水がほのかに香る。

髪の毛を洗いながら、唇を手に当てる。キスした罪悪感が急にわたしを襲う。

お風呂から出て髪の毛を乾かしながら鏡の中のわたしを見る。

キス・・・しちゃった・・・。

喜びと後悔が交差する。

桐谷は本気なのだろうか?それとも遊びなのだろうか?

ボーッとしていると携帯が鳴る。

『ゆうりちゃん、今日はありがとう』

返信をどうしようか迷ってるときに徹が帰宅する。

「おかえりなさい」

「今日はごめんね、急に仕事入っちゃって。明日、久々に桐谷も呼んで外でご飯でも食べないか?」

今日の明日でどんな顔をすればいいんだろ

う。

考え込んでしまう。

「ゆうり、明日やめるか?そしたら、俺ら2人でどこかに行ってくるけど」

「ううん、明日行く!」

どんな服を着ていこう。


翌日になり、洋服が決まらない。

徹はいつもシャツにジーンズだ。

「ゆうりー、置いていくぞー」

わたしもブラウスにスカートといった感じで出掛けることにする。

慌てて、徹の後を追う。

電車に乗り、目的場所まで行く。

着くと車のクラクションが鳴る。

その車へ寄ると、

「今日花火大会なんだって!観に行かない?車で行こうよ」

桐谷が言う。

「お前なぁ、もっと早く言えよ!」

徹がグーパンチで桐谷を殴る振りをする。

「花火大会行きたいな」

わたしはボソッと言う。

わたしの口元を見ていたかのように桐谷は

「行こうよ、花火大会!ゆうりちゃんも行きたいでしょ?」

「うん、行きたい!」

車で小一時間走っただろうか。

地元の花火大会だった。

「ここなら、うちの方が近いじゃん」

徹が初めから言えよって言う。

「こんなところで花火大会あるんだね、知らなかった」

桐谷は用意周到でビニールシートと飲み物とか用意してある。

「俺、トイレ行ってくるけどゆうりは?」

「わたし、大丈夫だよ。ここで待ってるね」

徹は1人でトイレへ向かう。

「ゆうりちゃん、来てくれて嬉しいよ」

桐谷は呟くように言う。

「徹、飲む準備してるよー。また酔いつぶれるのかなぁ」

「俺はゆうりちゃんと居られればいいよ」

気恥ずかしい事を言うんだなぁ・・・。

今日もこの間と同じ香水がただよう・・・。

少しの間、無言が続く・・・。

いろんな人の声が聴こえる。

少しすると、徹が戻ってきた。

「トイレ、超混んでた」

「遅かったね、トイレ混んでたんだ?わたしも今のうちに行ってくるね」

バッグを持ち、トイレへ向かう

トイレから出ると桐谷が待っている。

「トイレ?」

聞くとわたしを待っていたらしい。


「食べ物買うところあるの?」

「あるよ。はぐれちゃうといけないから手を繋ごう」

桐谷はわたしの手をとる。

慌てて手を振り払う。

「だめだよ、見られたらマズイって」

「ここからじゃ見えないよ」

雑踏の中、わたし達は手を繋ぐ。

屋台に出ているものを買い、戻ると徹がすでに出来上がっている。

「徹、もう飲むの止めなよ」

「まだ大丈夫!!」

赤くなりながらビールを飲む。

「ちゃんと送っていくから大丈夫だよ。俺、飲まないから」

花火大会のナレーションが入る。

眠りについた徹は泥酔している。

これでは花火大会に来た意味がない!

「こっちの方がよく見えるよ」

わたしの体を支えて桐谷は耳元で言う。

「好きだ」

「わたしには徹がいるから」

「今は俺だけを見ていて」

花火が上がった時、頬にキスされる。

「ずっとこうしていたい」

彼の言葉が頭に残る。



















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