第4話 バーベキュー
江上と家族が寝静まった後、江上を起こし「トイレはどこか」と聞き、トイレに連れて行ってもらった。
どうやらこの核シェルターはマンションの一室のように広いらしい。
「それにしても世界政府は何を考えているんだ?」
私は自然に会話を始めた。
「ん〜・・・あれか?食料が尽きて自分たちが生きて行ければ良いとか思って政治を放棄したんじゃね?」
江上も自然に会話を始めた。
それから、世界政府について会話を続かせていたが、そんな雰囲気も次の一言で一瞬にして終わった。
「なぁ江上、人肉って美味しいって知ってるか?」
「と、突然何言ってんだよ!!お前食べたことあるのか!?」
「いやいや!違うんだ。・・・今から食べるんだよ。」
「なに!?・・・奇遇だな、俺もそう思ってたんだよ。」
そう言うと私は、まな板の上から持ってきた果物ナイフをポケットから取り出すと江上も果物ナイフをポケットから取り出し、ほぼ同時に刺した。
いや、「痛くない!?」
なぜか痛覚を感じず目線を自分の腹に向けると、江上の持っていた果物ナイフは鞘に納まったままだった。が、私の刺したナイフは江上の腹部にしっかりと刺さっていた。
江上は吐血し、痛みで動く事もままならないようだが、私は江上の反撃を恐れ、江上の腹を数回刺した。
そうしているうちに、江上は倒れ込んだ。しかし、胸部の動きから心臓が動いているのが分かった私は空かさず江上の腹をまた数回刺した。
私はなぜか今更恐怖に襲われた。江上の処理をどうしようかと焦りながら考えていたが、最終的には不器用ながら肉を剥ぎ取り、食料にできないのではないかと考えた。我ながらに良いアイディアではないかと思う。
人間の肉は意外と硬く、予想以上に切るのに手こずっていた。腹の筋肉は案外少なかったが、太ももからは結構な量を入手した。
遺体をこのまま放置すると異臭が発生する。そして、このことが家族にバレたら一大事だと思った私は、以前江上の庭で
脂の少ない肉はじっくりと焼かれていき、鶏肉のようにも見える。
しかしここで問題になってくるのが、焼肉の付き物である匂いだ。
辺り一帯肉の香ばしい香りに包まれた。痩せ細った人々がゾンビのように、匂いを頼りにここまでやって来た。
江上を殺めてしまったその事実がバレるのが怖い私は、「もうやるしかないのか?」と、言葉を残し、刃が紅く染まった果物ナイフを握りしめて暗黒の世界へと走り出した。
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