2-18 イナンナ様とはセンスが違い過ぎる

 街中についた私たちは、高級デパート……ではなく、街中のショッピングモール内をあちこち行って、比較的安めなところを中心にりるちゃんの服や日用品を探していく。


”随分と貧相なものばかりね”

”ナナエはセンスないわね”

”そこの大きな建物の方が良いものを売っているのではなくて? そっちにすべきだわ”


(……ああもう、頭の中でうるさい!!)


 買い物中ずっと、出来る限り切り詰めて生活するスタイルの私と、質の良さに拘るイナンナ様とは事あるごとに脳内で喧嘩していた。

 お父さんからいつもよりたくさんお金は貰ったけれど、その金額はイナンナ様の要求に全く応える事の出来る量ではない訳で。


”いいじゃない。私に仕える者が対価を払う必要なんてないのよ。むしろ対価を払わせてこそだと思わなくて?”


(いや……あの……どこの強欲いじめっ子の理論ですか)


”そう言うものよ。私達かみあなた達にんげんとの関係なんて”


 あーうー、うん。これはついていけない。

 私はまだ人間だし、今後大変な事になるのは目に見えてわかっているけれど今は普通に生きたい。

 よって、気にしないでおこう。


 昼食は、一食二千円は下らないようなレストラン……の隣にある、七百円ぐらいのランチが食べられる和食のお店でとった。

 がっつくようにおいしいと言いながらお子様定食を食べていたりるちゃんはかわいかったけれど、頭の中の方では引き続き色々と煩い状態だった。


”こんなもの犬の餌のようじゃない”

”せめて栄養のバランスを考えた方がいいんじゃない?”

”こんなんだから胸も貧相なのよ”


(普通に生きたいと思ったけれど、これからずっとこれは辛いよう……)


 一時間経つか経たないかのうちに、一人脳内で弱音を吐いていた。


* * * * * * * * * *


「美味しかった!」


 昼食も終わり、外に出てはしゃぐように喜んでいるりるちゃんと、その後ろで沢山の買い物を抱えながら脳内攻勢にげんなりしている私の姿は対照的だった。


 もう粗方買い物は終わったけれど、まだ帰るまで時間十分にあるしどうしようかな。

 腕時計を見るとまだ三時。夜まで時間は沢山あるけれど、この荷物を抱えてりるちゃんとどこに行こうかな?


「ななえ、これから何するの?」

「そうね、どうしようかな」


 本当にどうしようかな? 本屋? 本屋で子供用の本でも買う? 電気屋? 電気店は一人じゃないとゆっくり見れないからパスかな。

 服は見たし、どこか遊ぶところ……映画とかボーリングとかかなぁ。

 と考えを巡らせる。


”電気店は私も行きたいわね。あと、映画も気になるわ。人間の作った映像劇って興味あるのよね”


(じゃぁ、その二つは無しの方向で……)


 と、逡巡していた私に割り込んだイナンナ様の意見を二秒で汲み取って棄却する。


”どうしてよ!”


(どうもしませんよ? 行ったらイナンナ様にあれが良いこれが悪い、これも悪いそれも悪いと色々言われそうだからですよ)


 色々言われて疲れるんだもん。実際にもう疲れたし。

 だからダメです。と棄却したら、イナンナ様に思わぬ逆襲を食らうことになる。


”器量が狭いわね。胸と一緒に大きくした方がいいわよ”


(ぐっ……胸は……胸の事は……

 そりゃかなり慎ましいですけど、第三次性徴が来れば私だって……)


”無いものは仕方ないわよね? 無いものは。

 そもそも、三次性徴って人間にあったのかしら?”


(……無いです。無いのは知ってますけど、いや、いつか、もしかしたら)


”……神の力でもそこは救えないわよ?”


 色んな意味で致命傷の一言だった。


(ぐぐぐ……)


”……胸の事は諦めて、せめて器量ぐらいは大きくなりなさいな”


(諦めたらずっと言われるじゃないですか! 大きくなるように頑張りますよ!)


”器量の方だけね?”


(ぐぬぬ……)


 こんな事をイナンナ様と脳内でやっていたら、


「ななえ、大丈夫?」


 と、りるちゃんに心配された。


「あ! うん!」


 とりあえず返事だけ返したけれど、脳内でイナンナ様にやられて本当は全然大丈夫じゃないよ……


 全然気づいていなかったけれど、どうも、イナンナ様にやられている間、私はずっとりるちゃんに裾を引かれていたみたいだった。

 りるちゃんが私の表情をみて気にしていたのかと思ったけれど違う……?


「ななえ、ともだち?」

「へ?」


 そうりるちゃんが指さした先には、私を見て仁王立ちになったクラス委員長の夜野さんの姿があったのでした。


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