2-12 進路を考える
”落ち着いた?”
(はい)
結局、体育の授業が終わってから昼休みが終わるまで、学食とか図書室を転々として極力誰にも会わないように私は一人で過ごした。
何と言うか、涙で酷い顔になっていたから先生とも会いたくなかったし。
教室に戻ったのは予鈴ギリギリの時間になってからだった。今日の午後は通常授業はなく、進路希望の決定とそのあと学年合同でのオリエンテーションがあった。
”それで、そろそろその進路の話、教えて貰えるかしら?”
(そうですよね。そろそろしないといけないですよね)
教室に戻って来てからすぐに、机に突っ伏しながらイナンナ様と会話をする私。
他の人とコミュニケーションを取りたくないときにいつもしている体勢だけれど、イナンナ様と会話をする分にはなかなかに都合が良かった。
(今、私は高校生の二年なんです。今は二月で、四月になったら三年になるんですけどね。
三年からは専攻毎の授業が入ってくるんで、それまでに専攻を選ばないといけないんです。
ここでいう専攻って、一般的な学部学科を選ぶのと同じように、神學校では所属する神様を選ぶと言う事ですけどね。
将来の事を今決めないといけないってこともあって、一大イベントなんですよ)
”なるほどね。
ちなみに、今ここではどこまで究明が進んでいるの?”
(究明?)
”あなたたちが魔法と呼んでいる力の究明よ”
(魔法の究明とか詳しい事は、まだ勉強していないので良く分かっていないですけど……)
イナンナ様は、多分難しい話をしたいんだろう。
”そんなに難しい話を聞いているのではないわ。一般的にあなた方が、この力をどのように捉えているかを知りたいだけ”
(はぁ……
じゃあ、すごく一般的な基礎魔法理論とかでよいですか?)
”それでいいわ”
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五分でわかる魔法理論!
《魔法について》
大きく分けて、魔術と魔法の二つに分類される。呼称するときは両方とも魔法と一括りにされる事が多い。
【魔術 (通常、普通に魔法と呼ばれる) 】
魔力 (後述) を、原子運動に直接作用させて起こす現象。
魔術は魔法適正がある人であればほぼすべての人が使える。
個人差があり、個々人によって得手不得手になる原子や運動法則がある。
出来る事が多く、火を起こしたり、水を利用できたり、宙に浮いたりと汎用性に富む。
特殊な道具を使う事で、不得手な分野の事であっても使う事が出来る。
例: 箒で空を飛ぶ。携帯電話で遠距離通信、魔力紋で鍵のロック、等
【魔法 (魔術の魔法と区別するために、専門的には神魔法と呼ばれる) 】
神に魔力を捧げる事で、物理現象の枠を超えた現象を起こす現象。
魔法適正があり、さらに神の眷属に選ばれた一部の者しか使えない。
その代りに、魔力の使用量とその結果の現象の効率が通常の魔術と比べて段違いに良いものがあったり、魔術では不可能な事が出来たりする。
例:
火の神イシュムの眷属 → 微量の魔力で大火力
用途:火力発電所で引っ張りだこ!
治療の女神グラ → 再生治療や難病の治癒
注意点:選ばれる者が少ないため、万が一選ばれたらその時点で国から厳重な保護対象として隔離される
【魔力】
魔法適正のある人間から放出される力。総量や瞬間出力等、個人差が大きい。
今の所、人間からのみ放出されている事を確認している。
何かの容器等に保管することは出来ない為、自動化のような物は不可能とされる。
どのような力なのか、どうしてそれが物理現象に影響するのかと言う事に関しては依然研究中。
* * * * * * * * * *
以上、説明終わり。
(あとは進路の実情についてですけれど、専攻で神様を選んでも眷属に選ばれるかどうかは運しだいって状況ですね。神様によって眷属が沢山いる神と、イナンナ様みたいに全然いない神といますけれど、どっちにしても眷属に選ばれればラッキーってのは変わりませんね。
それに、この国では眷属に選ばれたとしても、最終的に選ぶ権利は学生本人にあるので、選ばれても選択しないって事が可能です。
正直なとこですけれど、神様に選ばれなくても普通の魔法が使えるだけで十分に実用的で汎用性もあるので、成績優秀であればそれだけで重用されるって傾向ありますね。
だから、大多数は神の魔法でなくて、普通の魔術の魔法の方を専攻する感じです、その中でも色々と方向性あるんで)
長々と解説したところで、ふうんと言う、つまらなさそうにも聞こえる声が私の頭に響く。
(クラスの中でまともに神魔法の方専攻する人は、夜野さんとかぐらいじゃないですかね)
そこまで説明したところで、状況を確認しようとクラスの中のおしゃべりに耳を立てた。
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