サプライズ計画

一月七日、冬休みが終わり始業式の日だ。

今年も校長の長い話しを聞いて始業式が終わり、教室に戻ってすぐ、荷物をまともて下校となった。


三年生は卒業式の練習とかだけで、特に普通の授業はなく、莉子先生と言葉を交わす回数も少なくなってきた。

そんな中僕は、クラスのグループチャットにメッセージを送った。



***



輝久

『僕達って三月卒業じゃないですか。莉子先生に感謝を込めて、なにかサプライズしませんか?)

結菜

『いいですね!』

柚木

『なにする?』

美波

『あれは? あれ!』

真菜

『なに?』

美波

『あれだよ!』

一樹

『なにも思いついてないですよね』

美波

『うん』

芽衣

『歌でも歌う?』

『歌は苦手』

結菜

『胴上げでもします?』

沙里

『多分、私だけ手が届かない』

輝久

『僕達が莉子先生を囲んでるような、全員集合のイラストを描くってどうですか?』

結菜

『イラストなら描きますよ』

芽衣

『私達はなにしたらいいの?』

輝久

『一人一人、感謝の気持ちを手紙にして読み上げるってどうですか?』

結菜

『賛成です』



***



話はまとまり、全員結菜さんの家に集まった。

さっそくイラストのデザインを話し合いながら結菜さんに描いてもらい、それぞれ手紙を書くことにした。


皆んな集中して手紙を書いている。

皆んな意外と莉子先生との思い出とかあるんだな。

皆んなには言っていないけど、実は僕にもある。


「輝久君、自分で自分を描くのは難しいです」

「写真とか見て描いてみたら? って‥‥‥描くの早くない!? 結菜さん入れたら完成じゃん! 上手すぎるし!」

「いえ、まだ下書きですよ? 色も塗ってないじゃないですか」

「どれ? 見せて!」


柚木さんがそう言うと、手紙を書いていた全員が手を止めてイラストを見た。


「凄い!」

「背景は桜の木にしてみました」

「結菜さんって、できないことあるの?」


僕がそう聞くと、結菜さんはいきなり僕にキスをして言った。


「輝久君以外の男性を愛することです」

「結菜さん、シャンプー変えた?」

「気づきましたか!? 嬉しいです!! でも、キスと私の発言にはノーコメントですか?」

「あまりにもいい匂いがしたから!」

「輝久君ならいつでも嗅がせてあげますからね♡」

「二人ともイチャイチャするのはいいけど、作業しようね」


一樹君がそう言うと、芽衣さんが一樹君を睨んで言った。


「イチャイチャもダメだよ!」

「あら芽衣さん、どうしてイチャイチャしてはいけないんですか?」

「し‥‥‥嫉妬するし」

「一樹さんとイチャイチャすればいいじゃないですか」

「なんで一樹なわけ!?」

「元恋人なんですから、キスぐらいしてあげたらどうですか?」

「芽衣さん! チュウしますか!?」


一樹くんのテンションが上がると、芽衣さんは真顔で一樹くんの太ももにシャーペンを刺した。


「うっ!? いってー!!!!」


平気でシャーペン刺す人初めて見た‥‥‥。

沙里さんは前にコンパス刺してたけど‥‥‥。


「輝久? なんか用?」

「あ、いや、なんでもないです」

「輝久君? なんで沙里さんを見ていたんですか? どうしてですか?」

「たまたまですよ! とにかく作業に戻りましょう!」


それから全員手紙を書き終わり、結菜さんも色塗り以外を終え、一度皆んなでお菓子を食べながら休憩することになった。


「そういえばさ、沙里のお母さんって、あれからなにしてんの?」

「デリカシーがないですよ」


芽衣さんね発言を結菜さんが芽衣を注意して、沙里さんを心配そうに見つめたが、沙里さんはなにも気にせずにお菓子を食べながら言った。


「なんか、しばらくしてから電話で謝ってきたけど、もう関わる気ないって伝えた。私の家族は結菜とか宮川達だもん」


本当に家族だと思ってもらえてることに、結菜さんは嬉しそうに言った。


「沙里さん、バームクーヘンも食べますか?」

「食べるー!」

「今持ってきますね!」


結菜さんが部屋を出た時、美波さんが小さな声で沙里さんに聞いた。


「本当に家族だと思ってるの?」

「うん! 結菜はお姉ちゃんみたいな感じ!」


続くように、真菜さんも沙里さんに質問を始めた。


「宮川さんは?」

「頼れるお兄ちゃんかな」


すると、鈴さんが不思議そうに聞いた。


「んじゃ、一緒に暮らしてる他の人は?」

「家政婦」

「そこは家族じゃないんだ」

「まぁ、大切な人達だと思ってるよ? いきなり来た私を家族として笑顔で向かい入れてくれたんだもん」

「沙里は幸せ者だね」

「そう見えてるなら嬉しい」

「愛梨のことはどう思ってるの?」

「愛梨もお姉ちゃん」

「愛梨は年下じゃん」

「愛梨は、どんな時も私を一人にしなかった。それに愛梨がいなかったら、私は施設に行って、こうやって皆んなと会えなかったし」

「そっか、愛梨が聞いたら喜ぶね」

「愛梨には伝えてるよ! ありがとうって!」

「結菜には?」

「ありがとうって伝えたことはあったかもしれないけど、お姉ちゃんだと思ってるとかは言ったことないかな。毎日一緒にいるから恥ずかしいし」

「言ってあげなよ! きっと喜ぶよ!」

「んー、死ぬまでには言うよ、感謝の気持ちも全部」


そんな会話をしていると、結菜さんがバームクーヘンを持って戻ってきた。


「バームクーヘン持ってきましたよ!」

「やったー!」

「にゃ〜」

「クロっち? ご飯じゃないですよ」

「クロっちおいでー!」


猫のクロっちは、沙里さんの膝の上に座って寝てしまった。


「イチゴ味のチョコでコーティングされているんです! 皆さんも食べましょう!」


皆んなで仲良くバームクーヘンを堪能し、その中でも、頬に食べかすを付けながら必死にバームクーヘンを食べる沙里さんを見つめて、僕は思わず笑みが溢れた。

沙里さんは何も考えていないように見えて、しっかり物事を考えて感謝の気持ちも持っている。

結菜さんも報われるだろうな。

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