無色透明、それこそが究極至高の文学

あらゆる小説には政治、経済、宗教、スポーツ、性、歴史、人種、その他多くの差別的事項を多く含んでいる。真なる文学とは、そのような差別とは一線を画すべきもの。
現在市井に出回る多くの書籍は、そのような偏見や差別と決別できていない。エンターテイメント性やリアリティ、表現の自由などを盾に、あるいは矛とし、被差別者と戦っている。

本小説は、そのような現状を憂いた作家が、渾身の一撃でもって記した、あらゆる差別や偏見を排除した、まさに「真に純粋な文学」である。

誰もが、この文学の前に反論することもできない。
差別も偏見も、争いも憎しみもない。
文学の純粋性を極限的に昇華させた神のごとく手腕でもって実現させた存在X氏は見事である。

強いて欠点を上げるとするのであれば、この「真に純粋な文学」がとんでもなく退屈であり、確かに差別も偏見も、争いも憎しみもないのだが、ついでと言わんばかりに愛も価値もない。