Bパート2 特殊ED 次回予告
<ほほぅ>
そこに男の声が直接頭に響いてきた。
<我が力を跳ね返すか>
「うるせぇ。黙って殺されてろ。お前、邪魔だ」
GTは未だ回復出来ていないのか、その声も荒々しい。
そんなジョージを嘲るように、黒い塊は人の形に戻っていく。
最初に見た、初老の男性。
それがどうやらアーディという名を与えられた、邪仙の核であるようだ。
パパッパン!
反射的にジョージの右手が跳ね上がって、その核を狙う。
が、その銃弾が届くべき場所からアーディの姿が消えた。
移動したというレベルではない。まさにその場から消え失せたのだ。
<だが、貴様はわかっていない>
その声が聞こえてきた方向は、果たしてジョージの後方。
反射的に、左手の銃で殴りつけようとするジョージ。
だが、そこにはやはりアーディはいない。
<私は、この世界の創造神。その気になれば、何処にでも、どんな形ででも存在できる>
「世界を盗んだ癖に、何を言ってるのよ!」
リュミスが叫ぶ。
<さてな。だが現在、その力を行使してるのは我ぞ。ここで我の力の正当性を問うて、それが貴様らの益になるのか?>
「く……」
パパン!
リュミスに近づいていた、触手が二本迎撃される。
<貴様はやはり見所がある。かなりの数を殺してきておるな。その割に魂が濡れておらぬようだが……>
そう語るアーディの姿は見えない。
死角にいるのではない。
この世界そのものがアーディなのだ。
アーディはどこにでもいる。
<だが、お前はなんだ? 何故ここにいる? この男の慰み相手か? 戦場にまで連れ回すほどの寵を受けておるのか?>
だが、それにリュミスは応じることが出来ない。
圧倒しなければならないのに。
その存在をかき消すほどに。
――この、頭が割れそうなほどの
「アハハハハハハハハハハ」
突然、その
ジョージだ。
「何だアーディ、お前も結局は素人か」
<……何?>
「この場でリュミスの意味がわからないようじゃ、お前も所詮、素人だ! 力を手に入れただけで、使い方をわかっちゃいない。戦闘センスゼロめ」
<よくも吠えた!>
――突然の暗転。
「小細工を!!」
ジョージは動転することなく、まず発砲。
二人を覆っていた、黒い皮膜に穴が開く。
それで距離感を掴んだジョージは、フェニックスエールで一気に皮膜を引き裂いた。
引きちぎられた皮膜は、それに応えるように自らを細分化。
そのまま全方位から、二人に襲いかかる。
パパパパパパパパパパパパパパパパパパッパ……
両腕のフェニックスエールが一斉に吠え猛る。
だが追いつかない。
追いつくはずもない。
ジョージ一人であればそれでも全て迎撃できたかも知れない。
しかし、リュミスを庇ったままでは――
「どりゃあああああああ!」
リュミスがライフルを出現させて、それを無茶苦茶に振り回していた。
ギョッとなって硬直するジョージ。
そのやり方では、ライフルごと浸食……
「こんな切り離された攻撃が効くものですか! いい加減頭に来たわ!!」
「……そうか!」
根っこの部分と、繋がっていなければ浸食は起こらない。
いかに多くの欠片を操っても――
ジョージの身体が世界に滲む。
カカカカカカカカカカカッ!
光速を越えた動きで、二人に迫りつつあった皮膜の欠片を“素手”で弾き飛ばしていく。
「よく気付いた!」
ついにその全てを叩き落としたジョージが吠える。
リュミスはその声に大きく頷いた。
「だって、アレはイヤな音がしないもの」
「音……」
ずっと訴えていた、不協和音のような音。
「そうか。それが本体に繋がるヒントなのか」
「え?」
「音の元を探せ。そこに奴がいる」
「どういうこと?」
「あいつはこっちにちょっかいを掛けるのと同じぐらい、イヤそれ以上に“竜”とやらと戦ってるんだ。その戦闘音が――」
「――あのイヤな音ってことね」
理解の色を浮かべるリュミス。
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
二人の会話を遮るように飛来する、黒い欠片。
「あれは!?」
「しない!」
それを聞いたジョージは瞬く間に、欠片を叩き落としてしまった。
「これなら粘れる! リュミス、頼んだぞ」
「う、うん」
確かに自分は役に立っている。
それが自信に繋がったのだろう。
リュミスは必死になって、イヤな音の元を探ろうとした。
――だが。
それから間もなくジョージの左腕が吹き飛んだ。
黒い欠片が、ほとんどジョージの肩口に食い込むようにしていきなり出現したのだ。
それでジョージの動きが鈍ることはなかったが、片腕となったハンデは大きい。
リュミスによる敵の見分け方の発見がなければこの時点で詰んでいただろう。
だが、それらをしのいでも尚、時間は迫る。
無理をして
ここでアーディを仕留められなければ、その浸食は世界へと向かい、やがて
しかし、それでも尚リュミスは音の元を見つけることが出来なかった。
◇◇◇
「ジョージ! わからないの! どこが本当の音の位置なのか」
「あの野郎、音の響きまで誤魔化してるのか」
「そんな……」
それでは本当の手詰まりではないか。
この先に、希望はあるのか。
◇
そんな時、ジョージが静かに告げる。
「一つ、違和感を感じていたことがある」
ジョージは肩で息をしながら、それでも油断無く視線を左右に配っていた。
スイッチはとうの昔に入っている。
「……ずっと考えていた。お前が感じる音は何なのか? そして俺には何故聞こえないのか?」
「それは……」
◇
聴力は、ジョージの方が上だ。
それでいて、何故リュミスだけが不協和音を感じることが出来るのか?
「お前はパフォーマーだが、根っこのところで歌手だ。歌うことに喜びを見いだしている」
◆◆◆◆◆◆◆
「そこが俺とお前の大きな違いだ。アーディは戦っているのかも知れないが、それはきっと呪文のようなものを唱えているんだ。それがお前には歌に聞こえるんだ。それもひどく下手くそな」
だから――
「歌えリュミス」
◇◇ ◆
「お前の歌で
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次回予告。
リュミスの歌が響き渡り、GTは剣を手に取った。
次回、「今はひとたび、星の海へ」
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