第32話 恋敵or女友達?
自室に戻ると私こと倉本せいかは、机に
スマホを置きフレデリックさんにどう話を
持ち出すか考えていた。ただ単純に
電話をかけるだけなのに、かれこれ30分位は何もせずにじぃっとスマホを見つめてる。
学校では、きちんと物事を仕分けられたり
さっぱりとした判断が出来るので皆には
尊敬の眼差しで見られているし、何かあると
真っ先に私を頼ってくれるので好感度は良いと思うのだけれど、プライベートとなると
そうはいかないのよね。
なかなか決断できないと言うか、レストランのメニューだって決めるのが遅くて最後に頼む事が多々あるし。この間のコーヒー会は
流石に待たせるの悪いと思って、無難に
エメラルドマウンテンを選んだだけだし。
「てか、電話すること自体初めて…」
今まではメールのやり取りだけで済ませて
きたから、何とかきょどらずに会話できた
けど…今回はね、ちょっと頑張らないと。
店に出向いてくれる様になってからは
場の雰囲気も一段と明るくなったし、常連の
お客さん達もフレデリックさんと仲良くできて、ご満悦気味にしてるし。
そりゃ、あんな美女から声をかけられて自然と嬉しくなっちゃうのは分かるけど。私としてはあまり気分は良くないのよね。
「今更深く考え込んでも意味ないんだけど」
取り敢えず電話をすることにした___
プルルル……プルルル……
「はい、フレデリックです」
「あ、もしもし?倉本せいかです。」
「せいかさん。こんちには。初めてですね
電話かけてくださったの。どうかしたの
ですか?」
「ちょっと聞きたい事があって。メールじゃなくて声を通してさ。今大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「良かった。あの、突然ですみませんけど
単刀直入に言いますね。フレデリックさんは、お兄ちゃんのこと恋愛感情を含めて
好き…ですよね?」
「ふふ、そうですねぇ。せいかさんには早い段階でバレると思っていたので素直に認め
ますね。私倉本健さんの事大好きなんです」
「やっぱりそうなんですね」
「やっぱりという事は、倉本さんへの私の気持ちに薄々気付いていたんですか」
「ええ。勿論」
「どこで気づきましたか?」
「ありきたりな返事で言うなら女の勘って
やつ。まともに言うなら……必ずお兄ちゃんが店の手伝いをしてる時間帯に来てたから。
不定期にお母さんが仕事するのはご存じかと思いますが、あまりにもタイミングが良すぎるので。あと声のトーンが違う」
「そこまでわかってるとは、さすがです。」
「当然でしょう。貴女より何倍もお兄ちゃんのこと知ってるんですよ。お互いがお互いを意識し合ってる事くらい、とっくの昔に気付いていました。」
「なるほどぉ。さて、純粋に質問なんですが
せいかさんはどうしますか?」
「え。何が?どうしますって?」
「私が倉本さんと両想いだと知って略奪とかしないのかなと思いまして」
「なっ…!そんな事する訳ないじゃないですか!だいいち実の兄ですよ、私の恋なんて
叶うわけがありません」
「諦めたらそこで試合終了ですよ、と何処かで聞いたことがあります」
「確かスラムダンクだった気が」
「あー、多分それです」
「……。で、フレデリックさんこそどうしたいんですか?私のお兄ちゃんと付き合いたいとか思ってるんですか?」
「うーん、付き合うことってどういう事なのか分からないので暫くは自分の様子見です」
「彼氏作ったことないんですか?」
「ないですよ。私にはボスがいましたから。
ボスの側近なので、きちんと仕事をこなすので精一杯でした。恋愛を呑気にしてる場合ではありませんでしたよ。」
「そうだったんですか。仕事熱心で美女って完璧ですねー」
「ふふ、妬いちゃいました?」
「少しだけですけどね」
「あら残念」
「フレデリックさんて結構腹黒いですよね。
物凄くムカつく言動はしてないのに、小骨が
どこか引っかかってる感じ。」
「よく言われます」
「そうですか。…まぁ、いいです。聞きたい事は無事に聞けたんですっきりしました。夜遅くにすみませんでした。」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったですよ
また電話下さいね」
「はい勿論。ではまた。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
プツッ__
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