第30話 お家デート


高らかに声をあげ愛しのフレデリックたそを

出迎える。案の定 冷たい矢が飛んできたが

それすらもいとおしい。


「やっほ~、コースターのメッセージ

ありがとね。さすが、頭良いねぇ」

「コーヒーを頼む際 店員さんにお願いして

おいたのです。表面上まだ接触は早い」


「なるほど。佐々木さんに頼んだの?」

「はい、勿論。彼はスパイとしての素質が

あるかもしれませんね」

「あ~、確かに。涼しい顔して僕たちの

橋渡ししてくれるからなぁ。侮れないよね」


主に喫茶店「グレタ」の店員 佐々木さんを

話題に入れながら、僕の自室に向かう。


「急いで掃除したから そこは大目にみてね

あ、あと紅茶。飲んで温まってて」

「分かりました。ありがとうございます 」

「はいよ~。お菓子 持ってくるね」

コクッと頷き 椅子に座るフレデリックたそ


スタスタとキッチンに向かい、お菓子を取りだし ふと 我にかえる。

(あれ?ベッドの下の玩具……昨日使って

何処に置いた?え、あヤバ!)

ドタドタ五月蠅い足音を立て、直ぐ様

部屋に戻る。


「ちょ!っと!まった!!」

勢いよくドアを開けると 驚きの顔をする

フレデリックたそ。彼女が手にしている

オナホールを僕は凝視する。

「あっ、それ。ちょ!あの!」

もはや自分でも何を伝えたいのか解らない


「???」

(不思議そうに首 傾げないでぇ…)

「その手に持ってるやつ!色々汚いから!

僕に寄越して!」

「えっ。あ、これですか?分かりました。

というか何でそんなに焦ってるんです?」

「……」

(もしかしてフレデリックたそって大人の

玩具 知らないの?)

「あー、まあ。ええと、好きな人に見つかるとある意味終わるやつ。てか今おわた」

「ふーん」

「まあ、それのことは忘れて!話をしよう。

なんかあるから来たんでしょ?」

「釈然としませんがそうです。

いつもの倉本兄妹についてお話があって」


そう無理矢理に本題を切りだし、無事に

オナホールを回収した僕は偉い。

___

紅茶をひと口飲み、溜息をつく美女。

「しん、貴方は恋愛絡みのいざこざに耐え

己の想いを貫き通せますか?」

突如としてそんなことを言い出したので

ちょっとばかり頭がフリーズする。


「え?あーうん、まあ。大丈夫じゃない?」

「そうですか」

「うん……」

「貴方は嘘の演技で人を恋させることは

容易いですか?」

「出来ると思うよ。後がめんどくさいけど

そこは潔くね、関係を絶つから大丈夫」


フレデリックたそが何を命令するのか

わかってきた気がする。


「分かりました。では…来週からあの古本屋

に通いつめてください。そして倉本せいかに

接近し、落としてください。」

「なるほどね。僕は妹の方を担当ってわけか」

「はい。時間はいくらでもありますので、

ゆっくりじっくり相手を観察し 出方をみて

恋をさせてください」


「了解。ひとつ聞きたいんだけど、二人には僕らが知り合いだって言うのかい?」

「えぇ、言いますよ。その方が引っ掻きまわしやすいですし。ふふっ」

「意地が悪いねぇフレデリックたそ~」


「だって、楽しいんですもの。最後に地獄を

見せるまでの過程が…ね?」

「それら全部無駄だったんだよって感じ?」

「そうです!過程を失敗するなんてあり得ないですし、私に狙われた時点で地獄を見るのは確定なんですから。」

「確かに。借金まみれになったり、浮気だと思われて離婚させられたり…。」



僕自信、フレデリックたそに拾われる身で

良かったと男共の残念な姿を見る度に思う。

(まぁ最初は両親が狙われてたし。少しでも歯車がずれてたら僕がターゲットになった

かもしれないね)


「では、そういうことなので。宜しくお願い

致しますね。」

「あ、うん。頑張るよ」

「はい。所で先程 私が持っていた物は何に

使うんですか?」

「え"…!帰るんじゃないの?」

「帰りますけど、どうしても気になって。」

「教えてほしいの?」


変な汗がブワァッと全体から出てきて

ものすごく気持ち悪い

「はい、とても不思議な形をしてたので

何だろうと思いまして」

「えっと……言えない」

「なぜ?」

「絶対僕を軽蔑するから」

「しませんよ笑 そんなこと」


「ん、でも嫌だ。」

「頑固ですね小糠雨さんは」

「当然です」

「……分かりました。ここは私が折れます。

但し、今度会うとき必ず教えて下さい」

「えぇ…あー、うん。フレデリックたそも

覚悟しておいて。色々後悔しないでね」



こうして新たな任務が加わりお家デートは

終了した。

























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