第28話 計算尽くされた他の視線


せいかがコーヒーカップを割るという

アクシデントがあったものの、4人で

コーヒーを飲み 楽しくお喋りをした日

僕は、内心ずっと落ち着かないでいた。


恨みがかったと言った方が正しいだろうか

ボスとフレデリックちゃんと落ち合ってから 何処からか視線を感じていたのだ。


それだけじゃなく僕たちが席に座った時も。ずっと、ずっと誰かの視線が突き刺さって

怖かったのだ。勿論、せいかが原因と

言うわけではなく。


(3人は気づいてなかったみたいだけど…)


予想では、 恐らく1人。なんというか

店内に複数人居るとは思えない。

「う~ん誰だったんだろう……?」

1人 自室にて あの日を振り返るも答えは

見つからず、断念した。


___

Vitaで討伐ゲームをやり込んでいると、

フレデリックたそからメールがあった。

一時中断をし、スマホを手に取る。


内容は『近々倉本兄妹と喫茶店でコーヒーを飲む機会を設けるので、小糠雨さんも来て

ください。今はまだ遠目からの監視で結構

です。日時は計画前日の夜にお伝えします』


いつでも出かけられる様にしときなさい

と言うことらしい。


「とりま、顔と名前を一致する為に来いと。

……遠目からって、フレデリックたそには

声をかけられないの?せっかく会えるのに?

うわ、くっそダリィじゃん」


文句を吐きながら OKの返事を返す。

そしてすぐさまゲームを再会。

「はー、うっざ。雑魚死ね オラ」

倉本健への嫉妬を込めコントローラーを

カチカチ回しまくる。


「……っしゃあ!」

5分後、画面にはWINの文字が掲げられた。



[当日]

ピピピピ_ガンッ

「ん…ん~、あ、れ?何で目覚まし…」

(あ、あぁ。コーヒー会か)


「ふぁ~…あっくぉ~、眠い……」

欠伸をしながら背伸びをし 身体を覚醒。

フレデリックたそから連絡があったので、

今日実行するのは分かっていた 筈だった。


しかし見事に忘れていた。


「デートなら 飛び起きるのになぁー。」

恋敵になるであろう倉本健の顔を覚えるが

為に外に出る。これ程までにめんどくさくて

辛い仕事は、他にはない。

「あー、泣けてくる。泣いてないけど」


トボトボと部屋を出て隣の部屋へ カップ麺を取りに行く。そのついでにキッチンへGO

冷蔵庫からコーヒー牛乳を取り、グラスを

棚から1つ選ぶ。カップ麺用にお湯を沸かし

ている間、椅子に座り無言で待つ。


ブクブクお湯が沸いた音がしたので

カップ麺に注ぐ。3分きちんと待ったあと、ひたすら頭を無にして黙々と食べる。


「ごちそうさまでした」

5分も経たないうちに完食。

空になったカップ麺の器を乱暴に投げ捨てる

ゴミ箱にクリーンヒット


「………。」

いつも通りのサイクルなのに、イライラが

止まらない。どうしてこんなことに。

「どうしたもこうしたもないね、引き受けた

僕が悪い。全て僕が悪い」


相変わらずクソジジィが相手なら別に何とも

思わなかった。喜んで手伝いをしただろう。

けれども、今回だけは嫌だった。

なんたって僕と大差変わらない若いやつが

騙す相手なんだ!


勿論、特務に拒否権が無いのは知ってた。

長い年月をかけるのでストレスが異常に

のし掛かかるのを考慮し、立場が低い子達や中堅の人でさえ、あまり特務をやらせる

ことはない。


フレデリックたそくらいにならないと、簡単には任せられない。それが特務。

「わかってるんだけどねぇ……はは」

掠れた笑い声を発し、自室にて身だしなみを

整える。


時間になったので、必要な物を入れたバッグを手に取り 外に出る。

「いってきます……」


指定された場所に、予定通り着いた。

「あーあ、よりにもよって。酷いなぁ

フレデリックたそぉ。」


僕が少し遠くで喫茶店を眺めてると、

フレデリックたそとボスがやって来た。

暫くすると倉本兄妹も店の前に現れた。


「ふぅん、あれが倉本健。へぇ……中の下。

妹は…中の上。」

見た目を勝手にランクつけをし、今回初めて

となる実物を見ての監視をする。

4人が店に入ったので時間差で僕も入店。


よりにもよって 。この喫茶店は__

フレデリックたそと2人きりで会う時に

利用していた思い出の場所であり、 出逢ったばかりの頃 僕が意を決して告白をし

見事に振られた場所でもあった。
























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