第27話 秘かな想い
私、フレデリック・サイデリカは 常に自分に厳しく 他人には優しく接してるつもり
で生きてきた。威圧的な態度や相手が傷つく様な言動は当然せず、同じ目線で物事を見て問題を一緒に解決してきた。
それなのに、皆が持つ私のイメージは
『他人にもきびしい』だった。
あり得ない
先輩として、ボスの側近として 皆と関係を
良くしようと頑張っているのに。
自分の存在は恐ろしい人として
認識されている。
「怖がらせる様なオーラでも出てるの?」
新しく建てた家にて自問自答。
先程、しんに電話をかけ任務を遂行した事を
確認した私は 組織に入ってからの悩みや
色々な出来事を 思い返していた。
___
14歳。
まだまだ育ち盛りの若い少女が、いきなり
ボスに成り立ての青年の側近になり組織を
従え始めた。
更に詳しく説明すると
故アビス・レヴィの息子が跡を継ぎ、
世界的に有名な警察官、リアン・サイデリカ
の娘が悪の手に染まる。
息子が跡を継ぐ分には理解できたが、善良で
あるべき少女が詐欺師になるのには到底
理解できる事ではなかった。
しかし、それを一蹴するかのように
フレデリック・サイデリカは めきめきと
詐欺師としての成長を遂げ 皆を納得させるまでに腕前をあげていた。
___
あまりも早くに能力を開花させたのが
原因だろう。コミュニケーションをとる暇もなく日々を過ごしてしまった代償として
皆とは事務的な会話しか出来なくなり、友達
という存在は一人も居なかった。
しかし、それでも例外は居るもので
後輩であり血の繋がっていない家族
小糠雨しんだけは 積極的に話しかけて来て
くれた。
お互いがお互いを必要とせざるおえない程
2人は過去に共通の辛い思いをしているし、だからこそ自然と話す相手に適していた。
私がどれだけ冷たく接していても 出会った
時から ずっと そのおちゃらけた態度は変わらずで、同時にそれは物凄く感謝すべき事
なのだと最近知った。
きっと全て、分かっているのだろう。
小糠雨しんの両親を殺した罪を深海の底まで
持っていくつもりで 一生背負い込むことを
そして、そんな事はしなくて良いと 彼は
思っている。
___
『フレデリックたそは心配性だなぁ。
大丈夫だよ、落ち込まなくて~』
それなりに関係を築けた頃、しんに そう
言われて以降何を思ったのか 彼を意識し
始めてしまった。
単純で分かりやすい、これこそ詐欺に
引っ掛かかるタイプ。けれども しんは私を
騙せないと思う。態度も突然変わるような
ことはしていないし、たぶん大丈夫。
表向き 小糠雨しんからの異常なまでの愛を
クールに避けてるフレデリック・サイデリカ
組織内ではお馴染みの光景だったが、誰も
彼女の本心を見抜くことはできない。
立場上 あまり恋愛など出来ないし、してる暇なんて無いのに恋をしている。
私が、しんを恋愛的な意味で好きなことは誰も見抜ける筈がない。ボスだって当の本人でさえ、きっと分かってない。
「そして……このタイミングで特務。
ボスも困った人だわ。」
特務は 長期戦になることが多いので
あまり相手に感情をいれてしまうと、後々
めんどくさい事になるのだ。
その殆どが恋愛絡みで、最悪 不倫関係を
持たれてしまうとホント嫌になる。
「せっかく、意を決して……」
(しんに告白しようと思ってたのに)
机にぶっつぶし、うなだれる。
きっと今の顔は 誰にも見せれないくらい
赤くなっている。
「うぅ~!もうイヤだぁ……やりたくない
仕事放棄して、言いたい~!」
あり得ない程 子供っぽく言って足を
ばたつかせる。
「………」
このままでは埒があかずと判断し 仕方無く体を起こす。
「ばーか」
何に対して言ったのか自分にも分からないが 今回の仕事が乗り気ではない事は再確認できたので良しとしよう。
「…いえ、ダメですね。ボスにこんな姿など
見られてはいけない。夕飯の仕度でも
しましょう」
気持ちを切り替え、いつものクールな私に
戻る。
「ふざけないで、倉本健」
(あ、ダメですね)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます