第26話 事務的連絡とフレデリックたそ

[回想]

一人の少年が部屋で泣きながら仕事に取り

かかる。端から見ればパワハラでも受けて

いるのかと思う程 ヤバい空気を漂わせ作業をしていた小糠雨しん。

しかし、そんな今どき分かりやすいブラック企業に勤めている筈がなく実にホワイトすぎる職に就いていた。その名も詐欺師。役職は

ハッカー。


世の中には甘い誘惑・報酬額に負け、犯罪に手を染めてしまい後々取り返しのつかない所まで悪事を働かせてしまう若者が急増していた。理由は何となくだけど、世間に与えるお金の少なさが原因だろう。


車を買うにも当然 数百万~数千万の大金が必要。あまり車には詳しくないけど保険の

加入、オプション、とにかく色々付けると

更にお金が必要だとボスに聞いた事があり

車を持ってるだけで大変そうだと思った。


よく言われる『世の中は金』は本当のこと


それにしては政府はお金を与えていない。

その癖 税金は上がる一方。こんなんじゃ

若者はまともに働こうともしない。寧ろ

楽して働きたいと思うのが当然の性。それが

悪事に手を染めてしまうという残酷な結果。



「まぁ残酷な結果じゃなくても悪事に手を

染める人間も居るんだけどねぇ 。此処に」


と長らく自分語りをしていた僕

当たり前だが少し前に仕事は片付いた。


手慣れたもので、監視カメラを乗っ取るのにさほど時間はかからなかった。今はのんびり

倉本家の様子をモニター越しに眺めている。


「…………妹か」

店内にある家用のドアから女の子が出てきた

ので、事前に貰っておいたデータと照らし

合わせ確認する。

「倉本せいか、17歳。へぇ僕と同い年?

すごいな 真面目に高校に通ってるんだ」


生まれた年は同じなのに何でこんなに差が

広がるんだろう。性格?心の綺麗さ?ウーン

直接会って話してみないと分からない事も

あるけどなあ。

カメラ乗っ取ったばかりやし まだいいか。


「…あ"!!!ちがぁう!!こんなんしてる

場合ちゃう!!!連絡!」

(仕事を終えた気でいたけど それをフレデリックたそに連絡するの忘れてた)


あまりに初歩的なミスをしてしまう

社会人として失格である。いや まだ18になってないけどさ、大事だからね業務連絡。


急いでスマホをとり電話をかける


プルルル…プルルル…ガチャ


「あ、フレデリックたそ?僕だけど」

「こんばんは小糠雨さん。仕事は順調に

進んでいますか?」

(真っ先に仕事のことを聞いてくる辺り

真面目さんだぁ)


「にゃはは、順調だよ。丁度その事で連絡

しようと思ってたんだ。」

「そうですか」

「うん。無事に監視カメラ 乗っ取ったよ。

スクリーンにばっちし映ってる。」


「それなら上出来です。………それと…あの」

「ん?どうしたの?何か不具合でも?」

「いえ不具合はないです。えっと、その…

小糠雨さん、私に何か言いたいことがあるのでは?」

「…愛してる」


ブチッ

即電話が切れた

「ふふ 相変わらずクールだね分かってるよ フレデリックたそ」


2枚目の手紙のことを言いたかったんでしょ

うん、大丈夫だよ僕は。心配しないで。


「それに 何がなんでも、君からその呪縛を

殺したという罪を無くしてあげる。

苦しんでる姿なんて見たくないからね」


スマホを見つめ密かに誓う。


フレデリックの為、真っ直ぐ純粋に出逢った頃から全てを捧げる小糠雨しんは 誰よりも一途でそして誰よりも一番 報われない恋をしている。


重くなるつもりはない。 ただ、ボスの次に

僕のことを思ってくれたら それで良い。

何も望まない。何も要らない。


「 フレデリックたそ………」


スマホを机に置き スクリーンを睨み付け

狂気をはらんだトーンで言った。


「倉本健、徹底的に潰してやる。」






























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