第25話 家事情と仕事開始 (小糠雨しんの場合)


[回想]

11月初め。 先に日本へ向かったフレデリックたそとボスの後に続き、僕は久しぶりに

帰国した。


無事に飛行機が空港に到着し、そこから駅に徒歩で向かい 電車を何本か乗り継ぎ

やっとのほいさで目的地に着いた。

「………はぁ」

タメ息が無意識にでる。そりゃそうだ。


何が悲しくて長旅をしてまで、嫌な思い出

ばかりの日本に帰ってこなくちゃいけない?それに加え、長くなるであろう特務を

フレデリックたそが受け持っている。


(胃が痛い…こんな思いするなんて…)

どう振り払ってもマイナス思考をしてしまう


不安は募るのみ。


考えても意味がないと悟り、以前 僕と

フレデリックたそ、ボスの3人で暮らして

いた家(今は別荘)に大人しく向かう。


そこから少し距離を置いた場所に、倉本家と今2人が住んでいる家がある。何となく

全てがボスの思惑に嵌まっている様で怖い。


因みに僕の実家は、両親が殺され住む人が居なくなったので一時的に空き家になるがすぐに違う人が住み着いた。


何とか上にある会社は、社長である父とその夫人が突然消えるという災難に見舞われつつも業界一の売り上げを誇っていた。


「持ちこたえてるのは嬉しいけどね」

流石にお菓子までは嫌いにはなれず、今も

甘党は健在だった。

過去を振り返りながらのんびりと歩いてると

やがて別荘にたどり着いた。


ズボンのポッケから鍵を取り出し解錠

「ただいま」

誰も出迎えてくれるわけがないのに挨拶を

するのは、礼儀がなってるからなのか それとも有名菓子店の息子故に…なのか。兎に角

家に入り、自室に向かう。


元々客人用に設けられていた1階の部屋を

そのまま僕が貰う形となったので、遠慮無く好き放題使っていた。

久しぶりに入ると、自室は綺麗にされており いつでも帰ってこれる状態になっていた。


(フレデリックたそが こまめに掃除をして

くれてたんだ…。ふふ、嬉しい)

クールでいつも冷たい態度をしてくるのに

何だかんだ言ってやってくれるのだ。


「そりゃあ、嫌いにはなれないよね 皆さ」

独り言を呟きながら荷物を降ろす。

___

小糠雨しんの仕事内容は古本屋の監視カメラを乗っ取り、常に監視をし上手く倉本兄妹に近づける様 情報をフレデリックたそと共有しあう事だった。

そのため、今日から再びこの家に住み

365日 倉本健を騙す手伝いをする。


「………今の所、電子的な連絡は無し。」

周りを見渡すとフレデリックたそからの手紙が机の上に置いてあった。

(なんだ、あるじゃん)


「「小糠雨さんへ

特務のお手伝い、引き受けてくださり

ありがとうございます。そして この手紙を読んでいるという事は、家に無事に着いたのですね。流石です。(重い愛という意味で)


暫く此処に住んで貰うようになります。

何か欲しいものがあれば随時連絡を下さい。

ストック分の食品料や衣類は、隣の部屋に

あります。足りなくなったら言って下さい。

送らせます。」」


1枚目の手紙は業務連絡?だった。そして

2枚目の小さなメモには一言だけ


「「しん、辛い思いをさせてごめんなさい」」

と書いてあった。

それを読んだ瞬間 涙が溢れだした


「うわ、急に戻るの…やめてよ……。」

両親を殺した罪だとか言って家族になって

くれるわ、その上 暖かいご飯まで用意して

寂しくない様に一緒に食べてくれるわ。


ひとりっ子だったから、ねぇさんが…

姉弟が増えたみたいで凄く嬉しかった。

ただそれだけで充分満たされたっていうのに


「もう、いいのにね。」


親を殺したんじゃなくて

親から僕を助けてくれた____


「グスッ…ありがとう、フレデリックたそ」

手紙を丁寧にしまい、誰も居ない部屋で感謝を述べ 泣きながら仕事に取りかかった。


































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