第22話 コーヒーの苦さと共に①


「なんとしてでも行かせてもらおうか」


自分で決めておいて申し訳ないが、かなり痛々しい発言になってしまった。しかし

今日と言う今日は、どうしても特別な日

にしたかった。


ボスが同伴してるとはいえ、実質上

フレデリックちゃんとデート。それを

無下に出来る勇気が、当然 僕にはない。

しかし我が妹は

「いやだ、絶対に行かせない。おにいちゃんは私と一緒にひきこもるの。これ決定事項」

の一点張り。非常に迷惑している


「ねえ、せいか。話変えて申し訳ないが、何をそんなにフレデリックちゃんの事嫌ってるわけ?」


「……え!?な、なんでそう思うわけ!?いや全然嫌いじゃないから!寧ろ美人さん過ぎて目の保養になるし!」


(それはちょっと百合臭が、なんて言ったら

更に怒りそうだな)


「うぅーん。あまりにも嫌ってますオーラが出まくってるからさ、何でなのかなって純粋に思ったんですわ。」

「ぎくっ、そ、そんなことないもん。おにいちゃんの気のせいじゃない?つか、そう

予測してる時点でかなり自意識過剰だよ」


「そうかなぁ?じゃあ僕が店番してるときに

あつい視線を感じるのも気のせいなんだね?

それもフレデリックちゃんと話してる時に

だけするんだけどさ。ね?」


「!いつの間に気づいてたの?」

「あんなに視線を感じて気づかないのもどうかと思うけどね。何か反論はありますか?」


「………ありません。」

「なら、出かけても良いよね?」

「嫌だ。」

「ええー…」

(ここまできても尚行かせないつもりか)


「やっぱ気が変わった。行っても良いよ。」

「!!」

「ただし、私も連れていく事。これが条件」

(そうくるよなぁ……粘り強いもんねぇ)

「分かった、一緒に出掛けよう」

「やったあ!!!おにいちゃんとデート!」

「いやデートちゃうから!」


高校生とは思えないはしゃぎっぷりで

ぴょんぴょん跳ねる我が妹。

家でしか見せないであろう姿に、少々戸惑いを隠せない。いつもは外で良い子ちゃんを演じてるから反動が凄いのは分かっている。つもりなのだがどうしても慣れない。


「あまり失礼のないようにな」

「はぁ~い!じゃ、準備してくるね!

おにいちゃん🖤」

「うん」


先程の冷たい態度とは裏腹に超ゴキゲンで

階段を昇っていく我が妹。残念ながら

パンツは見えなかった。

___

やっとのほいさで外に出られたものの

隣の方がやたら至近距離で見つめてくるので

あまりテンションは上がらない。


「近いんですけど」

「えへへ」

「えへへ、じゃなくて!何でそんなベッタリ

くっつくねん!暑苦しいわ!」

「今は冬デース、こうでもしないと寒い。」

「寒くありません。普通に歩いてよ」


「ぶー。おにいちゃんのばか」

「ばかじゃないですー。ほら、もう少しで

着くから離れて」

「はぁい」


暫くすると指定されたカフェに着いた

そして店の前に見慣れた姿があり声をかける


「フレデリックちゃ~ん!ボス~!」

「あっ、倉本さん!せいかさんも!」


(にこやかに手を振ってこちらを見てくれる

フレデリックちゃん。相変わらず可愛い…)


「よお、お二人さん。こんちには」

「こんにちはボス。妹も連れてきました。」

「……。」

「こんにちは、妹ちゃん。折角の休みに悪いな。わざわざ来てくれてありがとよ」

「はい、大丈夫です。こちらこそお誘い

ありがとうございます」


「かはぁ~!礼儀がなってるなぁ。さすが

倉本くんの妹ちゃん!」

「そうですか?表上はこうしてますけど、裏はひどいですよ」

「ちょっとおにいちゃん!」

「はは、良いなぁ仲良くて。なぁ?

フレデリック?」

「はい、そうですね。とても仲が良さそうで

見てるこちらまで微笑ましくなります」

(それを壊したいって思うのは私の欲だから

もう少し様子をみましょうか。良いところまできて壊す…ふふ、快楽ですね)



内心、えげつない事を考えているのは

せいかではなくフレデリック本人であった。


「さて、雑談も済んだところで。中に入るか

ここのお店、俺のオススメだからさ お二人さんが気に入ってくれると嬉しいぜ。」


そうボスがまとめて四人は店に入った。

後ろを見ると、相も変わらずフレデリック

ちゃんにだけ警戒心が強いせいか。

なんかもう…色々諦めたわ……。

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