第19話 2人の詐欺師
(また殴られる…!)
そう死を覚悟して目を瞑る
小糠雨しんの たった13年の人生に幕が
降りようとしていた。
ヒュン__
金属バットが……僕の頭に来なかった。
「なっ、なんだお前らは!」
罵声を浴びせる父に驚いて目を開ける
バシッ
代わりに男女2人が来た。
「え??」
目の前にはスキンヘッドの男が金属バットを
片手で抑え込み父を睨み付けていて、
女の子は母を軽く羽交い締めにしていた。
「ちょっと何なの!?あなた達!」
「それはこちらの台詞ですよ、お母さま方」
一切の穢れがない透き通った声で語りかける
女の子。
「ああ、そうだな」
2人は目を合わせて より一層力を込め
両親を動けなくさせていた。
「おい、離せよ!なんなんだ!」
「五月蝿い!離すわけがないだろ!なぜ
泥だらけの少年が外にいるんだ!」
突如として怒鳴り散らすスキンヘッドの男
「そ、それは……」
言葉につまり目を泳がせる父
「少年くんの顔立ち、今ボスが抑えてる人に
似ています。親子なのでは?」
静かに指摘する女の子。その通りだ。
「ほほう?じゃあ お前は お父さんか。」
「そうだ。この出来損ないのガキの親だ!
なにか悪いか!?」
「ああ 悪いさ。こんな冷えきった冬の世界に放り出され、暴力を受けてる。おまけにバットで殺されかけてた。俺らが止めなかったら死んでたぜ。当然、親のする事じゃあねぇよなぁ?」
「……こいつを助けてなんの意味がある。
こんな出来損ない 育てた覚えはない。」
「ははあ、そうかぁ。てめぇは俺に
殺されるんだな?そうだな?今から殺す」
そうドスの聞いた声で脅し、素早く父から
金属バットを奪いとり大きく振り上げる。
「は?なにいって…」
バットを奪われ驚きを隠せない父を睨みつつ
頭目掛けて振り下ろされた。
ガンッ
「ぐはっ……!!」
フラフラとよろめき、ゆっくりと父が倒れた
一発必中。父は死んだ。
「きゃあああ!あなた!」
悲鳴をあげ、じたばたと足を暴れされる母
「うへぇ、近所迷惑だっつーの。」
「そうですよ お母さま。」
冷ややかに女の子は羽交い締めから変更
ヘッドロックを軽々しく決め、地面に
叩きつける。
「へ?きゃっ…」
ドンッ
鈍い音がする。
「あっ…ぐえ…いやぁ」
即死はしなかったものの動けなくなった
そこから女の子は直ぐに仰向けに倒れてる
母に覆い被さり見下ろす。
「死にたいですか?」
優しくも心だけがつまっていない質問をする
「しっ、死にたくないわ!」
必死に懇願する母
「良い返事です。ふふ、では貴女には
選ばせてあげますね?…死にかたを」
「いや!助けて!!しん!」
名前を呼ばれたが、スキンヘッドの男に
行く必要はないと目で言われた。
「お母さん…」
「無様ですよ、父の暴行の手助けをしてた母が今更 息子に助けを求めるなんて。」
「なんでよ!死にたくないから助けを
求めてるんじゃない!いけないの!?」
「ええ、いけないですよ。」
そういって革ジャンのポケットから拳銃を
取り出し、母のこめかみに向ける。
「いや…ここは日本よ…。そんなことが
許されるわけないわ」
「ここがどこだろうと関係ありません。
愛する夫と同じ 頭を狙いますね?」
「やめて、いや!」
パンッ!
銃が撃ち込まれ母は死んだ。
「……。」
「ボス、息の根を止めました」
「ああ良くやった」
状況読めずしばし呆然とする俺に女の子は
近づき、ゆっくりと腰をおろした。
「辛いところをみせてしまって ごめんね?
両親が目の前で殺されるなんて思っても
みなかったでしょう。」
「あ……はい。まぁ。」
「ふふ、正直者は好きですよ?」
「なっ…!」
「フレデリック、話してるところ悪いんだが
ここを離れねぇか?」
「あ!そうですね。少年くん、立てる?」
「はい。なんとか」
「ちょっとした場所に車が停めてあるから
そこまで付き合ってくれるかな?」
「…分かりました」
(俺もそこで殺されるのか?)
「少年、そんな怯えた目ぇすんな。君は
殺さねぇよ。当たり前だろ」
「あっ…すみません」
背が高くオーラがなんかヤバいので
怯えてしまい、つい謝罪してしまった。
「ふふ、面白い子。」
隣でにこやかに歩く女の子。2人に挟まれ
てるので、ボディーガードをされてるみたいだった。
異様な光景にどぎまぎしながら歩いてると
黒のジムニーが見えてきた。
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