第17話 小糠雨しん


フレデリックたそからハッキングを頼まれたので、早速 準備を始めた。

以前にも何度か軽い仕事を任されることが

あったので今回もその類いだと予想していて


事実、その予想は当たってた。

当たってはいるのだが 騙す相手が若い少年だとは聞いていない。


「まじ……有り得ない…」


怒りをはらんだ独り言が天井に届く。

フレデリックと小糠雨の間には何もないが

どうしても納得がいかない


「今更ね…頑張っても意味ないっちゅーのは

分かってるけどねぇ。」


初恋の相手(フレデリック)にはとっくの昔に振られていてターゲットが若かろうが

何だろうが そんなの自分には関係ない。


私情は何処に行っても持ち込むな

当たり前である。それでも小糠雨は嫌だった


「倉本一家ねぇ…」

フレデリックから教えて貰った情報を

振り返り、さて どうやって進入するか?

そう考えていると着信音がなった。


「うん?今度は誰や?」

画面をみると主は「ボスから電話」の文字が


「…はぁい、もしもし。僕でぇす」

うざさは残しつつも何処かテンションが

低い感じを匂わせる返事をした小糠雨


「もしもし俺だけど。そっちにフレデリックが向かったろ?話は聞いてるな?」

余計な事は言わず単刀直入に物をいうボス

(テンサゲなの気づいてくれよ……)


「あぁ、はい。聞いてますよ~。フレデリックたそが日本に向かうってことで、僕も行かなくちゃ駄目っすよね?」

こちらも無駄話はせず仕事内容を確認する。


「そうだ。俺も一緒に行くから日本に着くまでは同行しろ。あとは好きにやれ。」

「あー、なるへそ。そういう系っすね。」

どういう系なんだ…と内心 突っこみつつも

きちんと小糠雨の話を聞くボス


「そうだ。久しぶりの特務で 張り切ってる

みたいだから、お前もフレデリックの事

見てやってくれ」


「ふぇい、了解でーす。」


(騙す相手が男って聞いてるから 何か

ボスと話してるのも怠くなってきたなぁ…)


「今月末には向かうから その時また詳しく

話す。今日は もう休め、怠いんだろ?」

「はは…エスパーかよ 流石ボス。じゃあ

お言葉に甘えて また今度っす」

「あぁ、よろしくな。」


プツッ__


「はぁああ~。」

電話を切った後フラフラとベッドにダイブし

そのまま寝ることにした


____

〈ボスの自室にて〉

ギシッ


電話を切り、重い身体をソファーにおろし たボスは小糠雨しんの事を考えていた。


あいつはお調子者だけど その真意は真面目

なんだよなぁ。

あんなに明るく接してるのも俺やフレデリックを心配させない為にやっていることなのは

分かっているし、

人一倍 苦労してきた人間ほど

あっけなく壊れやすいと言うのに必死に

仕事に取り組んでいる。


だから、それに答えるように慎重に接しているつもりなのだが、どうしても本人を目の前にすると忘れる。


(あの軽さが駄目なんだろうなぁ)


しかし、あのとき小糠雨をほっといて任務を

遂行していたら まぁ出来なくは無かったが

人としてクズすぎるというか批判を浴びそう

だな。


フレデリックも同行させてたし 第一 彼女が

真っ先に見つけた訳だし。どっちにしろ

助けてたか……。


あの惨劇を思い出してしまい、胃が痛む。

仕方がないので このままソファーで寝る


小糠雨しんには幸せになってほしい

悪の組織のトップであろうと これだけは

心の底から願っていた。























































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