第10話 誓い



私は男性恐怖症なのだと自覚したのは

ボスのお父様に強姦されてからだった。


その当時は何をされてるのか?何故 全裸の人間が自分に覆い被さってくるのか?全く

理解出来ていなかった。

今は理解出来るが、幼い私が分かる筈もない

恐怖心だけが変わらない。

__

勇敢に絶対王者である お父様に立ち向かう彼の姿は素直にかっこ良かった。キラキラ

輝いてて一切の無駄な動きがなく、瞬時に

私を助けてくれた。


(あぁ、こんな人も居るんだ…)


全ての男性を見下していた自分にとって

変えがたい印象を、それくらい衝撃を叩きつけた。


―――

あれから2年たったある日、ウィリシア・

レビィさんは大事な話があると言って私を

自室に連れ込み 話始めた。

第一声は

「あの時は酷いことをしてしまい

申し訳なかった。なんとお詫びをすれば

宜しいでしょうか?」


そして綺麗な土下座をされた


ずっとこの事を謝りたかったのだろう

当時まだ幼かった私には理解できないと思い

ある程度年齢があがった今ならと彼なりに

配慮してくれた。


「……そんな、貴方が起こした事件ではない

ですし気を落とさないで下さい。そもそも

私のお父さんが反感を売ったみたいですし

怒られる様な事を言うのが悪いの。」


何を言ったのかは定かではないが 相当 都合が合わない話をしなければ、お父さんを殺し

私を強姦する訳がない。


「しかし女性を傷つけるなど あっては

なりません。それにトラウマは消えないです。自分は忘れてると思っていても脳は必ず覚えているんです。何年経っても。」


「そういうものなのですか?」

「はい、君も大人になれば僕の言ったことが

解りますよ。」


一瞬 辛い表情を見せた彼

その姿が何故か いとおしくて、自分の方が

年下なのに守ってあげたくて__


「そんなにお詫びをしなければ気がすまない

というのであれば、こうしましょうよ。」

「……?」

「私は あのリアン・サイデリカの娘です。

貴方は今日からボスになるのでしょう?なら

この私を側近として従えてください。それで

許してあげます。」


「何を…おっしゃってるんですか?強姦した人間の、息子の近くに置いとけと?正気ですか?」


「はい、正気です。お父様は裏切りましたが

貴方は裏切らないでしょう?」


その鋭い目つきは14歳とは思えず すぐには

言い返せなかった。


「僕が裏切らないって何を根拠に言ってるんですか。人間なんですから嘘は誰だってつきますよ。今も君を騙してるかもしれない。」


「嘘つきは自分で騙すなんて言いません。

物事を素通りして黙るのが嘘つきです。よって貴方は私を騙さない。」


言葉を失いかけたが何とか口を開いた


「……分かりました。君を側近として従えます。ただ!あまり僕に感傷的にならないで

下さい。いちいち人の心を溶かそうとしなくていいですから。」


一線を越えるな、近づくな

その物言いに私はキレた。温厚なはずの性格が一瞬にして剥がれ落ちる


「五月蠅いですよ…」

「え?」

「五月蠅いって言ったんですよ!何なんですか それ!側近の意味わかってます!?」


「えっと……フレデリックちゃん?」


「私は貴方に助けて頂いただけで!凄く心が

満たされたんです!この程度どうってこと

ないって軽々しく為し遂げてるみたいですけど、誰もが出来る訳ではありません!」


「フレちゃ……」


「私が貴方を助け、一生をかけて

お守りいたします。傍に居させて下さい」


今度は自分が土下座をした

当たり前だ。こんな孤独な人を野放しに

出来るわけがない。


「女の子が土下座なんて…。ありがとう……宜しくね」


そう短く返した彼が初めて見せた本当の笑顔

_フレデリックは 誓った_






























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