第4話 母親の仕事 背景


今日は店番がなかった

お母さんが珍しく仕事をするそうで自由に

過ごして良いとのことだ


珍しくというのはどういう意味か?

三大悪 ギャンブル・たばこ・お酒 これらが

原因で働かない。実家が仕事場にも関わらずそれを殆ど僕に押しつける困った親である


[たまには働こう]というテキトー過ぎる考えで不定期に下に降りてきては仕事を始める

そして夕方辺りには店を締めパチスロを

しに行く。そんなろくでもない日々が

始まったのは お父さんが病気で亡くなった年からである


女でひとつで子供二人を育てるのは大変

なのだろう いつも何かに怯え焦っていた

頼りになる人を亡くし自然と笑顔が消えて

いったのは幼かった頃の僕や妹も察していた


それでも頑張ってお客さんの前では明るく

振る舞っている。お陰で常連さんは日々増え続けあたたかい空気が店を彩っていた


そして今日は働くと言うのだから お言葉に甘えて好きさせてもらうとする


正午12時を少し過ぎた


「何しよ…自宅警備(引きこもり)か散歩兼

買い物?」

独り言をぶつぶつほざきながら自室を出て

階段を降りる。降りた先にドアがあり

そこを開けると本屋に繋がっている


古びたドアが軋む。きちんと鍵を締め

堂々と店内を歩く。そりゃそうだ身内が

経営しているのだからやましいことはない


「けんちゃーん、どっかいくの~?」

カウンターから呑気な声が聞こえてきた


「あ…お母さん、ちょっと散歩してくるー!」

「あらそう!気を付けてね~」

「はーい!行ってきます」


いつも通り大丈夫だな…

そう余計な心配を取り消し外に出た


外は寒かった

晴れてはいるのだが風が冷たいので色々着こんで冬の格好をしなければ到底 出られる

天気ではなかった


「さっぶ!」

家との温度差に心臓がきゅっと縮こまる


しばらく歩いていると、やたらデカイ家が

見えてきた。玄関が洋風な感じになっており

教会をモデルにした家のようだ。


「でか……こんなんあったっけ?」


いつの間にか工事を終えたのか知らないが

兎に角 周りの住宅とは比べ物にならない位

高級そうな雰囲気を漂わせていた


目の前を通ろうとしたとき丁度

玄関から人が出てきた


「えっ!?」


つい声を出してしまった


だってその人は…

忘れる事なんて絶対に出来ない

あの美女が居たんだから___







































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