第4話 魔王と勇者 (1)

〈カン! ガン! カン! ガシャン!〉


 う~ん、いつもの、この夕暮れの刻ならば、儂は大抵物静かに寝所で横になり寛ぎながら、お酒を飲み、何かしら、不思議な話しが書いてある本でも読みながら、安息の時を過ごし、今日の疲れを取り労う最中だと思うのだが。


 う~ん、どうやら、今日は、そうはいかないみたいだよ。


 だって儂はのぅ、傍から見ている皆も知っての通りで、先程からと、この部屋に響き渡る程の、金属音を出しながら剣戟を交わし続けている最中だったのだが。今迄長い時間──打ち合いをしたためか? そろそろ、儂の体力の方が限界にきているようなのだ。


 だから儂ととの決着の方が、そろそろつきそうな流れになってきたようだから。そろそろ儂は、死を覚悟せねばならないようだ。


「魔王覚悟! 死ねぇえええっ!」


 は若さに任せて力強く剣を両手で──魔王である儂に振り下ろしながら怒号を放ってきた。


 でものぅ、儂の方も最後の力を振り絞ると、『カァ~ン!』と、また鈍い金属音が響き渡ったよ。儂が先程から、と呼んでいる勇者の振り下ろした剣を、最後に力を振り絞り受けたから。


 でッ、その後儂は勇者に、「うっ、うぐっ……。そうはいかぬぞ、勇者! 儂は未だ終らんよ」と、言葉を返し。儂自身の奥歯を噛みしめながら抵抗をしてみせたよ。


「ほう、そうか、魔王。未だ抵抗をするのだな……。でも、お前の魔力はそろそろ尽き掛けているはずだ。だから抵抗をするのは、そろそろやめておけ……。今から私が貴様を楽にあの世へと送ってやるから……」


 う~ん、でも、儂の残る力を振り絞って耐えに耐えた剣戟……。そして強がりも、この世界でただ一人しかいない勇者と呼ばれている者には全く通用しなかった。


 それどころか、逆に、儂は勇者に、強がりを申すなと、荒々しい口調で言葉を放たれてしまったのだよ。


 でッ、その後勇者は儂に言葉を放ち終えると、今度は直ぐに刹那だよ。


 そのまま、お互いが交わしている剣──。それも自身の剣を、強引に儂へと押さえ付け押し込み始めたのだよ。儂の首を落とそうと……。


 まあ、儂自身も元気の良い時なら、勇者の力押しにも、強引に押し返す事も可能かも知れぬが。もう既に長い時間(とき)をかけ勇者と剣戟を交わし争っている訳だからのぅ。先程勇者が申した通りじゃ、儂自身の魔力も体力も限界で底を尽きかけている。


 だから先程儂が言葉を漏らした通りじゃよ。そろそろ儂の命の灯も消えそうなだよ。


 まあ、大事な一人娘を置いて先立つ事は心残りで忍びないのだが。娘、お前は、この機に乗じて上手く逃げておくれ……。母は出来るだけこのまま時間を稼いで先に命を絶つよ。

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