第3話 発作
淡くて白い結晶が、ひとつ、またひとつと空から舞い降りてくる。
「マジかよ。今って、六月……だよな?」
誰に問うでもなく
とりあえず、垣根の近くにあるベンチに腰を下ろした。気温のせいか、やけに冷たく感じた。
俺はそのまま背もたれに体重を預けると、ぼんやりと雪を見つめ始めた。
なぜか心の中が、澄んだ
こんな安心感は久しぶりだった。
「この雪も、俺も、似た者同士ってことか」
空に向かって、俺はそっと吐き捨てた。
異常。
そう例えるのが適切なもの同士。
同じような存在が、たとえ少しの間でも身近にいてくれる、というより降ってくれているのは、とても心強かった。
でも、この雪もいつかは……。
そう思った時だった。
「ぐうっっ⁉」
高熱の鉄板か何かで焼かれているような熱さと痛みが、全身を駆け巡った。呼吸も一気に荒くなり、心臓が壊れそうな勢いで脈打ち始める。身体のあちこちから汗が吹き出し、後数瞬で死ぬんじゃないかと思うくらいの苦しさが、俺を襲った。
「はぁ……はぁ……」
今までで一番ひどい発作だ。
息も絶え絶えになりながら、手探りでポケットの中からなんとか注射器を取り出す。そして乱暴に数回降ってから、太ももに刺そうとキャップを外した時、
「あっ!」
手の感覚が
注射器はころころと転がり、ベンチの下に入って見えなくなる。
やばい。
本能的に、そう思った。
焼けるような痛みと熱さはますますひどくなり、意識が
……このまま死ぬのも、いいかもな。
他人事みたいに、心の中でそうつぶやいた。
悲鳴をあげる身体とは裏腹に、頭の中はやけにクリアだった。
そんな非日常的思考も白く塗りつぶされようとしていた寸前、
「……え?」
ひんやりとした何かが、両頬に触れた。
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