第5話 幽霊と人生ゲーム2

 人生ゲームもかなり大詰めになってきた。

俺たちは、家を買ったり買わなかったり、家が燃えて消えたり消えなかったりと、いろんなことを乗り越えてようやく終盤までやってきた。


 「さぁ、私の番ね。」

と、霊子が少し興奮気味に言う。

 そしてルーレットを回す。

出た数字は3。

 霊子は3マス進めた。

 「なになに。高級車に追突し、3万の罰金と一回休み。」

「どうしてこうなるのよー!」

と叫ぶ霊子。

 「日頃の行いの差だな。」

と冷静にツッコミを入れる俺。


 その瞬間、この世のものとは思えない顔でこちらを睨む霊子。

 「ご、ご、ご、ごめんなさい。」

と、ぶるぶるに震えながら言う俺。

 「そ、そんなに怒るなよ。な?」

と少しなだめる俺。

 「いいから早くルーレットを回しなさいよ!」

と、今にも噛みつきそうな態度で俺を脅してくる霊子。

 「分かったから。」

と俺は言い、ルーレットを回す。

俺の出た数字は1。

1つ進めて、書いてあるものを読む。

 「仕事で失敗をして退職を迫られる。職を失う…。」

 俺は一瞬真っ白になった。

 「はぇー。」

と、気づけばこんなこと口から漏らしていた。

 「失敗してしまったのなら仕方ないわね。」

「ようこそ私と同じ土俵へ。」

「歓迎してあげるわ。」

と、ウキウキに、嫌味たっぷりに言ってくる霊子。

 俺は『ちくしょー!絶対に勝ってやる』

と、心で呟いてからもう一度ルーレットを回す。

出た数字はまたもや1。

とりあえず、コマを進める。

 「なになに。車が故障。一回休み。」

なかなかにうざいが、休みだけで済むのならまぁよしと思ってしまった。


 そして、霊子がルーレットを回す。

出た数字は4。

コマを進めると、何やら給料日マスにとまった。

またルーレットを回す霊子。

出た数字は1。

 「私っていつになったらもっとお金もらえるの…。」

と、少し絶望の顔をしていた。

 「本当にお前は運がないんだな。」

と、俺は少し哀れな感じで言った。

 「うるさいわよ!」

と、言いながら、またルーレットを回す。

そして、霊子は決算マスにとまった。

まだ約束手形が5枚ほど残っている。

 「もしかして、私ここで働かされるの?」

と俺に尋ねてきた。

俺はニヤニヤしながら、コクリと頷いた。

 「そんなぁ〜。」

と嘆く霊子。

そんな中、俺はルーレットを勢いよく回す。

ルーレットが少し変な動きをして止まる。

出た数字は1だった。

 「お前、もしかして霊力使ってるか?」

と、俺は死んだ魚のような目で霊子の目を見て言う。

 「つ、使ってるわけ、な、ないじゃない。」

と、少し狼狽えている霊子。

 「いいんだぞ、ユートピアに連れてっても。」

と、死んだ魚の目をしながら、霊子を脅す俺。

 「ご、ごめんなさい。」

と、謝る霊子。

 「ならもう一回回すからな?」

と俺は言って、もう一度ルーレットを回した。

出た数字は3。

決算日には少し届かなかった。

そして、霊子が回す。

そして借金をまた少し返す。

そして俺の番になり、ようやく、決算日のマスに止まった。

そして俺は約束手形がないので、特に何もなかった。

もらえるものだけもらい、霊子の番になる。

霊子はまだ借金を返せないでいる。

俺がルーレットを回す。

ゴールから3マス前のところで止まった。

そこにはこう書いてあった。

「宇宙人に持ち物を奪われる。持っている物件、財宝など、全て没収される。」

と、書いてあった。

 「なんで最後の最後にこんなトラップ仕掛けてあるんだよ!!」

と、俺は虚しく叫んだ。

 「当然じゃない。私が苦労してるときに歩夢だけ幸せになっていいわけないじゃない。」

と、平然といって来やがった。

俺はカチンときたが、もうゴールは目の前にあるのでなんとか怒りを抑え込んで、霊子にルーレットを回させる。


 霊子はまだ借金を返し切れていない。

そうして俺の番になり、俺は無事にゴール。

「霊子、ちゃんと最後までやるんだぞ。」

と、にこやかに言った。

 「うるさいわね、ちゃんとやり切るわよ!」

と言ってひたすらにルーレットを回して、霊子がゴールした。

なかなかのデッドヒートを繰り広げ、最終結果は俺の勝利。結構僅差になり少し焦ったが、なんとか勝てた。

 「なんでギリギリで負けるのよ!」

と、言う霊子。

俺は

 「いい勝負だったぜ、霊子。」

と、少しカッコつけて言った。

 「何がいい勝負よ!」

「私は勝ちたいのよ!」

と、悔しそうに叫ぶ霊子。

 「もう一度やるわよ!」

と、やる気満々に言ってくる。

 「明日も仕事だからまた今度な。」

と、さらっと言う俺。

 「勝ち逃げは許さないわよ。」

明らかに、悪霊のそれといった顔をして俺に言ってきた。

俺も流石に怖くて

 「分かったから。」

と、言ってもう一度やる羽目になった。

流石に二回は負けてしまったが、まぁなかなかに楽しい時間を過ごすことができた。


しかし、幽霊になったらあんな怖い顔になることもあるんだなと思った俺だった。


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