第4話 幽霊と人生ゲーム

 闇鍋をしてから随分と時間が経ち、少しばかり肌寒い季節になりつつあった。

 俺はいつものように仕事場で接客をしていた。

 「お客様、こちらがスイートルームでございます。」と、俺は丁寧にお客様をもてなす。

 「この部屋、本当に綺麗で素晴らしいわね。」

「ミニバーはどこにあるのかしら?」

と、尋ねる小綺麗なマダム。

 「ミニバーでございましたら、こちらにございます。」

と俺は実際に見せる。

 「ここなのね。」

「丁寧にありがとうね。」

と、嬉しそうに微笑むマダム。

「お褒め頂き、ありがとうございます。」

と、少し、カッコつけながらに言う俺。

 そうして部屋を後にして、誰もいないところでガッツポーズをとる俺。

やっと一人前のように振る舞うことができているのかなと浮かれていた。

 

そんなこんとを噛み締めていて、従業員と曲がり角でぶつかってしまった。

「すいません!」

と俺は謝り、ぶつかってしまった人に手を差し伸ばすが、手を取らずに立ち上がり、

 「ちゃんと周り確認してよね!」

と少し、怒られてしまった。

俺は少し落ち込んだが、すぐに気分を変えて仕事に集中した。

 そして、今日の勤務が終わり、家に帰る。


 家に帰る途中にスーパーに入って少し買い物をする俺。

必要なものをカゴにいれ、レジに持っていく。

少しばかり、買いすぎてしまい、お金がかなり飛んでいってしまったが、そこで、くじ引きの券を1枚もらった。

 なにやら、一定以上買い上げると1枚貰えるらしい。

そしてそのくじを持って、くじ引きのところへ向かう。俺は『こんなの当たらねえだろう』と思ながら、くじを引いた。すると鐘を鳴らす音がしたと思うと、

 「あたりが出ましたー!」

とくじ引きの店員が言い出す。

俺はポカーンとしていたが、とりあえず景品を貰った。

 そして家に着き、

 「ただいまー。」

と言って家に入る。そして買ったものを整理して、

 「人生ゲームしようぜー。」

と霊子に言った。

 「人生ゲームなんか買ってきたの??」

と少し驚きながらに言う霊子。

 「違うんだよ。これはくじ引きの景品で当たったんだよ」

と答える俺。

実はと言うと、くじ引きで当たったのが、この人生ゲーム。

こんな物を当てるとは思っていなかったので、俺もびっくりしているが、暇つぶしにも使えるのでこれはこれでありがたいと思ってしまった俺がいる。

 「これで少しは俺の休日も明るくなるってもんよ!」

と、かなり嬉しそうにする俺。

 「よくやったわね、歩夢!」

と言う霊子。

そんな、会話をしながらも人生ゲームの用意をしていく。


 そして一通り準備が終わり、

 「さっそくやるか!」

と、明らかにテンションが上がって言う俺。

 「望むところよ!」

と対抗心を燃やしながらに答える霊子。

順番をルーレットで決める。

 その結果、俺が初めに行うことに決まった。

そして、さっそく俺がルーレットを回す。

ルーレットは2のところで止まった。

俺は自分のコマを2進める。

俺は、職業ホテルマンのマスに止まった。

 「ゲームでもホテルマンのところに止まるとか、これはもはや転職でしかないんだな!」

と興奮しながらに呟く。

そして俺はホテルマンになることを決めた。

 「ゲームですら、そんな安い給料のところに行くなんて頭おかしいんじゃないの??」

と、挑発するかのように言う霊子。

 「なにを!」

「ホテルは素晴らしい職業だぞ!」

と対抗して言う俺。

 「私の行き着く先を見ておきなさい!」

と言ってルーレットを回す霊子。

ルーレットは勢いよく回り、なかなか止まらない。

俺も霊子もルーレットに視線を奪われ続けている。

 そしてついに止まった。


結果は10だった。

 「どうよ歩夢。」

「あなたと違ってかなり進んだわ。」

私の方があなたの5倍は効率がいいってことの現れよ!」

と、かなり憎たらしく、俺に言ってくる。

 しかし、霊子がコマを進めると、職業マスを全て通り過ぎていた。

 「ざまぁねぇな、霊子!」

「もはや、お前の給料は運任せだ!」

「それも1万以上は稼げねぇぞ!」

「俺の方が賢く生きてるってことの現れだな!」

と、俺も憎たらしく言ってやった。しかも最後には大袈裟に腹立つような笑いもプレゼントしてやった。

 「まだゲームは始まったばかりなんだから!」

と、少し涙目になりながらに霊子が俺に言う。

そして俺がルーレットを回す。そして、給料日のマスに止まった。

俺は職業カードに書いてあるお金を手に入れ、霊子にわざとらしく見せつけた。

 「な、何にも羨ましくなんてないんだから!」

と強がりを、見せつける。

そして霊子がルーレットを回し、マスに止まる。

 「なになに、財布を落と、し、、、て、、

全額失う。」

 霊子は絶句し、絶望しているように見えた。

 「おい、霊子。これゲームだからな。」

「ってか、ちょっとずつ白くなってるんですけど!?」

「おい、霊子!」

「しっかりするんだ!」

と、俺が体を揺さぶりながら言った。

すると、霊子は気を取り戻した。


 そして、俺がルーレットをもう一度回し始めた。

そして俺はかなり最悪なマスに止まった。

 「えっとー。高価な壺を買い、10万支払う。」

俺は目が点になっていた。

そしてノリノリで霊子が支払いを済ませる。

 「くっそー、あいつさっきまでは灰になってたくせに…」

と、心の中で呟く俺。

俺の手持ちの金は2万5千円ほどしかなかったので、約束手形を4枚分発行されていた。

そして今あるのは1万5千円と借金。

なぜ、俺はあんな無駄に高い壺なんかに手を出してしまったんだと、嘆く。

 いや、まぁ実際には買ってないんだけど。ゲームだし。

 とにかく、かなりやばい状況にいるのは間違いない。


 そして霊子のターンになり、霊子がルーレットを回す。

 霊子は一回休みのマスに止まってしまった。

 「なんでこんなマスがあるのよー!」

と嘆いていた。

 そして再び俺のターンになり、ルーレットを回す。

 給料も入り、その給料で借金を1枚分返してもう一度、ルーレットを回す。

 そして、ここで俺は定番のマスに止まった。

 「とりあえず、結婚のマスに止まることができた。」

と、呟いた。


 それを聞いた霊子が、

 「私より先に結婚してるんじゃないわよ!」

と、やたらに噛み付いてくる残念な女。

俺は優しい目をしながら、

 「すぐにいい人が見つかるさ。」

と笑顔いっぱい言ってやった。

霊子はムスッとした顔をしていた。


 俺の番になり、俺がルーレットを回す。

がらがらと音が鳴り、1という目がでる。

 俺は1マス進める。

 「なになに、占いにハマり、1万使いこむ。」

「ちくしょー!」

「なんでこんなにも無駄遣いするんだ俺!」


 ふと、霊子を見るとかなり嬉しそうにしている。

そして霊子がルーレットを回し結婚する。

 「さぁ、私の結婚を祝いなさい!」

「さらにこのフリーターに結婚祝いをよこしなさい!」

と、やけに上から言ってくる。

 「そういえば、お前、俺の結婚祝い払ってねぇじゃねぇか!」

と、ふと気付いた俺が霊子に言う。

 すると、できない口笛をして誤魔化す霊子。

『この野郎』という気持ちを抑えつけて、ゲームに戻る。


 そして俺のターン。

ルーレットを回し、コマを進める。

またお金を散財するマスに止まり、絶望的になる。

 「あらあら、歩夢さん。どうして借金が増えてるのかしら?」

と煽ってくる霊子。


 「そういう、お前はどうしてお金がたまってないんだろうな?」

と煽り返す俺。

 「私はここから増えていくの!」

と言って再び転職できるマスのゾーンに差し掛かる。

 「見てなさいよ!」

と言ってルーレットを回す。

しかし、非常にも1番でかい目をだし、また全ての職業マスを通り過ぎていく。


 「言わんこっちゃねぇな!」

「お前はまだまだフリーターから抜け出せねぇんだよ!」

「ふはははははは!」

と高らかに笑う俺。

 「ちくしょー!」

と悔しがる霊子。


しかし、俺の状況は全く変わらない。

そしてついにきた、俺のターン。

ルーレットを回し、コマを進め、ついに嬉しいマスに止まった。

 「うおー!」

「子供ができたぜ!」

「さぁ、出産祝いを頂こうかぁ。」

と悪代官のように俺は霊子に詰め寄った。

 「仕方ないわね。」

と悪代官こと俺にお金を渡す。

偉く、素直で拍子抜けをする俺。


 次は霊子の番だ。

そして霊子はルーレットを回す。

出た目の分だけコマを進める。

止まったマスにはこう書いたあった。

『呪いの人形を買う。5万支払う』

いかにもやばい物を買わされている。

 「なによ!」

「こんなのいらないわよ!」

「しかも、価値0円じゃない!」

「本当に最悪なんですけど!」

と、かなり嘆いていた。


 そんなこんなで俺たちはどんどんルーレットを回し、コマを進めてきた。

そしてついにゲームもかなり大詰めまできた。


文字数もかなり多くなってきたので、続きはまた次のエピソードに回そうと思う。お楽しみに!



 

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