第2話 幽霊との朝
俺は前回の話で高らかに出て行かない宣言した後に、霊子が散らかした部屋を片付けることにした。
「霊子、今からお前が散らかした部屋を片付けるから、お前も手伝えよ。」
と、俺は言った。
「めんどくさいんですけど。」
と言う霊子。
その瞬間に俺は
「俺の方がめんどくさいわ!」
「何で俺が散らかした訳でもない部屋の片付けなんかしないといけないんだよ!」
「しかも、仕事終わりにだそ!」
と早口で捲し立てた。
「手伝うよ…な?」
最高の不適な笑みで言った。
すると、流石の霊子でも怖かったのだろうか、コクリと頷いた。
俺は
「わかればよろしい。」
と、少し上から目線で言った。
「どこから始めようか。」
と独り言をいって考える。
その時に霊子が言った。
「壁の落書きから始めない?」
「それは後だ。」
と言う俺。
「何でよ!?」
「これが1番めんどくさいじゃない!」
と、少し怒り気味に言う霊子。
「だからだよ!」
「1番時間がかかるから明日にするんだよ!」
と俺が霊子と同じ勢いで言い返す。
「それに俺は明日仕事だぞ。」
と、おっかない顔で俺が言う。
俺の剣幕にビビったのか、コクリと頷く、霊子。
そして、やっと部屋を片付け始める。
「ほんと、お前、どんだけ散らかしてんだよ。」
と愚痴る俺。
「仕方ないじゃない!」
「歩夢を出て行かせたかったんだから!」
「ここまでしないと焦らないでしょ!」
とまた怒鳴り気味に言う霊子。
「それにしてもだろ?」
と言う俺。10分ぐらい片付けて、やっと俺の周辺が片付いてきた。まだまだ片付けに時間がかかりそうだなと思った時にふと思った。
『あいつどうやっていつも片付けてたんだろ』と。
そこで俺は霊子に聞いてみた。
「霊子。お前、幽霊になってから、いつもはどうやって片付けてたんだ?」
「そんなの決まってるじゃない」
「他の人が綺麗にするのよ。」
と得意げに言う霊子。
その瞬間にすごく冷めた目で霊子を見る。
「何よ?」
「何か文句でもある?」
と、俺の視線に気付いた霊子が不満そうに言う。
「別にー。」
「ただ、幽霊様は楽していいなぁと。」
と冷めた目をしたまま、棒読みで言う俺。
「は、はぁ〜ん。羨ましいんでしょ?」
「羨ましいなら、あなたも死になさい。」
とさも得意げに言う霊子。
「遠慮しときます。」
と俺は素っ気なく言った。
「あら、そう。」
と淡々と霊子が言った。
そんなこんなで1時間程で片付け自体は終わった。
「ふう。かなり綺麗になったー。」
と俺は清々しい気分で言った。
「それじゃ、今日はこれで終わりにするぞ。」
と霊子に言った。
「やっと終わったー。」
と一息つく霊子。
そうして2人の初日は終わりを迎えた…
と思いたかった。
俺はあの後、そのままベッドで眠りについた。
俺は疲れていたため、1分もしないうちに眠りに落ちた。
そして寝静まった頃に
「おーい、歩夢さーん。」
「寝てますかー?」
とひそひそ声で言う霊子。
「うっしっしっし。」
と笑いながら霊子は俺の顔に落書きをする。
その後、どこかに姿を消した。
俺は朝、目が覚めた。
時間にして、8時。
俺は清々しい気持ちでコーヒーを作り爽やかな気持ちでコーヒーを飲む。
「昨日は大変だったけど、ぐっすり眠れたなぁ。」
「目覚めも最高だ。」
などと、調子の良いことを言う俺。
できる社会人のような痛い振る舞いをする。
もちろんこの時も霊子による素晴らしい落書きに気付いていない。
そして、顔を洗いに行く俺。バシャバシャと水で顔を洗い、タオルで顔を拭く。
そして、鏡を見る。
「何じゃこりゃあ!!!!」
そこには落書きされた顔があった。
目の周りには鉄板の丸と三角が書かれ、眉毛は繋がるようにマジックで書かれていた。
口の周りにも黒く、マジックで円を描かれていた。
ほっぺには、プレゼントと書かれていた。
これに俺は憤慨し、
「霊子!霊子ー!」
と、叫んだ。
すると、どこからか、爆笑をしている声が聞こえる。
「ぎゃはははははははは。」
「どんだけ気付くのに時間かかってんのよ!」
「そんな顔で朝を優雅に過ごしてるあんたを見るこっちの身にもなってよ!」
「ぎゃはははははははは。」
「もう傑作! 傑作なんですけどー!」
「ぎゃはははははははは。」
と、大爆笑する霊子。
俺は声のするリビングへ行き、
「このクソ幽霊!」
「何で今こんなことする…ん…」
「ヤバイ!」
「後1時間で仕事に行かねぇと!」
と焦り散らす俺。
ここまで来ると泣きたくなるが、そんなことよりも自分の顔を何とかするのが先だった。
とにかく高速で自分の顔面を水と共に手で擦りまくる。
しかし、全く落ちない落書き。
俺は焦りながら、石鹸を使って顔を必死に洗う。
少しはマシになったが、それでも落ちてはいない。
「あーもう!」
「全然落ちねぇじゃねぇか!」
と、叫ぶ俺。
そんな時に霊子は一言。
「そ、そ、そんなに、ひ、必死に、なっ、て、ぷぷ」
「あー、もうほんと歩夢は面白いわねぇ。」
「俺は面白くねぇ!」
と叫び散らす俺。
「こうなったら、あれを買いに行くしかねぇ!」
と俺は言いながら、部屋を出た。
向かった先は徒歩2分のコンビニ。
そこでヘアゴムを買った。
店員さんには容赦のない冷めた目を浴びた。
店を出た後、ほんの少し涙を流し、
「何でこんな目に…」
と俺は嘆いた。
その後、急いで家に向かった。
その途中で俺は
「あのクソゴーストやろう!」
「絶対に仕返してやるー!!!」
と叫んでいた。
そして家に着き、俺はすぐに石鹸とヘアゴムで顔面を洗った。
流石はヘアゴムと石鹸。(これは本当に落ちるらしい)
あの頑固な汚れが一瞬で落ちた。
俺が顔を洗っている間に、霊子が買ったものを見ていた。
それに気付いた俺は、霊子を見ると、霊子はニヤニヤしていた。
「何ニヤついてんだよ。」
と、聞く俺。
「あの顔でコンビニ行ったと思ったらまた面白くて、ぷぷぷ。」
「こいつ…」
「後で覚えてろよ?」
とかなり脅し気味に俺は霊子に伝えて、仕事へ行った。
霊子は満面の笑みで
「もう帰ってくるなよー。」
と、見送ってくれた。
そしてホテルで仕事をした後、すぐに本屋に行き、幽霊に関する本で知識を入れた後、その真っ直ぐに家に帰った。
「ただいまー。」
と言いながら、家に入る。
霊子がリビングにいるのを見える。
「あら、帰ってきたんだ。」
と嫌そうな顔で言う。
「ここは俺の家だからな。」
と言ってやった。
「違いますー!」
「ここは私の家ですー!」
とムカつかせるような顔で言ってきた。
俺は、
「今朝のことは忘れてないからな?」
と、死んだ魚のような目をしながら言った。
「でも歩夢は私に対してどうすることもできないじゃない。」
と得意げに言ってきやがった。
俺は帰りに入れてきた知識から1つ使うことにした。
俺は突然、
「びっくりするほどユートピア!」
と言った。
当然、霊子はポカーンとして、すぐに冷ややかな目で見てきた。
しかし、それでも俺はやめない。
「びっくりするほどユートピア!」
「びっくりするほどユートピア!」
何度も口にしてやった。
すると、霊子は異変に気付いたようだった。
「何か体が怠くなってきてるんですけど?」
と、戸惑っていた。
それでも俺はやめない。
読者の方々が『こいつヤベェ』と思っても俺はやめない。
なぜなら、俺は今朝、落書きをされた顔でコンビニへ行き、耐えがたい屈辱を経験した。
この程度では、俺の心に響かない。
「びっくりするほどユートピア!」
「びっくりするほどユートピア!」
と、言いまくっているうちに、霊子が
「本当にやめて!」
「霊力まで弱まってるから!」
「このままじゃ、消えちゃうから、除霊されちゃうから!」
と、必死の形相で訴えてきた。
「言うことがあるだろ?」
と、死んだ魚のような目をしながら俺は言ってやった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「本当にもうしないから!」
「顔には落書きはしないからー!」
と言った。
俺は勝ち誇ったような顔で
「分かればよろしい。」
と言ってやった。
こうして俺は霊子の弱点を1つ見つけたのだった。
ちなみにあの魔法の言葉(びっくりするほどユートピア)は本当に効果が、あるらしい。
幽霊にイタズラされたら試して見てほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます