第27話

 岩間さん。

 先日はご馳走さまでした。あの中華料理、すごくおいしかったです。

 私は岩間さんに謝らなければならないことがあります。

 あなたは私とのデートのために車を買おうとまでしてくれましたね。

 それなのに私はあなたの気持を踏みにじるようにそっけない言葉で不同意してし

 まいました。でも、あれは私の本心ではなかったのです。

 こんな私のためにそこまでして下さる岩間さんの気持は、泪が出るほど嬉しいものでした。でも、私にはそれを素直に受け入れることができない理由があるのです。

 愕かないで下さい。私は、あと数日しか生きることができないことを医師から宣告されています。嘘ではありません、半年ほど前に体調が思わしくなくて、総合病院で検査を受けたとき、発見されました。

  病名は、『急性白血病』です。

  別に残された時間を愉しもうとして岩間さんを利用したわけではありません。宣告を受けたあと、私はショックで食事も咽喉を通らない状態でした。でも、あるとき気づいたのです――このままだと死んでから間違いなく後悔すると。

  病気に負けたらだめだと言い聞かせながら毎日を送っていたとき、偶然にも岩間さんと知り合ったのです。以来これまでと違って毎日が愉しくなったのですが、私の胸の片隅にある捉えどころのないしこりのようなものは日に日に増幅していきました。

  しかし、岩間さんと話をしていると、その時間だけでも忌むものを忘れることができました。私を蝕むすべてのことから逃避することができたのです。しかし、すべてが私のわがままのせいです――本当にごめんなさい。

  私は、この二日間で会社に行くこともできない状態になってしまいました。本来ならちゃんと手紙にしたためるべきなのですが、このメールを打つのが精一杯です。どうかご理解

 

 メールはそこで止まっていた。

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