第24話
私はもうそろそろ彼女とのことを話してもいいと思い、彼は商談が上手くいかなかったことを聞いて欲しいという双方の思いが通じて、私たちは七時半に会社を出た。当然向かう先は決まっている。
安居酒屋の暖簾をくぐると、月曜日のせいもあって、いつもの半分ほどの客入りだった。いつものカウンターの席に落ち着く。
「話があったら先に聞こうか?」
私は生ビールで乾杯したあと、軽い気分で言った。
「いや、別にどうしても聞いてもらいたいことがあるわけじゃない。おまえも営業ならわかるように、先方の都合でどうにもならないことってあるじゃないか」
「わかる、わかるよ」
私は、まだひと口生ビールを口にしただけなのに、すでに酔いが廻ったような口振りになっている。
「俺のことはどうでもいい。俺の本心はきょうおまえと飲みたかったということだ。それより、そっちの話っていうのは何だ?」
ジョッキを置き、煙草を取り出して火を点けながら言った。
「そのことなんだけど、前々からおまえに話したかったことがある」
私はぐるりと目に届く範囲を見廻したあと、声を顰めて話した。
「何だ、どうかしたのか?」
「そんなに構えられるとどうも話し辛いんだけど、じつは、俺、いま真剣に付き合っている女性がいるんだ」
私は思い切って告白をした。
「それはよかった。おめでとう」
佐々木は恬淡とし言い方で私を見る。
「何だよ」
私は拍子抜けしてしまい、それしか言葉が出てこなかった。
「それぐらいのこと、俺が気づいてないとでも思ってたのか? どれほどおまえと付き合っていると思ってるんだ」
佐々木は掃き棄てるように行った。
「そういうつもりじゃなかったんだけれど、俺だってこの歳なんだから、こういうことに関しては、慎重にならざるを得ないことはわかって欲しい」
「それで?」
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