第23話
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思い立ってからこっち、ずっと彼女とドライブすることを夢見ていた。しかし、それが本当に夢となって消えるのにはこれまでよりずいぶん少ない時間ですんだ。
マイカーをあきらめた私は、これまでと同じパターンのデートを計画する。レンタカーを借りてもいいのだが、意見が喰い違ったばかりなので、もう少し間を置いてからのほうがいいだろうと思った。
でないとすると、彼女を喜ばせるには、どんなところがいいのだろう。日曜の一日をそればかり考えて過ごした。
しかし、深く思いを巡らすものの、すべてを出し切ってしまった石のように硬い殻の中からは、どう踠いても何も出てこなかった。頭を抱えてあきらめかけたとき、突然何かが舞い降りたように閃いた。
どこか景色のいいところへ旅行に誘い、温泉に浸かりっておいしい料理を食べたあと、ホテルのバーで大人の時間を過ごすっていうのはどうだろう。これならきっと彼女も賛成してくれるに違いない――。
週が開けた。
月曜日の朝は物憂く気怠いものだ。しかし、彼女を意識するようになり、そして会話を交わすようになって以来、そんなことは露も思わなくなった。それどころか日に日に恋情の念が増し、彼女の顔が見られない日などは、大袈裟ではなくまともに仕事が手につかないほどである。
朝いつもの時間にアパートを出た私は、急ぐ足取りで地下鉄の駅に向かう。ホームに降りていつもの場所で彼女を待つ。ところが時間になっても彼女が姿を見せない。私は電車を見送った。そしてもうひと電車やり過ごした。あとから来たサラリーマンたちが次々と電車に乗り込んで戦場に出向いてゆく。なぜか自分ひとりが置いけきぼりを喰らっているような焦燥感を
これまでにも仕事の都合や体調が悪いときなどは会えないことが何度もあった。携帯にかけるという手もなくはないが、お互いに最低必要な場合以外はかけないようにしよう、と約束をしているから、仕事がすんだらメールでも送ることにして、次の電車で会社に向かった。
きょうは夕方五時半から営業会議があった。営業部長を筆頭に八人が出席したが、佐々木の姿がなかった。いつも横にいる佐々木のことが気になってたまたま隣りに坐った高山に訊ねると、夕方から一件商談があるから、三、四十分遅れるって連絡がありました、とボールペンを気になるくらいノックしながら言った。
私は何度も点頭しながら会議のはじまるのを待った。
会議の内容は、いつものごとく売上と個人成績についてだ。そんなことは耳にタコができるほど聞かされている。もっと建設的な内容で話し合えないのかと、資料に目を落としながら上司の器量を疑う。
やがて部屋のドアが軽くノックされ、佐々木が姿を見せた。私の斜め右前に坐りながら視線を送ってきた。何か言いたげな顔だった。
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