第20話

「多少のアルコールはいいとしても、煙草はやめたほうがいい。躰によくないのは、子供でも知っている」

「いらんことだ、ほっといてくれ」

 シーマの一言一句に腹が立つ。そんなこと言われなくてもよくわかっている。しかし、これもひとつのストレス解消法だ。何だかんだと言いながらも、人間の寿命は決められているはずである。そのことをシーマに言うと、

「哀れな奴だ。おまえのいう寿命というものを決めるのに、このわしが一枚噛んでいることを認識していないようだな」

「ん?」私は一瞬戸惑った。

「やはりか。嘆かわしいことだな。いくら宗教の自由と言えども、この国は仏教国だ。仏教に関するそれくらいのことは知っておいて欲しいものだな」

「あんたが俺の寿命を決めるのか?」

 私は半信半疑ながら、気がつくと身を乗り出していた。

「まあそういうことになるな。でも心配するな、この間も言ったように、ここには腰掛けで来ている。おまえに引導を渡しに来ているのではない」

「ひとつ訊いてもいいか?」

「何だ?」

「世の中に掃いて棄てるほど死にそうな人間がいるはずなのに、ここであんたが一服していたらすべてがマヒしてしまうのと違うか?」

「その心配はいらない。わしの代わりにわしの分身が務めてくれておる」

 シーマは当然といった顔で私を見る。

「ふうん」

 私には見えない世界の話なだけに、そう言うよりなかった。

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