4話 宝石

昨日、高水と付き合い始めた。今日の部活がこんなに楽しみなことはない。さらに、うちにも来るからとても楽しみだ。すると、高水がいた

「おはよう、高水」

「うん、おはよう」

高水はなぜか元気がない。どうしたんだろう、あまり深追いはせず、いつも通りに接することにした。

「なあ、今日部活終わったら飯食いに来いよ。」

「ごめん、今日、家の用事があって部活にも出れそうにないの。」

「そうか」

なにか変な距離感を感じた。初めて会ったときとはまた別の距離感。だがその理由はすぐにわかることになる。突然担任が、

「みなさんに残念なお知らせがあります。高水優香さんがお父さんの仕事の都合で海外に引っ越す事になりました。」

え?嘘だろ………。

そんなこと聞かされてない。

「高水さんは、引っ越しの準備のため2日休んだあと、その2日後に海外に行くそうです。」

2日。もう、会えなくなるのか?まだ付き合った1日しかたってないのにあんまりだ。

2時間目の授業が終わり、俺は先生に

「腹痛が酷いので早退してもいいですか?」

「保健室に行きなさい。」

「早く病院に行かないと結構ヤバイです。」

「わかったわ」

俺は初めてずる休みをした。先生を騙した。

これがバレて、どんな処分になったっていい。

高水に会えるなら。俺は、メールで「ショッピングモールで待ってるから来てほしい。話がある。」と送った。そして、俺は前に待ち合わせした場所に留まり、高水が来るのを待った。

その日は高水は来なかった。

そしてメールで「明日も朝から同じ場所にいる。」と送り、家に帰った。

次の日、俺は、風邪だったと言い、学校を休んだ。もちろん、ショッピングモールに行くためだ。そこで、昼と夜の飯を持って、その場所で待ち続けた。そして、今日も来なかった。

もう会ってくれないのか そう思い、ショッピングモールを出て帰ろうとしたそのとき、

「正樹❗」

後ろから高水の声が聞こえ振り返るとそこには、涙を流しそうな顔した高水がいた。

「ホントに待ってたの?来ないかも知れなかったんだよ?」

「いいや、高水なら来ると思ってたから」

「話を聞かせてほしい」

そうすると、高水は話をしてくれた。

「お父さんの転勤は、学校が作った嘘の理由。ホントの理由は、私の海外の学校への転校。正樹に知られたくなかったからわざとそうやって言ってほしいと頼んだの。私の夢を叶えるにはそこが一番だった。」

「そうか、でも俺は高水と離れたくない。これからも卒業してもずっと一緒にいたい。けど一番大切な人の夢を叶えてほしいって言う気持ちもある。」

そんなことを言っていると、自然と目から涙が出てきた。

「出発は、もう2日後だろ」

「うん。でももう決めたの」

「俺は高水を引き留める事もしない。でもお前を諦めろと言われてもそれは断る。」

「でも、どうするの?」

簡単なことだった。だがそれはとても難しいことでもあった。

「高水は、そのままそっちの学校で学んでくれ。そっちに行ける予算も俺にはない。」

「会えなくなってもいいの?」

「あと、2年待ってくれないか、高水も大学に行くんだろう。」

「行くけど。」

「俺もここを出たらお前と同じ大学に行く。そうすれば俺の両親も認めてくれるし、そっちの両親にも挨拶ができる。だから、2年の辛抱だから待っててくれないか?」

「うん、わかった。約束2年待つ」

2日後。

「それじゃあ、優香。2年後に君を迎えに行く。」

「うん、楽しみにしてる。」

     優香サイド

正樹には、話していないけれど、実はもう付き合っていることは両親に伝えていて、反対もされなかった。むしろ、今から断ってもいいんだぞと言われた。

「ホントにいいのか?優香。お父さんは、そこまで無理をしてほしくない」

「無理なんかしてない。正樹は言ったもの2年後に迎えに行くって。」

すると、父親は、正樹の方を見て、

「いい人を見つけたな優香」

     優香サイドEND

優香がいったあと、それからが地獄の始まりだった。まず、優香と同じ大学に行くのに必死に勉強をした。毎日のように8時間は勉強をした。

それから、2年の月日が経ち、大学に無事合格し、優香にメールで「今日が約束の日だ」と送り、今、優香が引っ越した国、ニュージーランドに来た。

そして、大学の入学式、しっかりと参加したあとに優香を探した。どこにも見当たらない。

周りを見渡していると視界が真っ暗になった。

「だーれだ?」

聞き覚えのある声だった。後ろを振り返るとそこには、優香がいた。

「約束通り迎えに来たよ。優香。」

「久しぶり、待ってたよ」

俺たちはこれから二人の恋人としての生活をスタートさせる。辛いこともあるだろう、喧嘩だったするだろう。でも、それは今までできなかった埋め合わせ。これからは優香の側を絶対に離れないようしていく。

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