第3話 アスペルガー的恋愛事情 1
この歳まで生きてきて、それなりに恋愛も、愛も、失恋も、経験した。
上手くいかないことは仕方ない、相性の良しあしもある。
でも、大抵は自分自身に問題があることが多い。
その問題は、毎回同じことが引き金となって弾ける。
自分の中にあるドロドロとした嫉妬心と執着、そして欲望。
もっと愛してほしいと思う反面、これ以上踏み込みたくないと願う幼い心との葛藤だ。
学生の頃は感情のまま素直に気持ちを相手にぶつけておけば、それでかわいいと言ってくれていた。
しかし歳を重ね、正直なだけでは通用しなくなって、恋愛の仕方が分からなくなった。
愛してるのに、それを伝えるだけでは相手は満足しない。
どんなに身体を重ねても、心は手に入らないようで恐怖の底に堕ちていく。
「好き」という言葉が軽んじで感じられ、いつしか相手の言葉は飾り物のような感覚に陥る。
そして、相手に対して試すような行動をとる。
束縛はしない、放任主義だから。
浮気はしない、そんな気は毛頭ないから。
反抗的な受け答えをしてみる、本心はすべてを受け入れたいのに。
突き放してみる、でももやもやは消えない、さみしさだけが募る。
一歩踏み出すことをやめて、徹底的に受け身に転じる、手に入れた幸せが砂のようにこぼれていく。
それでも、愛してくれているのなら追いかけてくれるはずだと、疑わなかった。
気がつけば、愛する人は自分のもとから去り、孤独になる。
手に入れたはずの愛情を、自分自身でぶち壊し、そして悲観する。
「どうして?」と。
こんな不毛な愛し方、よほどのもの好きでなければ受け入れないだろう。
それなりに恋愛してきた。付き合った人数は多い方だと思う。
でも、何かが足りない。何かが違う。
だから長続きしない。
どんなに愛してくれても、心が満たされない。
一方的に別れを告げては、新しい愛を探し求める。
その繰り返し。
この恋が最後になればいいのに。
いつもそう思う。
だから、自分を飾り付けたりとりつくろったりはしたくない。
常にマイペースで、自然体のままの姿で恋愛に臨む。
それで良しとしてくれる相手を、受け入れたいと思ってる。
でも、出来ない
どうしても「仮面」を付けた自分が表面に出て、道化師のようにふるまう。
そして、疲れる。
結局は相手の愛情の重さに嫌気がさして、ドン引きし匙を投げてしまうのだ。
心底幸せなはずの、暖かい相手の胸元を突き放して逃げ出してしまう。
または、自分と相手の愛に温度差が激しすぎて、暴走する。
愛情を押し付けすぎて、引かれてしまう。
独りよがりの恋心は、いつしか憎しみにも似た感情に変化し攻撃心と化す。
同じベクトルの相手と出会うなんて、奇跡に近いのではないだろうか。
大抵の人は、相手に合わせて、我慢して、無理をして、愛する人の愛を受け入れる。
自分の気持ちなんて、分かっているようで全く理解していない。
だから不満が募る。
「こんなにお前に合わせているのに、なぜ自分を受け入れてくれないのか」と—。
そんな恋愛、疲れないの? それって楽しいこと?
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