我が子
くずき
我が子
教会の、一つの窓から顔をのぞかせた、お揃いの服を着ている彼女らは、何を話しているのだろう。
外の気温は10度にも満たない。きっと室内は暖房を入れているだろうに、窓を開けて怒られないのだろうか。
彼女らは、離れたところからでも聞こえるくらい、軽い笑い声を響かせる。3人、顔を突き合わせ、頬と頬がくっつきそうになりながら、手を動かして一生懸命に話している。
学校のことだろうか。イエスのことだろうか。家族のことか、はたまた好きな男子のことか。
この街に正午を知らせる、教会の鐘がなる。彼女らの声は、感嘆に変わり、高い声が響く。それから、一人の子が賛美歌を口ずさむと、二人とも同じく歌う。その賛美歌は、キリストの誕生を祝っていた。
「神の一人子は、母の胸に眠りたもう、安らかに」
胸に小さくなる、赤子が浮かぶ。頬を赤くし、母の暖かく、柔らかな胸に抱かれ、時々、小さな口で欠伸をする。
私は近くの公園のベンチに座り、彼女らを見た。
彼女らは未だ、窓から顔を出し、ケタケタ笑っている。
落ち葉が舞い上がり、風は彼女らの髪を弄ぶ。
ふいに、分からないが、涙がこみ上げて来た。その涙は、彼女らを輝く見せた。
ぺったんこのお腹をさすり、彼女らの声に耳を傾ける。
母らしき声に、大きな声で返事をし、窓から消えていく。それと同時に、また、私の視界に光は消え、残ったのは濁った視界。
外に出られない、我が子が、恋しかった。
我が子 くずき @kuzuki
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