第72話 最低最悪でクソみたいな噂
「なんで、付いてくるの・・・?」
「なんでって、それは絵里奈が一緒にいたいっって――」
「そんなこと聞いてない!私は一人になりたいの!何回言えば分かるのよ・・・ほっといてよ!」
「・・・」
絵里奈があの本を読んで1か月――祐樹は、今日も懲りずに絵里奈と共に行動していた。しかし、しつこい位に執着するその様に、絵里奈でさえも到頭耐え切れなくなっていた。どうにかどうにか我慢して、絵里奈は祐樹の言動を黙認していた。
――でも、もう耐え切れない・・・。
その時には既に、絵里奈は祐樹に対して言ったことを
『愛の終着点』という本を読んだ絵里奈は、まるで目の前の霧が晴れたかの様に、今までの自分を捨て新しい道を模索し始めた。
今までの自分はなんて愚かだったんだ。なんて馬鹿で醜かったんだ。
絵里奈は卑下し、そして後悔した。本当の”愛”とは何なのか、まだ自分に分からない。しかし絵里奈は確実に変化していった。
――今の私は、あの本に書いてあった通り絶対に後悔する・・・。
昔から感化されやすいタイプだった絵里奈は、到頭”本”という対象に感化されてしまった。今までファンタジー系の小説しか読んでいなかった彼女はある意味無防備だったのだろう。
新しい本に出会い、そして感化される。その事例は確かに少なくない。だが事今回に関しては絵里奈という、本に対して無知で感化されやすい女の子。
本来この『愛の終着点』という本は、ただ”愛の在り方”を見直してほしいという意味の啓発だったのだが、絵里奈は誤った方向に解釈してしまったのだ。
そして”後悔”しないために、絵里奈は選択をしたのだ。
祐樹を切り捨てると――。
◇
あの噂が学校に広まったのはいつだったか。
――うそでしょ?あのカッコいい人そんなことしてたの・・・?
――えぇ・・・クソ男じゃん・・・。
――好きだったのになぁ祐樹先輩。幻滅って感じ~。
――絵里奈さんも可哀そうだね・・・。
今思い出しても、反吐が出そうだ――。
◇
「はぁはぁはぁ」
太陽が真上に昇り、時間はお昼時。
だがそんな心地のよい時間帯に住宅街を駆け抜ける一つの影があった――
くっそ!!あいつどこに行きやがった!学校中探してもどこにもいないし、5時限目始まるってのに学校抜け出してしまったじゃねーか!!絵里奈に聞いても知らないって言うし・・・。くっそ!
「・・・はぁ、はぁ・・・ふざ、けんなよっ」
武流は荒い息を整えようもせず、最後の希望である祐樹の自宅を目指していた。
「俺はっ、はぁはぁ、あんな噂信じねーぞ祐樹!」
静かな住宅街に響くように、その声は木霊していった。
◇
武流は今日もいつもどおり登校していた。しかし、いつもとは違う学校の雰囲気に武流は思わず平生を崩されてしまった。今日は何か嫌な予感がすると、武流はうっすらと予感していた。
そしてそれはクラスに入った途端確信に変り――。
――川添祐樹が強姦したらしいぜ。
俺は、耳を疑った。
◇
ピンポーンピンポーンピンポーン。
いないのかよ祐樹!お願いだから家に居てくれ!ここ以外にお前がいる場所が見当つかないんだっ。
「くっそ!」
だがいつまで経っても家から返事は帰ってこない。
武流はやけくそ的に川添家の玄関のドアノブを捻った。すると――
「っ!・・・開いてる」
やっぱりいるのかよ祐樹・・・!
俺は感情の赴くままに家へ入り込み、土足である事さえも忘れ、2階にある祐樹の部屋へと駆け上がった。
そしてそこには――
「っ!?」
――手首にカッターナイフを当てる祐樹がいた。
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