第19話 友達への道ー2

「あそこにいる美人さん知ってる?」


 古瀬さんに背を向ける形で話し合う。


「っも、もちろんですっ。この学校では知らない人いない、とお、思います。わ、私でさえも知っているので・・」


 やっぱり彼女相当な有名人らしい。最近まで知らなかった俺、これ如何に。


「・・・あぁ、ごめん、ごめん、知らない人なんて居ないよな」


「は、はい」


「それでね、若山さんは彼女と友達になれる気がしてるんだ」


「む、無理ですっ!絶対にできませんっ。あの人は私みたいな女とは・・・」


「いやいや、彼女はそんな事気にしないと思うよ。それに、俺は彼女の事ボッチではないかと疑ってるんだよ」


「い、いや、流石にそれはないと思います・・」


「彼女、古瀬さんっていうんだけど、いつも独りでカウンターに座ってて読書してるんだ。昼休み、放課後絶対に一人でここで読書してるっていう噂だよ。だから行けると思・・」


「誰が、ボッチなんですか?」


「「・・・・・」」


「ふふっ。だ・れ・の・話をしていたんですか?」


「い、いやー俺の話ですよ。盗み聞きするのはいけませんよ?(焦)」


「人の悪口言うのはいけませんよ?(怒)」


「・・・・(無)」


 まずい、まさか後ろに居るとは・・・それよりこの状況を打破せねば。

 というか若山さん、あなたどこ見てるんですか?おーい


「悪気は無かったんです。少し魔が差しただけで」


「それ、よく犯罪者が言うセリフですね」


 ジーっと俺の瞳を覗いてくる黄銅色の水晶玉。

 うっ、この眼で見られると何故か金縛りを受けたように体が硬直する。逃げられない・・・


「す、すみませんっ」


「・・?あなたはどなたですか?」


「え、えっと、若山と言いますっ。私は芦田君のと・・知り合いで、いつも良くしてもらっています」


 悲報。俺、若山さんの友達じゃない。『ぼっち同盟』の時から友達になった思ってたのは俺だけでした。悲しい。


「そうなんですか。私に背を向けて2人で話をしていたので近づいてしまいましたが、案の定私の事について話していましたね?」


「い、いや、あの違います。芦田君はわ、私の為にした行為なので、責任なら私にあります・・」


「・・・どういうことですか?」


 もうここは正直に話した方がいいだろう。また要らぬ誤解が生まれるかもしれん。


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「・・・まず一つ、言わせてもらいます。私はボッチではありません。彼と違って」


 彼の部分が強調されていた気がする。いや、した。


「それと、若山さん。あなた、友達を作るのに他人を頼るんですか?仮に、彼の助力を借りて私があなたと友達に成ったとしましょう。ですが果たして、それは本当に”友達”と言えるのでしょうか。本当の意味での友達とは、そんなものでは、ないでしょう・・・そして芦田さん。あなたもあなたです。仮にも若山さんと親しい間柄にあるのならば、あなたが一つ、諫言するのが役目では?」


 この人やっぱり少し闇があるな。友達についてそんなに熱く語る人初めて見たよ。


「すみません」


「・・・・」


 ああ、またショボーンしてる。しかも今回の奴は前回のより増しましで。


「・・・・・・で、ですが、その、そこまで私と友達に成りたいのなら、いいですよ?」


 うん、わかるよその気持ち。なんかこっちが虐めてる気分になるものね。彼女の落ち込んだ様子見てると。

 

「ほ、ほんとですかっ?」


 秒で復活。


「・・は、はい・・」


「一件落着ですね」


「・・・・あなた何かしましたか?」


 場のセッティングをしました。


「まぁ、という事で友達同士、だね。若山さん」


「・・・は、はい」


 ?なんだ今の一瞬見せた悲しそうな顔は・・・いや、気のせいか。


「ですが、友達と言っても何をするんですか?」


「そうですね、まずは連絡先交換とか?」


 友達居ない同士に聞かないでください。だが連絡先交換しとけば、遊びの予定など他愛ない会話などが出来るのではなかろうか。知らんけど。


「あぁ、そうですね。では今しましょうか」


「それは帰りながらしませんか?ここ学校の中ですし」


 この学校では、スマホの携帯は原則禁止だ。まぁ、表面上は、だが。多分9割以上の生徒が携帯してるだろう。クラスメイトは昼休みなどにゲームやら動画など見ている。

 ちなみに俺は持ってきていない。優等生なんでね(そもそも使う場面が無い男)。


「そう、ですね。失念していました。ですが、芦田さんに言われると何故か釈然としません・・」


 不満を隠そうともせず表に出す古瀬さん。ひどない?


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 本当のことを言った方が良いのかもしれないが、どうだろう。

 さっきからずっと、誰かの視線を感じている。言わずもがなイケメンストーカー君である。彼女たちは気が付いているのだろうか。おそらく、気付いていないだろう。古瀬さん、君自分の体大事にしてるんじゃなかったけ?

 

 連絡先の話をしていた時、いや、最初からか、俺はずっとあいつの様子を横目で観察していた。は何か行動を起こすかもしれないと思っていたからだ。あそこで連絡先交換を止めたのは理由がある。

 あいつは今日を終わらせた所なのだろう。手前の本棚から奥の本棚までしっかりと。だが、余りにも粗雑な方法だった。見つけるのは容易にできたし、そもそも同じ本棚にずっと居て怪しまれないと思ったのか、このストーカー。


 今、俺の手の中にはある小さな機械が握られている。俺は今日の昼休み、一つだけ本棚の上部、非常に見えにくい場所にあったやつを取っていた。


「はぁ、どうしてこんなことまでするかね・・・」


「?なにかいいましたか?」


「いや、何も言ってませんよ」


 一体あいつは、これで何をしようとしたのか。こので。









~あとがき~


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