第12話 不甲斐ない愛のカタチ
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「道中暇ですし、お話でもしましょうか」
学校を出てすぐ、お隣で歩く古瀬さんが開口一番そんな提案をしてくる。
「そうですね」
「では、私から」
と置いて、お互い自己紹介がまだだったですね、と今更気づいたように言う。
「ご存知かもしれませんが、私の名前は古瀬
麻衣さん、というのか。うん、なんか麻衣っていう感じの雰囲気してますわ。というか隣のクラスなのに昨日が初認識とは。俺の行動範囲の小ささに惚れ惚れする。
「俺は芦田武流です。2年D組で出席番号は2番です」
古瀬さんの自己紹介に倣って言ってみる。
ちなみにうちの高校は一学年6クラス(A~F組)で、結構な人数を有してる。
「
「お世辞でも嬉しいですね」
「いえ、そんなことはありませんよ?」
実際、”たける”っていう名前はイケメンが似合う名前だ。俺には不相応だろう。
「それより、
それはよく言われる。千恵は俺と違って、陽キャでトップカーストだからな。ただ、羨ましいとは思わない。顔は別だけど。
あと、千代子っていいな。古瀬さんが妹と話す時を想像すると、笑ってしまいそう。
「ええ、性格も顔面レベルも全く違いますからね」
「え、えっとその武流さんもカッコいい?と思いますよ」
この子優しい、妹よ少しは見習いたまえ。そしてサラッと下の名前を呼ぶのはトップカースト所以か。さすが陽キャ。
「古瀬さんは優しいですね」
「・・・?」
「古瀬さんは趣味とかありますか?」
今度は俺から話を広げてみる。
「そうですね・・・趣味かは分かりませんが、大好きなことは読書です。本を読んでいる最中は嫌なことを忘れて、その作中に没頭できるのがとても心地いいんです。周りを気にせず、自分の世界に入れるあの感覚が・・・」
これはちょっと闇が深いかも。彼女くらいになると人間関係でも苦労するのかもしれない。さっきのストーカーの件もしかり。美人さんだしね。
「武流さんは?」
「俺はアニメ、漫画、小説。サブカルチャーが趣味です。まぁ要するにオタクです」
「・・そうですか。結構ハッキリと言うのですね」
「はい?」
「いえ・・・そうやって自らをオタクと明言する方は中々いませんので」
そうか。それはそうかもしれない。ただ、最近はオタクへの風当たりも弱くなってきている。数年後にはオタクは完全に世間に認められるようになるだろう。
「まぁ隠してもしょうがありませんからね」
「・・・すごいですね。ハッキリと言えるその性格は・・」
また墓穴を掘ったかもしれない。彼女の人間関係に首を突っ込もうとは思わないが、ちょっと気になる。というか、一つこれだけは言いたい。
「俺はそんな性格ではありませんよ。言いたい気持ちを抑えつけて、抑えつけて、今があります」
「・・そう、なんですか」
「えぇ、そうです」
思ったことをすぐ言えたならどれだけ楽か。誰しも、一つや二つ不満が存在する。それを皆抑えつけて生きているのだ。逆に無いように見える奴は、ただの阿呆か、
それから他愛の無い会話をしていると、事前に言われていた場所まで着いた。
「今日はありがとうございました」
学校から徒歩10分の場所にある公園。看板に書いてある文字には【東総公園】とある。街灯に照らされた公園は、どこか物寂しさを感じさせるものが見え隠れする。
彼女の家は公園の目の前にある、あのアパートらしい。目と鼻の先にあるから分かりやすい。
「いえ、俺もこの住宅街の土地勘が知れて良かったです」
「・・・?」
「あぁ、俺は数年前に今の家に引っ越して来たんですけど、いつも学校から自宅まで一直線に帰るので土地勘全くないんですよ」
「・・・・」
ちょっと呆れた目で見られた。
「そ、そういえばこの前、もう一度あの家を見たかった、って言ってましたけどあの家に何か思い入れでもあるんですか?」
しまった。話を変えるために慌てて言葉を紡いだが、聞くつもりのなかった事を聞いてしまった。彼女にとって、あまり聞かれて欲しくない内容だとは思っていたのだが・・・
「・・・その話は今度しますね。今日はもう夜遅いですし。今日は本当にありがとうございました。おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
そう言って背を向けた古瀬さん。一応ストーカー対策としての同伴、という名目だったので彼女がアパートへ入ったのを確認してから俺もその場を去った。
彼女のアパートの方面は、学校の正門を出て左の方角。対して俺の家は右の方角だ。なので一旦来た道を往復し、学校の正門まで戻る。そこから自宅へと向かった。
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現在夜の7時30分。ようやく自宅に着いた。彼女を送り届ける時間と家への帰路を合わせると25分掛かる。これを毎日とは・・・・・受けたものはしょうがない。最後までやりきろう。
はぁ、今日はゆっくり風呂に入ってアニメでも見よう、そんなことを思いながら玄関の扉を開けると、何か騒がしい。うるさいな。宝くじでも当たったのかね。
片足を上げ、靴を脱ごうと思ったその時、バァンッっ!と大きな音を立て、ダイニングへの扉が開いた。
そこに居たのは目を点にする妹、千恵だった。なにをそんなに驚いているのかと疑問に思っていると、急に千恵が俺に飛びついてきた。
「にいちゃーーんっ!!」
「グふォっ!」
「いってぇーよっ」
悶絶する俺を他所に、千恵は俺に強く抱き着き、すすり泣いていた。
そこへ俺が倒れた時の物音が聞こえたのか、両親が玄関へ駆けつけた。すると母は緊張の糸が切れたかのように、その場でへたり込み涙を流しながらこう言った。
「良かったっ・・・・」
一緒に駆け付けた父は涙を流す母の背中を摩りながら、心底安堵する様な顔で俺に言った。
「無事でよかった・・武流・・」
「へ?」
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