第1話

 受験に対して絶対に受かる自信があるかないかで答えると、ないと答えるはずだ。何故かというと受かると思っている落ちたら体に対するダメージが大きいが、ないと答えた方がダメージが少なくて済む。そして、少し自信が無い時にいい知らせが入るとその時の気持ちはなんとも言えない気分を味わえるのだ。要するに、自分にとって安全な選択を取るのが正解だ。しかし、北本高校は、地元の中学から入る人が大多数なのでそれほど難関校ではない。倍率は一.二倍ほどあたりで真面目に勉強すれば普通に受かる。だが、油断は禁物だ。過去にそれで痛い目にあった事がある。


 昇降口ヘ向うそこに合格者の受験番号が張り出されている。周りには親と来ている人や、自分と同じく一人で結果を見に来た人で溢れている。周りの人を避けながら自分の番号を探す。しばらくして自分の番号を見つけることができた。少し小さな溜息を漏らすと、体が楽になった気がする。やはり、緊張していたんだろう。ひとまず母に連絡をする。二コールしてやっと出た

「もしもし、母さん。受かったよ」

「良かったね。益次郎、母さん今忙しいから切るね。」

 やっぱり、母さんとの会話は短い。

 

 自分はもう安心だが、一人、気になる奴がいる。それは自分が小さな時から、仲がよく自分と同じ道を辿ってきた幼なじみの鳥山太郎の合否である。さっき会ったはずだが姿を消している。どこへ行ったのだろか?太郎は身長が俺よりも五センチ高く百八十七あるが、合否発表なので人が沢山居過ぎて太郎がどこにいるかわからなくなっている。流石に探すのも面倒なので、無料電話アプリで電話をかける。

「俺は、受かってたよ。太郎、お前はどうだ?」

すると、すぐに返事が返ってきた。

「俺も受かってたよ」 

 それは、実によかった。これでお互い高校デビューである。

「益次郎は今どこにいる?このあとちょっと話したいことがあるんだ……」

周りを見渡す。受験のとき一度しか来てないので、学校にあるものをお互い詳しく知らない。なのでひと目で分かるもの……。

「校門で待っている」 

「分かった、すぐ行く。」


 太郎との、電話は終了と、スマートフォンをポケットにしまい急ぎ足で校門へ向かう。だが、話とは一体なんだろう。太郎とは普通に話す仲だが、太郎が自ら話したいというのは珍しい。何かあったのだろうか? 

 校門へ行くと人は少なくなったとはいえ、まだ多くの人が残っている。太郎の姿は無く周りを見渡した。

 数分後、太郎が走ってやって来た。 

「ごめん、ごめん。まだ人が沢山いて抜け出すのが大変だっんだ」 

 やはりか、

 「いや、構わないけど話って何?」

「あーそれね。ここで話すのもなんだから合格祝いも兼ねてどっかの店で話 そ、」

 ちょうど時刻は十二時になっていた。

「まぁ、家に帰っても誰もいないからそうしよう」


 ガランゴロン……

 店に着いたが暑い。もう四月になっているが今年の冬は記録的な寒さだったのでまだ寒いだがそんなに暖房をかける必要はない。ただでさえ、地球温暖化が問題になっている今日。仕方なく上着を脱ぐが少し暑い。メニュー表を手に取り品を選ぶ。特に食べたいものが無いので最初に目に入ったたらこパスタを頼むことにする。 

「益次郎、呼んでいいか?」

「いいよ」

 太郎が店の人を呼びメニューを注文する。

「ご注文は以上でしょうか?」

「あっ!ドリンクバー忘れてた!益次郎いる?」 

 少し喉が乾いている。

「そうだな」 

「じぁ二つセットで」 

「かしこまりました」  

 注文が終わったので飲み物を取りに行く。最近妙にコーヒーへの興味が湧いている。なのでコーヒーを取る。太郎はメロンソーダだ。

「太郎それで話って何?」

「あぁァ忘れてた、ごめん、ごめん」

 何やっているんだが……

「で、話って言うのは益次郎お前、部活決めたか?」

 急すぎる。

「太郎さぁ、今日合否の発表がわかって今合格祝いをしているんだよ?なのに部活ってまだ早すぎないか」  

「要するにまだ決めてないんだよね?」

「そりゃそうだけど……」

「なら!謎解き部に入らないかい?」  

?????

「それって……もしかして、お前の兄さんが作ったあの部活のことか?」  

 すると太郎は笑みを浮かべた。 

「覚えていてくれたんだ、実に嬉しいよ」 

頼んでおいたパスタか運ばれてきた。うん、味には文句なし。

「確か活動内容は、学校の中や街の中で起きた不可思議な事について解き記事にするんだっけ?」 

「そうだよ。でも、よく覚えているね」 

これでも記憶がいい方だと自負している。

「それでどうかな?」 

 自分は高校に入って何かやりたい事など無いので断る理由はない。

「分かったよ、入ってやる」

すると太郎は驚いた目をしていた。 

「本当に?」 

「そうだけど」 

「ヤッタァァァあー」 

 大袈裟な……

「でも太郎はなんで俺に入ってほしんだ?」 

「だって益次郎さ、中学生の頃、窃盗事件の犯人推理して当てて、解決したじゃん」

 確かにあの事件の犯人を割り出したのは俺だが、それはまたまたであって犯人が馬鹿だったから、簡単に解決出きただけで偶然な事だ。

「それと、謎解き部は今部員不足で今年二人入らないと廃部になってしまうんだ、だから入って欲しかったんだ」

際ですか……

 そうこうしているうちにお互い注文した料理を食べ終わっていた。 

「お願いを聞いてくれたから今回は僕が奢るよ」 

そんなの悪いよと思ったが奢ってくれるというのでお言葉に甘える。

 店のドアを開けると外の寒気が一気に吹いてきた。やはり外は寒い。上着を着なければ………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る