ナカペ

プロローグ

 朝、時計は六時三〇分を指している。夢はなんか訳もなく走っている夢を見た気がする……どうでもいいが。起きるのには少し早い時間だが二度寝する気にはならないので仕方なくベッドから体を起こす。まだ少しベッドの外寒い。家のドアが開いた音がした。多分、母と父が会社へ行ったのだろう。田中家は母が製薬会社で働いて、父が病院で放射線科で働いており、二人とも朝早く家を出てしまう。なので基本、家では兄と二人である。 


 七時四十分。俺、田中益次郎は兄が作っておいてくれた目玉焼きとパンで済ませて寝癖を直し、歯を磨き、ある程度身支度を済ませ北本高校へ向かう。そして、授業を受けて家に帰る。いや、違う……。今日は、高校受験の合格発表日であるのだ。近日、ネットワークワーク化が進む中、他の学校はネットで合否がわかるのだが、この北本高校は昔ながらの紙に貼り出されるという実に珍しい学校だ。 


 ともあれ、受かればめでたく高校デビューをすることができる。高校デビューというのは人生で一度しかなく、同時に人生の大きな節目である。なので今までの自分とは変わりたいと思うような人が沢山おり、中学の頃ではとてもヤンチャな奴が急に静かになり真面目になったり、髪を染めたりする奴がいるという事をどっかで聞きたことがある。

  

 しかし、俺は髪を染めたり、生活態度を変えたりするのは実に面倒だと思っている。よって何も変わらず高校生活を送りたいと思っている。……受かればの話だが……。

 

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