第4話 召喚魔方陣 その2 隷属の腕輪
「これは、隷属の腕輪と言って、これをはめると命令に逆らえなくなるんだ」
「もっと早く言ってくれよ。もう、はめちゃったぞ」
転移直後の混乱から我に返った時に言われたのがこれ。
言った人は、ライトノベルマニアとも言える人物で、
言われた人は、その友だちだが、ライトノベルは苦手とする者。
「あ~あ、理不尽なことや人殺しも強要されるんだ。かわいそうだな~。僕ともっと親しい仲になっていれば、こんなこと起きなくなったのになぁ」
召喚された人数は多い。
教室1つ分。
もちろん、相手はクラスメイト。
『ふむ。毒されておるの』
俯瞰気味に見ているのは、この世界の長老格。
ただし、神ではなく、以前の召喚術で召喚された者。
いわば、同郷なのだが…
「腕輪を腕に付けましたか?」
「隷属させる腕輪なんかつけないぞ!」
いつもは何も言わない者が、なけなしの勇気を振り絞って叫ぶ。
「…、この腕輪の機能について、説明を聞いていなかったのすか?」
「隷属するためのものだ。そんなウソは通用しない!」
「そうですか。まぁ、いいでしょう」
得られた結果は、隷属の腕輪を付けないこと…だとマニアは思った。
「それでは、ここから表に出ましょう」
そう言うと連れだって召喚陣のある場所から外へ移動する。
しかし…
隷属の腕輪をしなかったものは、その場所から外へ出ることが出来なかった。
「なぜ、出られない!」
隷属の腕輪だと騒いだからか、渡されていた腕輪は取り上げられていた。
正確には、取りに来た兵士に投げていた。
「腕輪の機能、ほんとうに聞いていなかったようですね。まぁ、今となっては遅いですが」
「隷属の腕輪だろ」
「まだ、言っているのですか。この世界で腕輪をしていない者は、どこへも行けません。動物や植物ですら、認識票をつけているのですから。あなたは、ここから出ることはできません」
「…ウソだ。今まで読んできた本には、そんな事は書かれていなかった」
「何を言われているか分かりませんが、自己責任ということで。30年ぶりの召喚でしたので、次があるか分かりませんが、お元気で」
そう、別れを告げられ、相手をしていたローブの男?は、魔方陣がある石造りの部屋から出て行った。
部屋からは、扉もなく壁の一区画が開かれた状態になっている。
でも、魔方陣のある部屋から出ることができない僕には意味の無いことだ。
そこで、僕は言われたとおり“どこにも行けなかった”
餓死するわけでもなく、そこから動けなかった。
次の召喚者の時に、懇願すればいいと思っていた。
しかし、その後、“その場所で”召喚されることはなかった。
悔やんでも悔やみきれない現実がそこにあった。
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