9-4

 29日の夜、ログインの時間です。


 テロン!

 ――――修理アイテムが一件届きました。――――


 おお、シェリスさんに頼んでいた杖が戻ってきました。すぐにやってくれたのはとても助かりますね。

 それでは、ザインさんからの連絡が来るまで日課をこなしていましょう。


「あ、時雨、ちょっと聞いてよ」

「何見付けたの?」


 ふむ、何か見付けたわけではないんですがねぇ。


「いや、上級スキル取ったんだけど、耐久の消費が激しくて」

「武器スキル?」

「武器スキル」

「最初に覚えるのって火力はあるけど、デメリットが凄いんだよね」


 どうにも刀の上級スキルもそういったアーツだそうです。

 そういえば、前にユリアさんが使った反動の大きい魔法、あれも上級スキルなのでしょうか。まぁ、その内わかるでしょう。


「ところでさ、二刀スキル、持ってるっけ?」

「一応持ってるよ。ハヅチの方が詳しいけどね」


 時雨は両手武器の刀が主な武器なので、小太刀系を使っているハヅチの方がちゃんとスキルを育てているそうです。ただ、スキルをかなり育ててから発生するクエストをこなすと、両手武器と片手武器の二刀が出来るようになるらしいです。まぁ、出来るプレイヤーが少ないのであまり検証が進んでいないそうですが。

 両手杖の二刀は無理そうですが、魔銃での追撃や、短刀での自衛が出来るのは便利そうなので、取得を目指してみましょうかね。

 

 テロン!

 ――――フレンドメッセージが一通届きました。――――


 時雨から二刀スキルの情報を貰い、簡単に話を聞いていると、ザインさんから連絡が来ました。向こうの用意が整ったようで、来て欲しいそうです。

 表示される道案内に従い、ザインさんのクランハウスを訪れました。


「こんにちは」

「今回はよろしく頼む」


 そんなわけで、スロットエンチャントをする装備を用意してある場所へと案内されました。そこには、ザインさんのパーティーメンバー以外にも数人のプレイヤーがいます。作業を見たいとのことですが、物好きですねぇ。


「それで、どれからですか?」

「ここにあるのを、まずは穴をあけて欲しい」

「りょーかい」

「それと、複数空けられる場合は、限界まで頼みたい」

「スロット一つで1回ですからね」

「ああ、もちろんだ」


 用意しておいた回路の確認をしましたが、足りるかどうかはやってみなければわかりません。スロットエンチャントを連続で行いながら聞いたのですが、付けられるオーブの数で組み合わせを変えたいそうです。まぁ、オーブの素材さえ用意してくれているのなら、好きにしてもらいましょう。

 見に来ているプレイヤーも装備の受け渡しを手伝ってくれているので、多少は早くなりそうです。

 ちなみに、ユリアさんが用意してくれたケーキと飲み物にはMPの回復効果があるので、MPが尽きる心配はありません。

 うん、美味しいですね。


「よし、これで最後っと。ザインさん、スロットエンチャント、終わりましたよ」

「ありがとう。じゃあ、用意の出来た装備にオーブを頼む」


 見学者が空いた穴とオーブの希望を確認し、まとめていました。ユリアさんがこっそり教えてくれましたが、最後にザインさんが少し話をさせてくれないかと聞いてくる予定だとか。大半は魔法使いなので、いろいろとスキルの情報交換やら使い勝手などの話をしたいらしいですね。目的のわからないプレイヤーもいますが、断ってもいいらしいので、気が向いたら考えましょう。


「【オーブ化】【オーブ化】【オーブ化】……【マウント】【マウント】【マウント】」


 この装備は3個も付けられますよ。というか、スロットエンチャントをした段階でわかっていましたが、最低2個は付けられる時点で、最前線のプレイヤーの装備はいい素材を使ってますね。いえ、少し正確さ欠けますね。2個しか付けられない装備はほんのわずかで、大半が3個です。

 そして、最後の装備にオーブを取り付けました。


「終わったーーーーー」


 最後の装備を脇にどけて、作業台へ突っ伏しました。MPもまだ十分にあるので、ヤタ達を召喚して癒されましょう。


「お疲れ様」

「ケーキとジュースありがとうござ、もがもがもが」


 ヤタとコッペリアは広い作業台の上で寛いでいるのですが、信楽が正面から帽子をどけて頭の上に載ろうとして来ました。足が口に当たって塞がれそうになりましたよ。


「リーゼロッテ、そのままでいいから聞いてくれ。今日、作業を見学したメンバーが少し話をしたいらしい」


 ああ、ユリアさんがそんなことを言っていましたね。


「もがもが……、このままでいいのならいいですよ」


 精神的な疲れから突っ伏したままですが、信楽の向きを変えて口周りの自由を確保しました。


「ああ、それはもちろんだ」


 そんなわけで、見学に来ていた5人のプレイヤーが作業台の前に集まりました。出来上がった装備の仕分けは出来ても、持ち主に返すのはザインさんにしか出来ないようです。


「始めまして――」


 4人の魔法使い風のプレイヤーと、1人の格闘家風のプレイヤーが自己紹介を始めましたが、今の私に覚えることは……、今でなくても覚えませんね。


「どうも」

「フェニックスレイドのPV見ました」


 ザインさんが声をかけるプレイヤーだけあって、多重詠唱のスキルレベルも高いそうですが、マルチロックなどのちょっとしたプレイヤースキルの面での得意不得意の話をしたかったそうです。


「個別の軌道設定は3個まではいけるんですけどね、4個は難しいですよ」

「操作はな……」


 他のプレイヤーも中々に苦労しているそうです。総じて、楽な方法などなく、数をこなすしかないようです。

 上級スキルはまだ取得したばかりなのですが、聞くところによると、最初のアーツを使うことはほぼないそうです。

 中々に実のある話でした。

 さて、盛り上がった話が終わるまで気配を消していた格闘家風のプレイヤーは何の話でしょうかね。


「俺は知り合いの生産系プレイヤーから聞いてきて欲しいと言われた……のですが、フェニックスレイドの時のローブ、どうやった……のですか?」


 何とも無理矢理口調を整えている気がしますね。まぁ、気にしないでおきましょう。


「あの光る部分ですか?」

「そう……です」

「知らない」

「へ?」

「作ったの私じゃないんで。あの装備、涼しかったんですけど、あれに見た目以外の効果があるのかは知りません」


 こっそりと何か仕込んでいるか、仕込める可能性はありますが、知らない以上、何も言えませんね。


「そうか……」


 話も終わったので、そろそろお暇しましょう。





 そんなわけで、ヤタ達を連れてセンファストにある闘技場へとやって来ました。二刀スキルは闘技場内にいる両手に武器を持ったNPCに話しかけることで取得クエストが始まるそうです。ここには最初のイベントの時に来たくらいなので、中をまったく知らないんですよねぇ。

 スキルを覚えるために話しかけるNPCも位置がランダムだそうなので、探さなければいけません。

 うーむ、あそこのNPCは片方にしか武器を持っていませんし、あっちのNPCは両手に盾を持っています。ちゃんと見てみると、なんというか、わざと少し違うNPCを多数配置しているのではないかと思うくらい、両手に武器を持っているNPCがいませんね。持っている武器もその時々で違うそうなので、該当する武器を持ったNPCに片っ端から話しかけるという手段も取れません。

 おお、苦節数十分、やっと見付けましたよ。今日は短剣と杖という妙な組み合わせのようです。まったく、膝に傷があるので歩行介助用の杖だと思ってしまいましたが、あの杖、地面についていないんですよ。


「すみません、二刀というスキルについて聞きたいのですが」

「ほう、それは俺が二刀流の伝道者と知っていて聞きに来たのか?」


 ……これが最終的なスキルの名称だったりはしませんよね。


「知りません。けれど、二刀のスキルを教えてくれる人がいると聞いてきました」

「そうか。ならば、俺が二刀を扱うすべを教えよう」


 ピコン!

 ――――クエスト【二刀を学ぼう】が開始されました――――


 ふむ、クエストが開始されました。


「では、ついて来い」


 歩きながらクエストの確認をしてみると、どうやら二刀状態で闘技場のMOBと戦うようです。

 時雨からざっくりと話を聞いていましたが、武器の組み合わせや倒し方に決まりはないということで、短剣二本の状態で魔法を使っても問題なかったそうです。なら、魔術書と魔銃の組み合わせでいいでしょう。


「よし、ここだ。まずは小手調べ、このモンスターと戦ってみろ。もちろん、それぞれの手に武器を装備してだ」

「いえっさ」


 案内されたのは闘技場の小部屋です。一応客席もあるようなので大きい会場を使うまでもない場合に使うのでしょう。

 私達が入ってきたのとは逆の檻が上がり、出て来たMOBはゴブリンが1体です。二刀状態にしないと戦闘が開始されないので、武器を切り替えて、始めましょう。


【GOBUGOBU】

「【フラッシュレーザー】」


 クエストの目的としては武器を二つ装備した状態での動きを見たいのでしょう。まぁ、何らかの理由で杖が使えない、もしくは、杖以外を使う時のために取るので、魔法を使わないわけではありませんから。


「なかなかやるな。では、次だ」


 次に出て来たMOBはブラックウルフが2体です。ゴブリンと比べて一気に難易度が上がった気がしますが、魔法であっという間に終わりました。

 次に出て来たのは、存在は知っていましたが、HTO内では初めて見る【コボルト】が3体です。何処かにいるとは聞いていましたが、まさか闘技場で見るとは思いませんでした。個体によってはこん棒やモーニングスターを装備しているので、装備はその系統なのでしょう。

 そこまで強いMOBではなかったようで、こちらもあっという間に終わりました。

 そんなこんなで全5戦を終えると、二刀流の伝承者が近付いてきました。ふむ、次はNPCとの戦闘ですかね。


「なかなかやるじゃないか。これで君も二刀流の基礎を身に付けたわけだな。これからも精進するといい」


 ピコン!

 ――――クエスト【二刀を学ぼう】をクリアしました――――


「ありがとうございます」


 特に説明もなく【二刀】が取得可能スキルに表示されました。早速取得したわけですが、制限の攻撃力減少はあくまでも物理攻撃力に影響を与えるもので、魔法攻撃力には関係ないんですよね。そもそも、魔術書を右手側に装備しているので、利き手である右手の方しか参照されませんし。まぁ、アーツの使用制限が解除されるのは助かりますね。魔銃のアーツは大事ですから。

 闘技場の通路へと戻ってきました。それでは、戻り――ほへ?

 歩いていたのですが、丁字路のところで腕に何か引っかかった感触があったのですが、それと同時に視界が微妙に変化しました。何というか、まばたきした瞬間に位置が少し変わったような感覚です。うーむ、この暗い横道になにかあるのでしょうか。

 道の幅は大柄な人二人分くらいなのですが、奥の方が不自然なほどに暗いですね。手を突っ込んで振り回してみたところ、また何かに引っかかる感覚と共に一瞬で視界が微妙に変化しました。

 特に魔力視を使ってみても何かあるようには見えませんし、霊視を使ってみても反応はありません。直感が少し反応しているようですが、薄っすらとしています。まぁ、少しでも反応があるということは、確実に何かあるということでしょう。

 じーーーーー、おや?

 これは……糸でしょうか。暗がりの横道に糸が張ってあります。しかも、手で触れるとすぐに切れてしまい、横道の正面の位置に移動させられ、糸自体は違う場所に張り直されるようです。


「【光源】」


 頭の上に光の玉を出してみても、糸自体が細すぎるようですし、影かもわからないものが床に映った気がする程度なので、よくわかりませんね。

 時間をかけて見た結果、糸は1本しかないようです。切らない様に注意して通路の奥へ行くと、しばらくしてもう1本の糸を発見しました。いやー、偶然って怖いですねぇ。目の前にあるのを偶然発見したのですから。ただ、急には止まれないので、そのまま進んで切ってしまい、何かが光ったと思ったら横道の入口へと戻されていました。

 あ……ありのまま 今 起こった事を……やめておきましょう。

 糸を切って戻されただけですから。特に浮遊感はなかったので、サーバー移動とかではないようで、ショートジャンプに近い何かのようですね。

 試行回数と言えるような回数はこれから行いますが、この先に進むには糸を切ってはいけないということでしょう。帽子と外套を非表示にし、慎重に進んでみましょう。っとその前に、実験でMPを操作し、糸に触れてみます。

 糸が見えやすくなるのではと期待したのですが、MPで触れても糸は切れませんが、特に見えやすくなるわけでもないようで、意味はありませんでした。ふむ、楽をしてはいけないということですね。

 1本目をくぐって進み、2本目があった辺りまできました。よーく探してみると、今度は腰くらいの位置に糸が張ってあります。まだ2回目なので確実なことは言えませんが、同じ位置に張ってあるんでしょうかね。

 何度か試した結果、2本目以降の糸を切ると振り出しに戻り、違う向きに張り直されるようです。それでは、次へ向かいましょう。

 何度か入口まで戻されながら確認したところ、3本目までは等間隔に糸が張ってあるようです。今のところは1本づつなので、ある程度道幅に余裕があるとはいえ、このまま増えないでくれるとたすかります。

 さて、本腰を入れて奥へ行ってみましょう。

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 5本目以降は糸が増え、絡まることで曲がっていやらしい配置になっていたため苦戦しましたが、9本目を突破し、次は10本目です。光源のお陰で暗い通路の奥もしっかり見えるのですが、この先は行き止まりになっており、一人のNPCが佇んでいます。全身黒ずくめですが、何かあるNPCのはずです。

 最後の糸は今まで以上にいやらしい配置ですね。何せ、上下にジグザグしており、糸の隙間も狭いので、ゆっくりと蟹歩きをする必要があります。

 ……これ、時雨だったら通れませんね。まぁ、私なら余裕ですが。

 そして、行き止まりに佇んでいるNPCの元へ辿り着きました。


「ほう、ここを抜けてくるか」

「ここで何をしてるんですか?」

「……ほう、知らずにこの試練に挑んだのか」

「ええ」

「何はともあれ、この試練を突破した事実は変わらない。望むのであれば、この技術を伝えよう」


 恐らくは糸を使ったスキルのようですが、教えてくれるのであれば教わるべきですね。


「お願いします」


 そう口にした瞬間、黒ずくめのNPCが両手を動かし、指先から伸びている糸が四方から向かってきました。


「ふぎゃあ?」


 絡めとられたと思ったのですが、すぐに糸が溶けて消えると同時に、闘技場の入口の広間に戻されていました。用が済んだのでポイされたようですね。


「何かあれば尋ねに来るがいい」


 そんな声が聞こえましたが、どこにいるのかわからないので、今回は私にだけ聞こえているのかもしれまえんね。まぁ、【操糸】というスキルが取得可能一覧に表示されているので、戻る手間が省けたのでいいでしょう。スキルの確認をしたいのですが、スキルの名称から何となくの予想が付きますし、いつもより少し遅いので、取得だけしてログアウトです。





 土曜日の午後、ログインの時間です。昼前に伊織に【二刀】と【操糸】のスキルを取得したと連絡したのですが、「また妙なスキルを」と言われてしまいましたよ。そういう評価のスキルということは、何か知っているはずなので、尋問するためにログインです。


「こんー」


 定型文で挨拶した後、まずは炬燵に入り、日課をこなしながら操糸スキルの詳細を確認しましょう。尋問するにしても、知らなければ聞きようがありませんから。

 ふむふむ、対応している武器は文字通り糸で、最初に覚えるアーツは【断糸】だそうです。このアーツは、糸の切断能力を高めることが出来るそうです。高める範囲もある程度の操作が出来るようで、範囲が狭い方が切断力が上がるそうです。

 後は、暗器と書かれていますが、はて、何処かで聞いた記憶がありますね。


「ねぇ時雨、操糸について知ってるの?」

「リッカとハヅチが持ってるよ」

「そうなんだ」

「リーゼロッテが取るとは思わなかったけどね」


 まぁ、偶然の産物ですからねぇ。


「武器の糸って何でもいいの?」

「ハヅチに言えば作ってくれるよ。後、暗器スキルも取った方がいいよ」


 時雨曰く、暗器スキルを取ると、暗器武器専用の装備欄が解放されるらしく、暗器に該当する武器は通常の武器欄以外にも、暗器武器欄に入れることが出来るそうです。


「そんじゃ……」

「はい、投擲用のクナイ」


 とりあえず受け取ると、暗器スキルが取得可能になりました。なるほど、条件を満たさないとだめなやつですか。


「あんがと。返すね」


 ……取り出す時はインベントリから取り出したのですが、何故、胸の谷間にしまうのでしょうか。これはあれですね。ええ、当てつけですね。まぁ、今回だけは暗器スキルについて教えてくれたので折檻はしないで上げましょう。


「てい」


 ひと揉みしましたが、重量が凄いですね。


「はいはい」

「いてててて」

「まったくもう」


 揉んだ手の甲を抓られてしまいましたよ。まぁ、ダメージがないので、痛みの代わりの痺れすらありません。


「そんじゃ、ハヅチに糸頼んでくるね」

「あ、武器用意してからじゃないと、冒険者ギルドの武器スキルのチュートリアルは受けられないからね」

「へーい」


リーゼロッテ:ハヅチ、頼みたいものがあるんだけど

ハヅチ:どうした?

リーゼロッテ:操糸取ったから、武器に使える糸が欲しいの

ハヅチ:魔力型でいいよな?

リーゼロッテ:なにそれ?

ハヅチ:まぁ、ステータス的にそっちで作っとくから、今の手袋、クラン倉庫に入れといてくれ

リーゼロッテ:りょーかい

ハヅチ:今日中にやっとく。代金はいつもので貰っとくぞ

リーゼロッテ:あんがとね


 今装備している【魔女志願者の手袋・二式】をクラン倉庫のハヅチの所に入れ、【魔女志願者の手袋】を装備しました。INTはそこそこ下がりましたが、今はそれどころではありません。


「ねぇねぇ、糸の魔力型って何?」

「あー、確か、参照するステータスと、挙動が変わるらしいよ。武器スキルチュートリアルで詳しく説明があったはず」

「なるほど」


 つまり、武器を用意してからNPCの話を聞けばいいんですね。それでは、今日中には出来るということなので、スキルレベル上げに行きましょう。





 属性持ちのマギウォーリアの出現する階へ行くために魔力屋本部へとやって来ました。ダンジョンへ入るための部屋の前に見覚えのあるNPCがいますね。


「オジジオジジー」

「嬢ちゃん、騒がしいと言われんかのう?」

「言われますよ」

「……言われとるの知っとるのか。嬢ちゃんは、魔法使いとしての強化を随分と行ってきたようじゃのう」


 うーむ、オジジの話からしてスロットエンチャントの回数でしょうかね。


「つい最近、大量にこなしましたから」

「ほう、大量にかのう。ふむ、今の嬢ちゃんなら、あれを覚えられる。やる気があるなら、着いてくるんじゃな」

「お願いします」


 何かはわかりませんが、スロットエンチャントに関係した何かでしょう。ならば、拒否する理由はありません。というわけで、【オジジの作業場】へとやって来ました。随分と久しぶりにやって来ましたねぇ。何せ、スロットエンチャントを覚えて以来ですから。

 オジジは何処からともなく取り出した装備からオーブを取り付けたウィンドウを開いています。


「今から教えるのは【リムーブ】。一度取り付けたオーブを取り外すことが出来るんじゃ」


 私が出来るのは取り付ける【マウント】と、削除の【デリート】です。取り外す方法もあるんじゃないかと思いましたが、やっぱりあったんですねぇ。


「お願いします」

「うむ」


 そこからはあっという間でした。いつものアーツスクロールを手渡され、【リムーブ】を取得しました。


「覚えました」

「これで試してみるんじゃ」


 オジジがまた一つ、装備を取り出しました。それでは、やってみましょう。


「【オープン】、【リムーブ】、【クローズ】」


 装備とオーブを返そうとすると、オジジは装備だけ受け取りました。


「そのオーブはやる」

「ありがとうございます」


 貰えるものは貰っておきましょう。ちなみに、オーブは――。


「用は終わりじゃ」


 確認する前に追い出されてしまいました。しかたありません。ヤタ達を召喚して、ダンジョンの方で確認しましょう。





 魔力の渦の6階へとやって来ました。狩りの前に、オジジから貰ったオーブを確認しましょう。


――――――――――――――――

【オーブ・MATKアップ】

 効果:魔法攻撃力+10%

 装備場所:武器

――――――――――――――――


 なるほど。魔法攻撃力+10%ですか。とてもいいものじゃないですか。残念ながら元の素材はわかりませんが、リムーブを覚えたおまけですから、元の素材の情報までは高望みですね。

 願いの長杖にはMPアップのオーブが二つついているので、片方をMATKアップと交換しました。外したオーブはせっかくなので、外套にスロットエンチャントをして、付けておきましょう。

 手袋の分INTが下がりましたが、これはそれを補って余りあるオーブですよ。予定通り属性持ちのマギウォーリアと戦ってみましたが、3確のままでした。

 それでは、時間まで狩りを続けましょう。

 ちなみに、スキルレベルの上りが悪かったのは、妖精がマギウォーリア狩りに興味を示さなかったからでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る