9-3

 28日、午後のログインの時間です。


「やっと来たわね」


 ログインと同時に妖精が出迎えてきました。妖精からのクエストを受けて鱗粉を集めるのもいいですが、まずは日課です。


「うんうん、面白そうなことやってるわね。もっとよく見せなさいよ」

「ご自由に」


 どうやらクエストとは違うことをしていると変わることがあるようです。

 最終的に鱗粉を2個手に入れることが出来ましたが、さて、どうしましょうかね。

 ヤタ達と遊びながら妖精が何かを言い出すのを待っていたのですが、ヤタのなつき度は99%のままなのに、信楽とコッペリアの親密度が少し上がっています。最後は何かのきっかげが必要なのでしょう。


 テロン!

 ――――フレンドメッセージが一通届きました。――――


 おや、誰でしょうかね。

 ふむふむ、ザインさんからでした。何でも、クエストでレイドボスに挑むそうです。そのため、スロットエンチャントをして欲しいそうです。情報は渡したのでてっきり同じ派閥のプレイヤーが取得したと思っていたんですがねぇ。

 まぁ、何度か破損した回路を集めに行っていたので、それなりの数はあります。……いえ、レイドボスということで、全員分だと足らない可能性もありますね。装備の素材次第では要求数が増えますから。

 メッセージのやり取りをした結果、これからザインさんのクランハウスへ向かうことになりました。スロットエンチャントは工房がいらないのでどこでもできますからね。





 ザインさんのクランハウスへとやって来ました。


「お邪魔しまーす」

「いきなりですまない」

「まぁ、予定が未定でしたから」


 通された先でザインさんが自らケーキとお茶の用意をしています。とはいえ、前もって用意していたものを出しただけのようですね。

 ヤタ達の分はありませんが、召喚していいとのことなので、遠慮なく召喚しましょう。


「早速本題に入ろう。俺達とレイドメンバー分のスロットエンチャントを頼みたい」

「数と装備の素材次第では、必要なアイテムが足らない可能性があります。というか、ザインさんの知り合いでスロットエンチャントが出来るプレイヤーはいないんですか? あと、生産クランに頼むって方法もありますよね?」

「取得出来たプレイヤーはいるが、予定が合わなくてな。生産クランの方は、予定の他にも、普段から頼んでいるプレイヤーとの兼ね合いがあってな……」


 ふむ、最前線のプレイヤー同士のしがらみというやつですか。関わりたくありませんね。

 スロットエンチャントが出来るプレイヤーが少なく、装備を更新するたびにスロットエンチャントを行ったり、他の生産作業をおこなったりと、大忙しだそうです。


「ちなみに、オーブの方はいいんですか?」

「ああ、そちらも頼みたい」

「はい、最新のリストです」


 生産クランへ不滅の水を納品するときに新しいリストを貰っているので、いろいろと知らない素材も載っています。そのため、オーブにするアイテムは持ち込んで欲しいものです。


「ありがとう。これは後で見れるプレイヤーに渡させてもらう。それと、これはこっちでまとめたリストらしい」


 ザインさんからもマル秘メモを貰いました。使ってみたところ、新しいのは増えなかったので、生産クランは幅広いプレイヤーからリストを集めているようですね。

 ちなみに、ザインさんは強化付与を持っていないので、私のウィンドウを可視化し、リストを見せることにしました。


「なるほど。スクリーンショットを撮っても?」

「どうぞ」


 申請が来たので許諾しましたが、これはこれで不便ですね。まぁ、ゆっくり考えてもらいましょう。


「ちなみに、報酬の方は?」


 やっぱり考える時間は後にしてもらいましょう。


「前回は……1回100,000Gと借り一つだったな。同じではだめか?」

「確か、スロットエンチャントの素材は私持ちで、オーブの方はザインさん持ちでしたね」

「ああ」

「それではそれで。あっ、今回のレイド以外の装備には付けませんし、途中で持ち替えるから複数セットに、とかも無しで」

「ああ、わかった。付けるオーブの内容と素材の用意もあるから、準備が出来次第連絡する形でいいか?」

「いいですよ。連絡が来たら日にちを決めるということで」

「ああ、今日はありがとう」


 プレイヤーを集めるのか、装備だけを持ってくるのかは知りませんが、段取りは全てザインさんにお任せです。まぁ、最終的には私の都合が優先されますが、今のところは用事もありませんから、ログインしている時なら対応出来るはずです。

 そんなわけで、回路の用意は夜に回して、この後は妖精の要望に答えたり、属性窯の強化をしたりして、ログアウトです。





 夜のログインの時間です。

 早速ですが、強化した属性窯の確認をしましょう。

 といっても、一つのアイテムに複数の属性を使って強化出来るようになっただけなので、雷属性のマジックジュエルの場合、水と風の属性で強化すると、同属性扱いになり、他の属性は無属性の魔法を強化した時と同様でした。そのため、雷属性のマジックジュエルの場合、効果範囲と効果時間だけを強化することは出来ないようです。雷属性扱いになり、全体が強化されてしまいますから。

 鉄属性の場合は、それが火と土、火力強化と不明の効果ですね。

 属性窯の強化をしたとハヅチに伝えたところ、一部の素材を光と闇属性で強化しておいて欲しいと言われました。このゲームの空間魔法は光と闇の複合なので、いろいろと実験をしたいそうです。場合によっては装備を作ってもらう時に、この工程が加わることもありそうですね。

 ハヅチに頼まれた分を終えた後は、回路を集めるためにマギストへ向かいましょう。

 やって来ました、マギストにある魔力屋本部です。

 回路を集めるために4階へいくところですが、今日はその前に確認することがあります。妖精クエストで来た時に、ここのダンジョンである【魔力の渦】の他の階の入場がどうのこうのと言われたんですよね。


「すみません。えーと、修練場でしたっけ? そこの次の階層の条件を満たしたとか言われたのですが」


 話を聞くなら受付ですね。まぁ、5階より先はパーティー向けだと言われたのでずっと4階にしか行っていませんでしたが、試しに行けるところまで行くのもありですよ。


「……ええ、貴女でしたら、7階まで入ることが出来ます。けれど、5階以上はお一人では辛い場所ですので、同行者を連れて行くことが出来ます。同行者に関してはご自身で用意していただくか、こちらで斡旋することが出来ます」

「わかりました」


 それでは、回路集めも兼ねて、5階以上にも足を運んでみましょう。まぁ、まずは5階以上に出るMOBをもう一度調べます。私の記憶が正しければマネキンのようなMOBだったと思いますが、何か見逃しているかもしれませんから。

 では、資料室の本棚の前に陣取り、出現MOBの情報を調べましょう。


「あったあった」


 5階に出るのは【マギウォーリア】で、剣や槍などの武器を持っているそうです。しかも、2体同時出現するらしいので、耐久次第では面倒なことになりますね。

 6階に出るのは属性持ちの【マギウォーリア】です。属性がある分、倒しやすいかと思いきや、最低2体で、しかも、属性が必ず異なるそうです。そのため、範囲魔法を複数使って一気に倒せないのが面倒ですね。

 7階は、属性持ちの【マギウォーリア】2体に加え、属性持ちの【マギメイジ】の計3体が同時出現するそうです。マギウォーリアとマギメイジの見分け方は、杖を持った魔法使いっぽいマネキンがマギメイジで、それ以外がマギウォーリアだそうです。

 6階からは【破損した回路】の上位アイテムも落ちるそうなので、倒せるのならいくのもありですね。

 そんなわけで、5階へ初めて足を踏み入れます。もちろん、初めての場所なので、ヤタ達は送還しました。

 5階は今まで同様に洞窟の様になっており、床や壁、天井のあちらこちらに魔力の渦巻があります。まぁ、触れたところで何も起きたことが無いので、ただの背景なのでしょう。

 しばらく進むとギシギシと何かが軋む音が聞こえてきました。軋むような床ではないので、マギウォーリアが近いのでしょう。足を止めてしばらく待ってみると、2体のマギウォーリアが近付いてきました。この階ではまだ属性を持たないので、使う属性を相手に合わせる必要はありません。見える距離まで近付いたため、小さくカラカラと何かを引きずる音も聞こえてきました。片方は片手剣を手にし、もう片方はなんと、ハルバートを引きずっています。何ともマニアックな武器ですねぇ。いろいろと使える武器ですが、使いこなすのは大変らしいです。まぁ、前衛が向かない私には縁のない武器ですからねぇ。

 さて、そろそろ準備しましょう。


「【ブラックレーザー】」


 闇属性の黒いレーザーを6本、剣を持っているマギウォーリアへ放ちました。ふむ、跡形もなく消えましたね。

 相方が倒されてもハルバートを持っている方のマギウォーリアはゆっくり近付いてくるので、距離を保ちながらディレイが終わるのを待ちます。そして、次は魔法陣を5個描きました。


「【パワーレーザー】」


 今度は無色なのに光るレーザーを5本放ちました。ええ、何確かの確認は必要ですから。

 何度か繰り返した結果、レーザー系では3確でした。ただ、鉄属性である【クリスタルレーザー】だけは4発必要だったので、物理防御と魔法防御の違いでしょう。

 確殺数さえわかってしまえば、2体のマギウォーリアは問題ありませんね。ちょうど2体のマギウォーリア、剣持ちと棒持ちが来たので実践です。


「【サンダーレーザー】」


 黄色いレーザーを3本づつ、それぞれのマギウォーリアへ向けて放ちました。マルチロックは練習しましたし、ターゲットが2ヵ所なので、難しいことはありません。

 属性相性で2確になるのであれば、次の階でも同じようにすれば倒せますが、異なる魔法を6個同時に発動出来る様になってからにしましょう。

 ある程度の確認はおわったので、ヤタ達を召喚し、警戒をしてもらいながらドロップの確認です。


「警戒お願いね」

『KAAA』

『TANUNU』

『KARAN.KORON』

「私はやらないわよ」


 おっと、妖精もいましたね。


「ドロップを一緒に見たければどうぞ」


 えーと、魔石(中)と破損した回路が同じ数だけ落ちています。確か、回路は確定だと聞いていたので、魔石(中)も確定かそれに近いドロップ率なのでしょう。

 ただ、一つだけドロップしたアイテムがありました。【マギサーキット】というアイテムで、名前からして回路系の上位アイテムだと思います。


「随分と珍しい物を手に入れたわね」

「知ってるの?」

「詳しくはないわよ。ただ、ここではかなり珍しいはずよ」


 ふむ、レアドロップでしょうかね。まぁ、このダンジョンの出現MOBからして、上の階なら普通に落ちそうですね。


「よーし、このままこの階で続けるぞー」


 それでは、ヤタ達を連れたまま進みましょう。

……………………

………………

…………

……

 残り1体の時には鉄魔法や多重詠唱や無詠唱を上げるためにちょっと工夫するなどして幅広くスキルレベルを上げることが出来ました。ただ、罠魔法はまだ組み込めていないので、上げられていません。というか、使わなければいけないようなMOBのいる場所へ行かないのが原因でしょう。

 さて、マギサーキットは1個しか落ちませんでしたが、そろそろ時間なのでログアウトです。





 29日の午後、ログインの時間です。


 テロン!

 ――――フレンドメッセージが一通届きました。――――


 おや、誰でしょうかね。……ザインさんからでした。いくつか候補の日を出したので、そこから選んで欲しいそうです。まぁ、回路もそこそこ集まったので、今日の夜にしてしまいましょう。装備はクラン同士のシステムでザインさんが一時的に預かる形で持ってくるそうですが、物好きが数人直接持ってくるそうです。まぁ、こういう作業って一度くらいは直接見てみたいものですよね。


「あんたが最近戦った敵より少し強い敵と戦うのが見たいわ」


 おっと、解釈に困る内容が来ましたよ。ちょっと尋問しましょう。


「昨日……この前のマギウォーリアよりも強いってこと?」

「そうよ。あのおっきな人形より強い敵よ」


 人間大というのは妖精からしたら大きいんでしょうね。MOBのサイズとしては中型くらいに分類されそうですけど。


「あれより強いってどのくらい?」

「あれより強ければどのくらいでもいいわよ」


 ふむ、これはあれですね。次の階の属性持ちのマギウォーリアと戦えということでしょう。違ったら違ったで別のMOBを探せばいいだけですし。

 そんなわけで、日課を済ませた後に魔力の渦の6階へと足を踏み入れました。

 代り映えのしないダンジョンですが、ここでは他のプレイヤーを全く見ません。スロットエンチャントが見付かってからはここにきているプレイヤーが増えているらしいのですが、プレイヤーごとに生成される系統なんですかね。修練場とかいう設定ですし。

 ここでは2体以上のMOBが同時に出現するので、一度で倒すことは出来ません。ボム系を上手く使えば行けるかもしれませんが、武器を持った相手に近付きたくはないので、考える必要がありますね。


 ギィ……ギィ……


 おや、昨日以上に不気味な音がしますよ。遠巻きに見えた個体は大剣を引きずる赤い個体とガントレットを装備した青い個体です。体の色がそのまま属性を表しているようですね。

 さて、大振りをする個体と連撃をする個体、距離を取っていればどちらが残っても変わりありませんが、近付く必要が出てくる可能性を考えると、先に倒すのはあちらですね。

 それでは、魔法陣を5個描きましょう。


「【アースレーザー】、【ストリームレーザー】」


 土属性のレーザーを3本、水属性のレーザーを2本放ちました。属性相性のいい属性でも2確にはならないようで、手にした大剣を重そうに引きずりながらよろよろと近付いてきます。うーん、ランスでも行けそうな気がしますが、スキルレベル上げも兼ねているので、レーザー系1択ですね。


「【クリスタルレーザー】」


 ディレイも5発分だと短いですね。残りのHPは鉄属性でも削り切れたので、立ち回りと背後に気を付ければ問題なく倒せそうです。


「ところで、これで満足ですか?」

「そうね。もっと見せなさい」


 ふむ、続行ですか。まぁ、飽きるまではスキルレベルの上りがいいので、出来る限り続けましょう。

 ……おお、またマギウォーリアの音が聞こえてきました。幸先がいいですねぇ。


「……く、幸先が悪い」


 ディレイは終わっているのですが、近付いてきたのは先程と同じ、火属性の赤い個体と、水属性の青い個体です。なんで二連続で同じ属性が来るんですか。クールタイムが終わっていませんよ。

 ふむ、ここを切り抜けるための方法は三つ、ボム系の魔法陣を描きながら突っ込む。等倍のレーザー系を叩き込む、後ろを警戒しながら下がり、クールタイムが終わるのを待つ、です。

 後ろから他の個体が出てこない限りはクールタイムが終わるのを待つのがいいのですが、出現率が高いようなので、危険ではあります。あの個体の持つ武器が短剣と……ベアクローなのかカタールなのか、そのあたりの武器でなければ、ボム系も上位に来る選択肢なのですが、機動力がありそうなので、近付きたくはありませんね。

 下がりながら考えているうちにクールタイムが終わったので、レーザー系にしましょう。


「【アースレーザー】、【ストリームレーザー】」


 本数はさっきと同じなので、赤い個体が残っています。クールタイムに比べればディレイなんて一瞬ですよ。


「【クリスタルレーザー】」


 さて、目の前の脅威もなくなったので、このまま進みましょう。

…………………………

……………………

………………

…………

……

 もうそろそろ落ちようかと思っていると、待ちに待ったことが起こりました。



 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました―――――――

 【杖術】がLV75MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【杖術師】 SP7


 【魔道陣】がLV75MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【魔導陣】 SP7


 【魔法操作】がLV75MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【魔法制御】 SP7

 これらのスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 とうとうです。とうとうですよ。私がずっと使っているメインどころのスキル達です。この三つより先に上級スキルになるスキルなんてありませんよ。

 純粋な上位スキルだけで、他の派生スキルがないのは寂しくもありますが、考えるのは取得してからです。

 ポチっとな。

 それでは杖術師から見てみましょう。

 最初に覚えたのは【オーバードーズ】でした。何とも危ない名前の気もしますが、効果は凄いですね。魔法発動時にMPを過剰投与し、威力を底上げするそうです。使った後は一定時間のMP回復力低下に、反動ダメージです。使っていないので数値はわかりませんが、杖術のレインフォースよりも倍率はいいのでしょう。デメリット付きですから。

 次は中級スキルと同じ読み方の魔導陣です。

 まずは、同じ魔法陣が7個、違う魔法陣が6個という純粋な強化、そして、魔法干渉という能力が追加されました。何でも複数の魔法陣を組み合わせ変化させることが出来るそうです。まぁ、対象の魔法や数はスキルレベルに依存するそうですが、最初は基本スキルの魔法で、数は2個までだそうです。まぁ、同調魔法を一人でやるようなものですね。これでスキルレベルを上げることが出来るのであればいいのですが。

 最後に魔法制御です。まぁこれ自体はMPを動かすのと魔法の発動地点を操作する以外に目立つ効果はありません。魔法的なステータスが強化されるくらいですから。

 そんなわけで、試してみましょう。

 まずは実験台を探さなければいけませんね。まぁ、少し進めば出てくるはずですね。


 ギィ……ギィ……


 ほーら、もう来ましたよ。風と土属性の個体なので、火属性と風属性が弱点です。オーバードーズは対象の魔法が1個までなので、フレアレーザーだけでどの程度弱らせることが出来るのか、見ものですね。


「【オーバードーズ・フレアレーザー】……ぐはぁ」


 発動の瞬間にMPがレーザー系の3割くらい追加で持っていかれましたよ。その上、HPも1割削られてしまいました。ただ、風属性のマギウォーリアは蒸発したので、最低でも3倍にはなるということですね。クールタイムもディレイも伸びないのは助かります。


「【アースレーザー】」


 残りも倒し、リザルトウィンドウが出たので、オーバードーズの効果を整理しましょう。

 MPを追加で3割、HPが1割、威力は最低3倍、対象の魔法に組み合わせて使うので、レインフォースの様に残りのMP全てを注ぎ込むといった使い方は出来ません。それに、オーバードーズ自体のクールタイムは結構長いようですね。あと、MPの回復力低下ですが、時間経過でしか回復できないデバフ扱いで、10分もあるようです。ちなみに、普段ならあっという間に回復しきるのですが、もはや自然回復の停止と言っても過言ではないくらいの低下ですね。まぁ、ほんの少しだけ回復しているとも言えますが。これだけなら、ログアウト前に使ってスキルレベル上げが出来ますが、もう一つ、見逃せないデメリットがありました。ええ、反動ダメージですよ。これ、HPだけじゃなかったんです。武器の耐久が大きく減っています。元の数値は覚えていませんが、耐久がかなり減り、警告が出ています。これはログアウト直前でも頻繁には使えませんね。シェリスさんにメッセージを送り、後で修理を頼みましょう。

 もののついでに錬金術でマジックジュエルの強化が出来る話をしたところ、出来るのであればいつもの回復用スクロールを強化して欲しいと言われたので、帰ったら作ることにしましょう。

 さて、戻るにしても少し早いですね。杖をこれ以上使うのは危ないので、他の武器を使いましょう、ええ、スキルレベルを上げた方がいい武器が二つありますから。問題は、魔銃と魔術書のどちらを上げるかです。まぁ、どちらも片手装備なので、両方装備しましょう。

 右手に魔術書、左手に魔銃を装備すると、いくつかの制限がかかりました。左手側の制限が多いのは、利き腕を右に設定しているからなのでしょう。ちなみに、両方に対する制限は左右のばらつきはありますが攻撃力の減少で、左手だけの制限はアーツの使用不可です。確か、何らかのクエストで【二刀】とかいうスキルを取得すると制限が緩和されるそうです。状況次第では両手杖を使えないことも考えると、取得した方がいいかもしれませんね。まぁ、そんな状況は滅多にないはずですが。

 さて、魔術書ですが、普段使っている両手杖と比べるとどうしてもステータスが低く感じてしまいます。魔術書を作る時の素材と入れているスペルページの枚数でステータスが決まるそうですが、全く作っていないので、ほぼ基本値のままですから。

 ちなみに、魔銃よりも低いのですが、魔法を使う場合、利き手に装備した武器を使用したことになるので、魔法書スキルを育てるためにはしかたありません。

 左手でも魔銃を乱射するくらいは出来るので、こちらは魔法を使わなくてもスキルレベルを上げられますし、魔法を放った後に乱射するだけです。

 MPの回復は終わっていませんが、早速実験をしましょう。

 しばらく進むと、風属性と水属性の個体を見付けました。今の私はさっきまでの私と違い、魔法の威力は下がっていますが、同時に発動できる数は増えています。そこで、【フレアレーザー】と【アースレーザー】の魔法陣を3個づつ描きます。

「【フレアレーザー】【アースレーザー】」

 それぞれに3本づつ叩き込むと、弱ったマギウォーリアがゆっくりと歩いてきます。流石に魔法攻撃力が下がっているので、新スキルを取得したとはいえ、倒しきれなかったようです。

 手にしている武器は大きな斧と大剣なので、とても重そうに引きずっています。さて、斧を持っている風属性の方に狙いを定め、引き金を引きました。


 バキュン


 カボチャ型の魔力弾を放ちました。引き金を引きっぱなしにしているので、クールタイム毎に倒せるまで連射します。

 1体倒すまでに二桁は必要だったので、魔法攻撃力の低下が大変なことになっていますね。

 もう1体残っているので、無駄撃ちしながら水属性の個体へと狙いを変えました。風属性の方を攻撃している間はゆっくりと近付いてきていましたが、攻撃を受けると思う様に進めないようで、今はほぼ足が止まっています。こちらも同じように二桁の弾数が必要でした。さて、流石にここの出現率を考えるとMPの回復量が下がっている時に連戦するのはまずいので、ここでしばらく休むとしましょう。MOBに遭遇しても倒せることはわかったので、心配はありませんから。

 この後、何戦かしてから戻り、シェリスさん用にスクロールを作ってから強化し、修理依頼を出してログアウトです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る