9章 ゆく年くる年

9-1

 12月26日、午前中の内に冬休みの宿題をこなします。普段なら学習用フルダイブソフトで進めますが、今回は手書きで提出させるのもあるので三人で勉強会です。流石に書初めはありませんが。


「葵、どっか行くのはいいけど見せないよ」


 時間を気にしていた葵が部屋を出て行こうとしていたので、一応言っておきましょう。


「HTOのアップデート来たらしい」

「メンテはなかったよね? オンメンテ?」

「らしいね」


 伊織も携帯でお知らせを確認し始めました。それでは、私もアップデートだけしておきましょう。

 すぐに葵も戻ってきたので、詳しい内容を確認します。


「往く年くる年キャンペーンねぇ」

「迷子のはぐれ妖精クエストの実装に」

「第二回従魔キャンペーンだとさ」

 従魔キャンペーンは過去のと同じと書いてあるので、徘徊MOBの出現率と従魔イベントの発生率が上がるとのことです。猫型MOBを探していましたが、グリモアが従魔にしたので、優先順位は低いんですよね。


「従魔はおいといて、迷子のはぐれ妖精に絞ろうかな」

「キャンペーン期間は妖精が迷子になりやすいらしいぞ」

「遭遇して妖精と仲良くなればクエストが発生するってさ」


 ほうほう。つまり――。


「妖精を捕まえればいいと」

「……まぁ、そういえなくもないけど」

「ま、そういうことだろ。手段の一つだとは思うけどな」


 妖精を捕まえた後は、妖精の出すクエストをクリアしていくようですが、所持スキルによって内容が変化するそうです。例として出ているクエストを見ると、何かを作る場面を見せるとか、何かのアーツをMOB相手に使うとか、そういった内容のクエストを数回せばいいそうです。

 これが前半の内容で、年を越したら後編が始められるそうです。


「クエストをクリアすると妖精の鱗粉がもらえて、10個使って何かを作るらしいけど、10個を超えた分は生産で使えるんだって」

「ほうほう。入手方法がクエストクリアだから、後編が始まるまで妖精のクエストをやり続ければいいと」

「使い道次第で、俺か伊織か茜に回されんだろ」


 まぁ、そうなりますよね。生産クランなどの生産者は順番待ちになりかねませんから。

 後編に関しては、鱗粉10個で作ったものが必要以外の情報がないので、キャンペーンの確認はここまでです。


「イベントのPVも出来上がってるね」


 おもむろに伊織が再生を始めたので、PVを見ることになりました。

 最初は雲の中を進んでおり、雲から出ると雪の降るサンタシティが広がっています。次に映ったのは白サンタが集まって赤サンタの話を聞く全校集会のような光景です。イベント開始前の様子という設定なのでしょう。その後にはプレイヤーがフィールドでクリスマス素材を集めたり、街中のクエストをこなす様子が映っています。おや、凍った湖の氷を砕いて潜っているプレイヤーがいますね。光る玉を手に入れてはいますが、入るためにあけた穴が再び凍ったため、出ることが出来ずにHPが全損してリスポーンしたようです。

 その後は生産系のプレイヤーがサンタ服やソリを作る場面に、白サンタが各種トレーニングをする場面も映っています。跳躍を取るためのステージは見覚えがありますね。始めの方に出てくる白サンタはすぐに池ポチャしていますが。段々と進めるようになっています。他のスキル取得のためのステージは知りませんでしたが、いろいろなステージがあったんですねぇ。どうせならスキルレベル上げ用に実装してくれてもいいのですが。ちょっと面白そうですし。

 最後はクライマックスのブラックサンタ戦です。袋による薙ぎ払いが来るたびにブラックサンタに近付いて、すぐに戻ってを繰り返すのは大変でしたよ。トナカイを全滅させてからは少し楽になりましたが、発狂モードのことも考えると、やはり楽になったのは少しだけです。

 さて、PVも見終わりましたし、いい時間なのでお昼にしましょう。





 お昼の後、伊織も一緒にログインすることになりました。回線の用意はしてありましたから、問題ありませんね。伊織用のログインセットもありますから。ええ、私はベッドに寝ながらログインしますが、伊織は仰向けに寝れないので専用の座椅子に座り、低いテーブルに胸を置いています。仰向けで苦しいとは、私には理解できないことですねぇ。ええ。

 それでは、ログインです。

 ログイン画面には冬装備を身に纏った私のアバターが表示されています。腰まである白に近い銀髪やきついツリ目気味の翠色の瞳は魔女っぽさを出すのに適した色です。

 茜色の布が巻いてある先の折れた三角帽にはヤタと信楽に加えてコッペリアのワッペンも追加してあります。

 フード付きのローブの上に茜色のマフラーを巻いており、上から白のブラウス・黒のスカート・編み上げブーツの冬用装備ですが、黒の手袋だけは普通の装備のままです。これも冬用にすることも出来ますが、問題ないので、変えなくてもいいでしょう。

 インベントリの小が使えるウェストポーチや、大が使える肩掛け鞄の二つで不便を感じていないので、インベントリの中が使える持ち物装備は今のことろ不要です。

 主武装は内部に8色の光が漂っている透明の宝玉が杖の上の方に取り込まれるかのように付いてる長い両手杖で、腰の短刀や懐に隠してある魔銃はいざという時や気が向いたときに使うためのものです。

 寒ければクランハウスの掘り炬燵に直行するつもりでログインです。





「こんー」

「あれ、みんなもういるの?」


 巫女服の時雨とはほぼ同時にログインしましたが、忍者装備のハヅチは既にログインしていました。時雨のセッティングを手伝った分遅れたのでしょう。

 他のみんなも既にログインしていたので、私と時雨が一番最後だったようですね。


「よし、そろったからキャンペーンとクエストの話でもするか」


 クランハウスに鎮座する12人で入れる掘り炬燵に入り、ヤタ達を召喚しました。八咫烏のヤタは相変わらず自由にしていますし、狸の信楽は何故か頭の上に登ろうとします。ひび割れたフランス人形の様な外見のコッペリアには甘ロリ系の服を着せているのですが、人形の様に止まっているので、ホラー度に変化はありませんね。

 ハヅチを中心にクエストの内容を確認しますが、何とかして妖精と遭遇する以外の方法がないため、今のところは自由行動になりました。それでは、日課をこなしましょうかね。

 インベントリが刻印してある鞄に関しては一番容量の多い大を使える鞄と小が使えるウェストポーチに絞っています。中を使える鞄は他のクランも売り出したので、そちらに任せればいいんですよ。品質が悪いという噂もありますが、私には関係ありません。

 日課の後は、クエストのための情報収集です。こういうのはNPCに聞くのが一番ですから。





「オババオババー」

「何じゃ小娘、騒がしいのう」


 昨日まではイベント中だったのでオババの店にはほとんど来ていませんでした。そのため、このやり取りは随分と久しぶりですが、このくらいの扱いがちょうどいいんですよね。


「オババに聞きたいんですけど、はぐれ妖精って知りません?」

「そこのがどうしたんじゃ?」


 おや? そこのですか。妙な言い方をしますね。試しに振り向いてみても何もいませんし。ですが、ヤタ達がどこかを見ています。


「それで、迷子のはぐれ妖精って知りません?」

「そこのがどうしたんじゃ?」


 今度は私の右後ろを指さしながらです。けれど、振り向いてみてもなにもいませんね。ヤタ達は先程とは違う場所を見ています。


「それで、とりゃ」


 オババに向き直してからすぐに左後ろを見ましたが、何もいませんね。ふむ、ヤタ達の視線の共通点は私の頭の後ろを見ているということです。


「そっちじゃないぞい」

「そ、とりゃ」


 右後ろにはいません。けれど、何かがちらっと見えましたよ。しかたありません、奥の手です。オババの方を見てから、視線だけを視界の隅にある天之眼のワイプ画面へと向けました。すると、私の左後ろを何かが飛んでいますね。これがはぐれ妖精ですか。


「とりゃ」


 試しに左後ろを向いてみると、そのまま右後ろへと流れていきました。ふむふむ、こういう動きですか。オババへと向き直りましたが、はぐれ妖精は私の右後ろを陣取りながら笑っている様に見受けられます。それでは奥の手です。妖精から見えないように手の中に小さく魔法陣を一つ描きました。


「とりゃーーーーー」


 描いた魔法を発動し操作しながら、右へと振り向き左手で妖精を狙います。けれど、このままでは視界の外に居続けるので、右足を軸に回転します。流石にこのまま追ってくるとは思わなかったようで、緑色の髪に橙色の服の妖精を確認しました。姿さえ確認できればこちらのものです。


「キャッ」


 逃げようとした妖精は私が発動したエアロハンドに邪魔をされています。逃げられない妖精はそのまま私の手の中に納まりました。


「確保」

「こらー、何するんだー。私は妖精だぞー」


 手の中の妖精がわめいていますね。けれど、今は目の前に表示されているウィンドウを確認するのが忙しいので、後回しです。


 ピコン!

 ――――クエスト【迷子のはぐれ妖精】が開始されました――――


 えーと、妖精を掴んだまま確認したところ、前もって確認したこと以上のことは書かれていません。まぁ、後はクエストを進めないとわからないということですね。

 それでは、妖精を確認しましょう。

 妖精を掴んでいても透明感のある羽が潰れないわけですが、付け根が背中から離れていますし、触っても感触がありませんね。


「キャッ、こら、くすぐったいじゃない。こ、こらー、やめ、な、さいよー」


 ふむふむ、触れないけれど感触はあると。羽以外は小さい人型としかわかりませんね。ほっぺたを突っついても、大きさのせいなのかあまり弾力を感じないのでこれくらいにしておきましょう。


「さて、どうしようかな」

「ちょっと、早く放しなさいよ」

「やだ」


 捕まえたのはいいのですが、仲良くならないといけないらしいんですよね。それに、クエストが開始されても、次の内容が表示されないので、ここで放すわけにはいきません。


「何でよ」

「逃げるでしょ」


 それに、逃げられてクエストが消える可能性もありますから。


「……しょうがないわね。それじゃあ仮契約よ。私はこの世界を楽しんで、満足したら帰る。あんたはその手伝いをする。この仮契約中は相手の居場所がわかるから、見失うことはないわ。だから、早く同意して放しなさい」


 うーむ、どうしましょうかね。というか、迷子じゃないんですかね。まぁ、迷子は自分では認めない物ですから、突っ込まないでおきましょう。


「それじゃあ、同意で」


 クエストの進行が確認出来たので、妖精を放しました。

 妖精はぷんすかしていますが、仮とはいえ契約してしまえばこちらのものです。


「それで、楽しむって何を?」

「うーん、私は面白いものとか、とにかくいろんなものを見たいの。でも、あんたに出来ない協力はさせないわ。あんたの家があるならまずはそこへ案内しなさい。そこを見てから決めるわ」

「オババ、この妖精について、何か知りません?」

「その妖精かはわからんが、異なる世界に住む好奇心旺盛な存在と聞いとるぞい。契約した以上、嘘はつかんはずじゃ。大人しく協力するんじゃな」


 ふむ、まぁ、問題ないでしょう。それではクランハウスへ連行……、案内しましょうかね。


「それじゃあ行きますよ」

「ちゃんと歩いていくのよ」

「りょーかい」


 歩いていくよう言った本人……本妖精は周囲を漂っています。羽から鱗粉が舞いますが、掴めないので今の段階ではクエストをクリアする以外の入手方法はないのでしょう。

 それにしても、どこかの街に個人で家を買っていなくてよかったです。場合によっては歩いて街から街へ移動する必要がありましたから。

 妖精と話しながらクエストの内容を確認してみると、妖精の表示機能を発見しました。初期設定ではオンになっていますが、公開の範囲を決めたり、オフにも出来るようです。まぁ、見えた方が便利なので、オンのままでいいでしょう。


「うんうん、あんたはいろんなことが出来るのね。これなら楽しめそうだわ」


 おやおや、会話をしながらも私のステータスを読み込んだようですね。まぁ、クエストに必要なことらしいですね。


「そういえば、他の妖精の場所ってわかるの?」

「わかるし、呼べば来るわよ。でも、楽しいものがあるってわからないと呼ばないわよ」


 ふむ、何かを見せるクエストを少し進める必要があるということですね。最初のが簡単だといいのですが。

 ああ、忘れていました。


リーゼロッテ:妖精確保

リーゼロッテ:他の妖精を呼ぶには、少しクエストを進める必要があるらしいよ


 よし、これで大丈夫。クランハウスに戻ってくるのか、自分で探すのかは自由ですから。

 それにしても、この妖精、緑髪に橙色の服ですが、うーん、何かで見た組み合わせですねぇ。こう、ぬくぬくしている時にありそうな……。あ。そうですね。後で炬燵に入ったら並んでもらいましょう。


「あそこの建物、冒険者ギルドなので、もうすぐ着きますよ」

「あそこはまだ入ってないのよ。でも、あんたの家を先に見るわ」

「家というか、クランハウスなので、私だけじゃないんですよね」

「細かいことはいいのよ」


 ふむ、いいのならいいんでしょう。

 久しぶりに歩いてクランハウスへ入りました。いつもはポータルを使っているので、本当に久しぶりですね。


「ただいまー」

「お帰り。随分と賑やかになったね」


 ヤタ達も連れているせいで、そんな返事が返ってきました。今いるのは妖精を連れた時雨だけですが、私よりも先に妖精を見付けて連れて帰ってくるとは、やりますね。


「結構簡単に見付かるの?」

「私とリーゼロッテは見付けたから簡単って言えると思うけど、どうなんだろうね」


 まぁ、時間のかかる超難問とかでない限り、終わらせた側は簡単と言えますから。


「ここがあんたの家ね。いろいろ見てくるわ」

「私の部屋は……どこだっけ?」

「あんたの魔力の残滓が強いのはここの他に……、あっちね」


 ふむ、妖精が示した方向は工房の方ですね。腕が少しぶれているのは、調合と錬金工房の間を行ったり来たりしているからでしょう。


「工房だね。まぁ、いってらっしゃい」

「リーゼロッテは部屋使わないから」

「時雨は使ってるの?」


 最後にというか、唯一使ったのが不貞寝をした時ですね。鞄が無ければ箪笥などを用意して装備をしまった可能性もありますが、全部持ち運んでも余裕があるので、部屋の存在は頭の片隅においやっていましたよ。


「ハヅチがいろいろと作ってくれるから、しまってあるよ」


 ふむ、実用性のある装備ではなく、ハヅチが個人的に着て欲しい装備を渡しているのでしょう。まったく、ここまでしておきながらぬるま湯とは……。


「ふーん。ところで、クエスト進めた?」


 時雨の妖精は炬燵の天板に姿勢よく正座し、みかんを貰っています。


「最初のクエストがね、強敵を倒すのが見たいっていうのがでたから、強敵の条件探ってたの」


 ほうほう、強敵ですか。ボスでいいならテキトーなダンジョンに行けばいいのですが、苦戦するような相手でなければいけないのであれば、それは面倒ですね。


「見て来たわよ」


 おっと、妖精が戻ってきました。みかんを手にして炬燵に座るよう促したので、並べてみました。うん、色合いがそっくりですね。


「そういえば、名前はないの?」

「私達妖精の名前は誰にも教えないのよ。でも、私が契約したいって思ったら名前を付けさせてあげる」


 ほうほう、真名がどうのこうのみたいなやつですね、きっと。まぁ、クエストが終わる頃には名前を付けることになるでしょう。


「そう。それで、私にさせる手伝いは?」

「うーん、せっかくだし、あの工房で何か調合してるのが見たいわ」

「何でもいいの?」

「何でもいいわよ。でも、ちゃんと調合するのよ。過程もしっかり見たいんだから」


 ふむ、スキルでぱっと終わらせるのではなく、手作業で調合しろということですね。


「よーし、腕によりをかけて作って見せよう」


 早速工房へ移動し、薬草などと道具をいくつか取り出します。

 えーと、どうやるんでしたっけ。確か、最初に薬草をゴリゴリすればいいんですよね。あ、工程短縮に登録してある内容って動画で確認出来るんですね。これを見ながらなら間違えることはないでしょう。


 ゴリゴリゴリゴリゴリ


 とまぁ、いつもはスキルでサクッと行っている内容を久しぶりにやってみました。これは新しいものに挑戦するときにオババの指導をうけないとダメですね。


「こうやって作るのね。見たことないから楽しかったわ」


 おお、妖精が満足したようで、【妖精の鱗粉】を1つ手に入れ、そのままメニューのイベントページに取り込まれました。10個集める必要があるので、最初の10個は強制的に取られるようです。


「次は?」

「うーん、ちょっと考えるわ」


 なるほど、クールタイムですね。時間は表示されていないので、すぐだといいのですが。


「リーゼロッテ、ちょっといい?」


 炬燵へと戻ろうとすると、みんなが戻ってきていました。妖精もちらほらといますね。


「あー、妖精を呼んでもらえばいいの?」

「お願い」

「りょーかい」


 それでは妖精に向き直り、頼むとしましょう。


「他の妖精を呼んでもらえる?」

「いいわよ。でも、私が呼べるのは一回だけだし、あんたの仲間が気に入られるとは限らないわよ」

「そこまでは求めないから」


 妖精にも個性があるようですし。自力で見付けた場合は確実に仮契約が出来て、他のプレイヤーから紹介してもらった場合はダメな場合もあるのでしょう。回数制限はそれを商売にするのを防ぐためですかね。

 妖精が指を頭に当ててくるくると回り始めました。そのまま鱗粉をまき散らしながら強く光ると、どこからともなく妖精が現れました。


「いっぱい来た」


 選ぶ権利は妖精側にあるので、みんなは近付いてくる妖精へ手を伸ばしたりとアピールしています。

 何人かは気に入られたようで契約をしていますが、妖精の声が聞こえないので独り言の様に見えますね。

 ちなみに、呼ばれた妖精と仮契約した場合、その妖精は他の妖精を呼ぶことは出来ないそうです。やはり、妖精を呼ぶ商売は無理そうです。

 まぁ、私以外も妖精を捕まえているので、全員が妖精を捕まえるのも時間の問題ですね。


「よーし、決めたわ。キラキラしたものを集めるところを見たいわ」


 ほう、キラキラしたものですか。うーん、何でしょうね。インベントリを漁ってそれらしきものを見せてみましょう。


「それってこれ?」


 まずは鱗粉です。複数の色の鱗粉がありますが、色によって毒の効果は違いますが、落とすMOBはどれもシルクガなので、困ることはありません。


「これじゃないわ。もっとこう、硬くてキラキラしてるやつよ」

「うーん、硬くてキラキラ……」

「これじゃないの?」


 妖精の声は聞こえませんが、私の声は聞こえます。つまり、私の硬くてキラキラという言葉から判断してくれたようです。


「あー魔宝石か。これ?」

「そうよ、これよ。危ない場所かもしれないけど、その分、お礼は期待してよね」


 おや? これは、鱗粉が複数貰えそうな気がしますよ。つまり、難易度によって鱗粉の数が変わるということですか。時雨の強敵を倒すというものも、複数貰える可能性がありますね。


「そんじゃ、いきますかね。ちなみに、ちゃんと掘った方がいい? それとも、魔法で一気にやっていい?」

「ちゃんと掘るところがみたいのよ」

「りょーかい」


 やはり、手抜きはダメですか。まぁ、しかたありませんね。

 私はもう追加で妖精を呼べないので、後のことは任せて魔宝石を掘りに行きましょう。掘れればどれでもいいとは思いますが、日課も兼ねるので、すぐに全部終わらせるのは無理そうです。

 ちなみに、今度からはポータルを使っても問題ないそうです。





 マギストから戻ってきました。鱗粉を入手した後はディグを使って一気に掘っていると、罠魔法を使うところが見たいと言われてしまいました。

 採掘場所のマギジュエルは空中に漂っているので、罠魔法に引っ掛けるのは難しいです。そのため、東の魔力屋本部から行ける【魔力の渦】へと向かい、マギドールと戦いましょう。

 普段なら魔法を警戒して遠距離から攻撃するのですが、今回は遭遇と同時に罠魔法を設置してからレーザー系を準備します。罠を踏み、罠魔法が発動し、炎の柱に包まれましたが、そこから焦げたマギドールが走って来たのには驚きましたよ。まぁ、レーザー系が間に合ったので助かりましたが。

 次に見たいものを言われるまでマギドール狩りをしていたのですが、次が刻印だったので、日課の続きを済ませます。

 その後は料理を作るところが見たいと言われたので、これも日課の範疇でしたね。


「次は綺麗な場所が見たいわ」

「どこ?」

「綺麗な場所よ。あんたが見せたい場所を見せてくれればいいのよ」


 ここに来て面倒な内容が来ましたよ。今までのは日課の範疇とも言えたので問題ありませんでしたが、綺麗な場所ですか……。部屋を掃除して綺麗にしたというのはダメでしょう。

 ちなみに、戻ってくる頃にはみんな妖精を確保したようで、それぞれが妖精のクエストを進めに行っています。流石に最初っから強敵を引いたのは時雨だけだったようなので、一人でエスカンデ解放ダンジョンへ向かったようです。これでダメならみんなとどこかへ行くつもりだそうですが、その時には呼ばれることでしょう。

 それでは、妖精を取り調べましょう。


「ちなみに、部屋を綺麗に掃除――」

「ダメに決まってるじゃない」


 そうですよね。綺麗な場所ですか。綺麗な景色が見えればいいのだと思いますが……。

 ああ、景色と言えば、景観ポータルがありましたね。


「よーし、決めた。ついてきて」

「わかったわ」


 まぁ、ポータルを使って移動するので一瞬です。





 やって来ました、景観ポータル【湖を見渡す祠】です。エスカンデの北にある山の中腹にあり、北西にある湖を一望出来る場所です。ここからだとなかなかに綺麗な景色が見えるので、景観ポータルと言うにふさわしい場所ですよ。


「どうだ」

「うんうん、確かにここは綺麗ね」


 そういいながら妖精は付近を飛び回っています。そういえば、ここにはダンジョンがありましたね。結局、ちょっと入っただけですぐに戻りましたが、火の蛇型MOBがいたのは覚えています。まぁ、今のところは強敵に挑む必要もないので、放置でいいでしょう。


「満足したわ」

「それはよかった」

「次はどうしよっかなー」


 ちなみに、今回は鱗粉を2個もらえたので、合計8個となりました。思っていた以上に早く集まっていますね。これは今日中に集め終わりそうですよ。

 せっかくなのでピクニック気分を味わうために景色を見ながらヤタ達にもご飯を上げていると、ヤタのなつき度が99%になりました。100%になるのも時間の問題ですね。ちなみに、信楽は90%、コッペリアは64%です。


「そろそろ戻りますよ」

「わかったわ」


 ちなみに、戻ってもしばらくは考え中だったので、とりあえずログアウトです。

 クールタイムがログアウト中でも進めばいいのですが。

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