8-7
土曜日の夜、ログインの時間です。
「こんー」
「……リーゼ、ロッテ、来た」
「魔銃、出来たよ」
ログイン早々にリッカと影子に捕まってしまいました。まぁ、逃げる気はありませんし、内容からしてこちらから捕まりに行くことすら考えられますよ。
「見せて見せて」
手渡された緑色の魔銃は片手で扱う大きさで、銃口を斜めから覗いてみるとオレンジ色をしていました。これはカボチャの皮と中身をイメージしているようですね。銃口がカボチャ型だったりと、完全にハロウィン仕様です。
――――――――――――――――
【カボチャ式マジックガン】
カボチャ型の魔力弾を放つハンドガン
装填数8
耐久:100%
攻撃力:▲
魔法攻撃力:▼
AGI:▲
INT:▼
MND:▼
MP:▼
――――――――――――――――
【願いの長杖】から変更するとこうなりますが、魔法使いの主武装である杖の魔法攻撃力が高いだけで、この魔銃の魔法攻撃力もそこそこあります。スロットエンチャントをしようかとも思いましたが、MPを上げる必要があまりないので、何かいいのが見つかったらにしましょう。
「魔銃って魔法攻撃力参照だよね」
「……物理、殴る、時」
「その攻撃力は、魔銃で殴りつける時の数値だよ」
「なるほど」
ガンカタというやつですね。ただ、物理的な攻撃力は両手杖の数値が低いだけで、魔銃の数値もそこまで高くないそうです。
銃系統の武器は、殴った時の耐久の減りや、使うことの出来る鈍器系スキルのアーツの減衰が大きいため、ガンカタは専用の銃を作らない限り非推奨だそうです。
これは魔銃も例外ではないので、緊急時は今まで通り格闘系統の足技を使うことにしましょう。
装填数は連射系アーツの時に参照する数値で、実弾銃の場合はスキルが弾丸を保持しますし、魔銃はスキルレベル1で作れるカートリッジのMPを消費して放つので、ほぼ気にしなくていいそうです。
「よーし、カートリッジ作るぞー」
「おー」
「……おー」
えーと、素材は魔石ですね。後は金属系のインゴットを1個で、属性を付ける場合は属性の欠片が必要です。まぁ、1個しか持てないわけではないので、まずは無属性を作りましょう。
魔石も数と大きさで最大MPを増やせますが、インゴットの種類によって上限があるようです。
「時雨、私にもインゴット売って」
リッカと影子に弾丸用の金属渡していた時雨から必要な素材を売ってもらうことにしました。
「何のインゴット?」
「そこそこいいやつ」
銅と鉄以外で気軽に売ってもらえるのは知りませんし、細かい種類もわからないので、選んでもらいましょう。
「はい、そこそこいい鋼鉄のインゴット」
「あんがと」
そこそこいいインゴットを手に入れました。代金はいつものようになので、値段は知りません。
最後の魔石ですが、カートリッジ作成画面で先にインゴットを選択すると、今回作る分の上限がわかるそうなので、最大まで入れましょうかね。
おや、カートリッジの形式も選ぶわけですか。渡された魔銃はマガジンなので、リボルバー用を選ぶ必要はありません。一発撃つごとに撃鉄を起こすのはいい雰囲気がありますが、面倒ですから。
マガジンを選び、時雨に売ってもらったインゴットを選択し、魔石を今回の上限までつぎ込みます。
属性の欠片は入れないので、後は【作成】ボタンをポチっとな。
「……カート、リッジ、……共有、出来る」
詳しく聞いてみると、銃の大きさに関わらず、作ったカートリッジは同じ装填方法の魔銃で使いまわすことが出来るそうです。つまり、今後新しい魔銃を作るのなら、マガジン一択になるのでしょう。
もう少しカートリッジの仕様を確認したところ、消費したMPは自然回復するようですが、回復速度はカートリッジを作った素材に依存するようで、そこそこいいインゴットを使ったおかげで、そこそこ早いとなっています。自然回復をするにも条件があり、カートリッジだけ、もしくは、魔銃ごとインベントリに入っている。もしくは、最後にカートリッジ内のMPを消費してから一定時間経っている。のどちらかが条件のようです。簡単に言えば、使っていない時ですね。魔力操作でMPを流し込めば回復しそうなので、そのうち試しましょう。
「リッカ、影子、ありがとね」
「……どう、いたし、……まして」
「へへへ。僕達も、リーゼロッテが魔銃スキルを育ててくれると助かるんだ」
「おや? 何か企んでるのかな?」
影子に聞いてみたところ、魔銃スキルLV20になると、魔法弾作成というのを覚えるそうで、いろいろと素材は必要ですが、本人が使える魔法を弾丸にすることが出来るそうで、その弾丸が欲しいとのこと。まぁ、素材さえ用意してもらえればいくらでも作りますよ。ちなみに、弾丸ではなく、カートリッジでも作れるそうなので、付与魔法を込めたカートリッジを使うのは見た目だけで考えればありです。……まぁ、マガジン用のカートリッジの場合、使える魔法は1個で、リボルバー用の場合は、使う魔銃の装填数に応じて上下するようです。詳しいことは、魔法弾作成を覚えてからにしましょう。
日課も終わったので試し打ちに行きたいのですが、それはそれとしてサンタさんの付き添いがあるので、試し打ちは後回しです。
持ち物装備に登録したショルダーホルスターに魔銃をしまい、補助武器の空いていたところに設定して、これで装備完了です。
サンタさんの付き添いをいつものようにハヅチと交代した後、地脈へとやって来ました。目的はそう、魔銃の試し打ちです。ここに出現する【マギジュエル】はふよふよ浮いているので練習にはもってこいだと思ったのですが、よく考えたら相手は魔法を使ってくるので、射程次第では立ち回りの練習になってしまいますね。
まぁ、浅い階層で試してみましょう。
このゲーム、弓や銃などの遠距離攻撃武器を自らの技術で使いこなせということはなく、ちゃんとシステム的なアシストがあります。
それはロックオン機能です。別に必中になるわけではなく、意識的に狙うと決めた相手の方向へ銃口を向けると、ほんの少し狙い続けるのを手伝ってくれます。こちらのDEXとAGIを参照するので、相手のAGIによっては役に立たない場合があります。
もう一つ、便利なアシストがあると思っていたら、これは銃系スキルの機能ではなく、別のスキルの効果でした。
引き金に指をかけると銃口から線が出ていたので、弾道を表示してくれる機能があると思っていたのですが、これは【軌道察知】スキルの効果でした。今まで気にしていなかったのですが、よく考えてみれば、リッカが銃を使っている時に薄っすらと線が出ている気がしましたが、あれは軌道察知の効果だったようです。スキルレベルが低いから気が付かなかったようですね。魔法の方は上位である魔詠みがあるのではっきり見えていたのも、気付かなかった原因の一つでしょう。
まぁ、気が付かなかったことは置いといて、いくら弾道がわかるとはいえ、銃を動かさずに引き金を引くなんて出来ませんし、スキルレベルがまだ低いのか、多少ずれることがあるので、魔法ほど信用しきることは出来ません。
それでは主武装である杖をしまって、魔銃である【カボチャ式マジックガン】を抜いて突撃です。
射程はランス系やレーザー系の方が長いので普段以上に近付く必要があります。私が普段、射程ギリギリで戦っているのは相手の射程内に入らないようにするためです。つまり、【魔詠み】と【軌道察知】を使い、マギジュエルの魔法を掻い潜り続ける必要があるということです。
これはもう、魔銃の試し打ちではなく、立ち回りの練習ですね。
ここは地脈の3階なのでランス系なら3発で倒せる相手です。魔法攻撃力は下がっていますし、攻撃手段がいつもと違うので弾丸3発では倒せないでしょう。
走りながらマギジュエルの射程圏内へと入りました。ふよふよ浮きながら進んでいたマギジュエルが詠唱を始めたため、その場に留まりました。これは狙いやすくなりましたね。
普通ならサイトを使って狙うようですが、これはゲームであり、便利なアシスト機能があるため、狙う意思を持って引き金に指をかければある程度は補正してくれます。とはいえ、弾道表示だけで狙うのは難しいので、やはりサイトはのぞき込みます。確か、片目で見るけれど、もう片方の目を瞑ってはいけないらしいですね。理由は知りませんが。
狙いをつけていると相手のフレイムランスが飛んできたので、きちんと躱してもう一度狙います。使ってくる魔法も軌道もわかっているので、当たることなんてありませんね。
バキュン
乾いた破裂音とは全く違う音がしました。その大きい音がすると同時にカボチャ型の魔弾が放たれました。それがマギジュエルへと命中し、ふよふよと後ずさりするような動きを見せました。流石にこれで倒しきれるわけもなく、ランス系の詠唱を始めてきました。
こちらは連射性が低いので、魔弾のチャージという名目のクールタイムがほんの少しですが発生しました。
まぁ、気になるほどではありません。ちなみに、引き金を引いたままにすると、クールタイム毎に連射出来ます。
マギジュエルの魔法を回避してから撃つということを基本にし、繰り返すことで問題なくマギジュエルを倒すことが出来ました。魔弾を9発撃ちましたが、慣れれば向こうが1発撃つ間に2発くらいは撃ち込めそうです。
これを何度か繰り返し、安定して戦えるようになったので、今度はアーツを使ってみましょう。
魔銃の方はまだアーツがないので、基本スキルである銃スキルのアーツしかありませんが、ちゃんと使えるので問題ありません。
おや、ちょうどいいところにマギジュエルが現れましたよ。それでは、一気に近付き――。
「【接射】」
マギジュエルが詠唱していましたが、加速を使いながら近付き、銃口をくっ付けた状態でアーツを使いました。私はそのまま距離を取るために走り抜け、魔弾を受けたマギジュエルは吹き飛ばされ、詠唱がキャンセルされています。
このアーツには発動条件が一つあり、それは銃口が相手にくっ付いていることです。
唯一にして絶対の条件であるそれをクリアすることでとてつもない威力の一撃を叩き込むことが出来ます。それでも、倒しきることは出来なかったので、9倍には届かないようですね。
マギジュエルのランス系をしっかりとかわして、次のアーツを使いましょう。
狙いを定めて……。
「【連射】」
このカボチャ式マジックガンに設定されている装填数である8発の魔弾を連続して発射しました。特に威力に関して何かの補正があるわけではありませんが、引き金を引きっぱなしにする連射よりも早く撃てるため、状況次第では使えそうですね。
ちなみに、何発か当たった段階でマギジュエルがポリゴンとなり散ったので、残りは近くの壁へとぶつかりました。
それでは次の練習……実験……かかし……、ターゲットを探しましょう。
残りのアーツを確認しながら進んでいるとマギジュエルを見付けたので、一番最初に覚えたアーツを試しましょう。
「【ショット】」
何の変哲もないアーツですが、通常よりも威力が上がる一撃です。流石に接射まではいきませんが、威力が上がるうえ、クールタイムも短いのはいいことです。
向こうのランス系をかわし、次のアーツです。
「【急所狙い】」
このゲームのクリティカルの仕様は全く知りませんが、どこに当たっても強制的にクリティカルになり、命中部位によってはダメージが上がるらしいです。ええ、弱点やら急所やらが設定されているMOB相手であれば、よーく狙って使う必要がありますが、マギジュエルには急所らしきものが見当たらないので、とりあえず当たればいいアーツです。
後はマギジュエルの魔法を掻い潜り、【接射】でとどめを刺しました。
残りのアーツは【クイックドロー】と【跳弾】の二つです。ですが、クイックドローはホルスターにしまった状態で使う早い抜き打ちで、オートとマニュアルの二種類があり、システム側で無理矢理動かされるか、自分で抜くかですが、高い命中補正があるだけなので、使うことはないでしょう。一応、マニュアルの方が補正は高くなるそうです。
最後の跳弾は、跳弾を確実に起こすアーツで、跳弾する壁の凸凹をある程度無視してくれるそうなので、遮蔽物の向こうにいる相手を撃つのには適していますが、跳弾後の威力が減少するので、これも今回は使いません。
とりあえず、この階では急所狙いを使った後に接射を使うと、倒せたり、微妙に残ったりするので、必要なら追撃をしますが、基本はこの二つでいいようです。まぁ、慣れたら次の階に行くのでそれに応じてすぐにパターンを考え直す必要はありますが。
というわけで、4階へとやって来ました。先程までいた3階のマギジュエルよりも少しタフになるので、9発では倒しきれないはずです。というか、3階と同じように急所狙いから接射をしてもまだまだ元気に見えます。一度マギジュエルに魔法を使わせて、回避してから連射を至近距離で叩き込んだところ、6発目で倒せたので、大体15発分くらいのHPでしょう。魔銃のスキルレベルが上がれば多少は弾数が減るとは思いますが、現状では立ち回りで何とかするしかありません。
……魔銃の試射でしたが、なぜこうなったのでしょう。
ああ、カートリッジの減ったMPは魔力操作で回復させることが出来たので、複数作る必要はなくなりました。
ピコン!
――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました――――
【採掘】がLV30MAXになったため、上位スキルが開放されました。
【発掘】 SP3
このスキルが取得出来ます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
途中で採掘しながら試射をしていたため、採掘がとうとうカンストしてしまいました。採掘と発掘って目的が違う気がするのですが、気にしてはいけませんね。
発掘は今まで以上に採掘ポイントで採掘できる回数が増えたり、いいものが取れやすくなったりするそうです。まぁ、ここは取れるものが決まっているので、回数しか変わりませんね。まぁ、それだけなわけもなく、発掘ポイントというものが追加され、今までとは違うものが発掘出来るそうです。名前からして土器や化石が取れそうなスキルですが、一番の変更点は、他のスキルとの連動設定で、地脈魔法と連動させることが出来るようになりました。まぁ、今出来ることは、あの穴を掘る魔法である【ディグ】で採掘・発掘回数を1回で掘り切れるようになっただけですが、時間の短縮だけでなく、地脈魔法のスキルレベル上げが出来るのは大助かりです。採掘時に効果を発揮するオーブが見付かるまで、ツルハシが封印されることになりました。
魔銃のスキルレベルを上げながら採掘をしていたのですが、ここでは採掘ポイントが増えた気がするだけで、別の物が取れるということはありませんでした。まぁ、魔宝石はいくらあっても足りないので、これはこれでいいことです。
魔銃がスキルレベル10になるまで籠った結果、【リチャージ】というアーツを覚えました。これは魔銃に装填しているカートリッジのMPを全回復させることが出来ます。魔力操作で流し込むより圧倒的に早く回復しますが、余分にMPを消費しますし、カートリッジの最大MPに応じてクールタイムが伸びるので、ここぞという時に使いましょう。
それでは、ログアウトです。
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