7-10
日曜日の午後、ログインの時間です。
テロン!
――――フレンドメッセージが二通届きました。――――
おや、一人は思い当たる相手がいるのですが、もう一人は誰でしょう。
あー、リコリスでしたね。レイド攻略のお祝いと、鞄の代金についてです。そういえば、大型インベントリが使える鞄の値段が決まったのを伝えていませんでした。まぁ、素材が違うので、同じ値段でいいか確認してみましょう。
そして、思い当たる方はやはりシェリスさんでした。近々、不滅の水の納品に関して話したいそうです。一般販売の価格次第にはなるでしょうが、好きにしてもらいましょう。
それぞれに返信したので、日課をこなしましょう。
「お、リーゼロッテ、ちょうどよかった」
「どしたの?」
ハヅチは情報屋クランへ行っていたらしいのですが、レイド関連で分かっていることはすべて伝えてあるはずなので、用件に心当たりはありませんね。
「昨日の外套、使用感を聞いとこうと思ってな」
「ああ、なるほど。あれはいいよ。夏用だからレイド前は少し寒かったけど」
「まぁ、それはしょうがないよな」
光っている部分に関しては、私からはあまり見えないので何とも言えませんが、ギミックとしてはいいと思います。
「あれは実験品だけど、魔宝石をもっと持ってきたら、魔宝石糸を使った装備作るぞ」
「そう。なら、本腰入れて採掘してこようかな。皮で頑丈の次って見つかってないでしょ?」
「頑丈の上位というより、特化系の素材なら増えて来たぞ、魔宝石糸を大量に使って布でも作ったら魔法特化の装備になるかもな」
うーん、それはちょっとやってみたい気もしますが、必要な数がわからないので、手を出しづらいですね。
……必要数といえば。
「合成獣を作らないといけなくてさ、ラビトットで作るつもりなんだけど、素材どのくらいいるか知ってる?」
調べようと思っていたのですが、完全に後回しにしたままでした。
「ああ、ラビトットなら40個で行けるぞ。合成獣のクエストのためにとりあえずで作るやつ多いらしいな」
やはり、使わない可能性を考えるとそうなるわけですね。
「そんじゃ、魔宝石掘ってくるから、ラビトットのドロップ、40個集めといてよ」
「いいぞ。糸への加工は時雨が担当してるから、渡しといてくれ」
「りょーかい」
40個なら集めに行った方が早く終わりますが、流石に面倒ですし、掘りに行けば次の装備の素材にもなりますし、知らない操作方法を調べる必要もなくなりますから。
「あ、これ、使うか?」
ハヅチが取り出したのはヘッドライト付きのヘルメットと鉢巻です。ちゃんとライトも機能するようですが、何をどうしたのでしょうか。
「私にこれを被れと?」
「いらないならいいさ。ヘルメットは採掘速度UPで、鉢巻は確率で採掘個数UPだけどな」
ほう、なかなかいい効果ですね。ちょっとそれを作るための重要な素材をオーブ化してみたいものです。
「頭装備とアクセサリかー」
「ほれ、どうすんだ?」
「あ、上に帽子被っても落ちない」
ゲーム的な調整のお陰なのか、ヘッドライト付きヘルメットをかぶっても、帽子は落ちないようですし、ヘッドライトの邪魔はしないようです。
「それで、これどうやったの?」
「グリモアに刻印頼んだ」
「……私に言えばやったのに」
「リーゼロッテには絶対内緒の頼まれごとされたから、その対価だよ」
「へー。そんじゃ、聞かないどく」
その頼み事の内容が終われば教えてくれるでしょうから、ここは大人しくしておきましょう。
日課の後に採掘へ向かいました。装備切り替え欄に一部だけ違う装備を何個もセット出来れば使い勝手がいいのですが、それは今後の仕様変更に期待ですね。
その後、地脈で同じように安全第一と書かれたヘルメットと鉢巻を装備したグリモアと遭遇したので、二人で協力してログアウトするまで採掘することにしました。
途中、コッペリアのなつき度が40%になり、召喚コストが最大MPとDEXを合計三割になったり、大地魔法と閃光魔法がLV15になり、【アースレーザー】と【フラッシュレーザー】が使えるようになりました。LV15になっていない中級魔法はボム系でしか上がらないので、時間がかかりますね。
夜のログインの時間です。
前もってハヅチにラビトットのドロップである【白い毛皮(小)】を40個用意してもらいました。それでは、抽出を始めましょう。
例の砂時計のような設備に素材をセットし、両手を置きます。後は、吸い取られる量の三倍のMPを流し込むことで、抽出にかかる時間を短縮しました。
出来上がった【ラビトットの因子】4個それぞれに、頭・胴・手・足を設定し、工房の設備で4点錬金します。
「【錬金】」
出来上がった【合成獣の核】にはうっすらとラビトットのシルエットが浮かんでいます。これは、出来上がった合成獣のシルエットになるらしいので、アイテムの状態で並べても区別がつきそうですね。
それでは、錬金ギルドへ向かいましょう。
錬金ギルドの受付へと向かいました。
「たの……、合成獣を用意したので、応用理論を渡すに値するかどうか見て欲しいんですけど」
そういえば、その基準を聞いていませんでしたね。これで複数のMOBの因子を使わなければいけないとなったら困りますが、ハヅチもそんなことは言っていなかったので、大丈夫でしょう。
「かしこまりました。では、あちらへお願いします」
指示された方の扉に目印が出たので、そちらへと向かいました。その先の部屋には、床に大きな魔法陣が描かれており、大きな合成獣でも複数体は呼び出せそうですね。
「おや、合成獣の理論を知りに来たのだな」
いかにもな錬金術師風のNPCが怪しげな笑みを浮かべながら待っていました。
「はい、応用理論が欲しいです」
さて、目的がはっきりしている場合はNPCとの会話は主張をはっきり伝えるのが大切です。でないと、余計な遠回りをする可能性が出てきますから。
「そうか。では、君の合成獣を呼び出してみなさい」
「【出撃・ラビトット】」
初期設定のままなので、名称もラビトットです。複数のMOBの因子を使った場合は、頭を選択した因子のMOBの名称が入るそうです。まぁ、ちゃんと使う目的で作る場合は、オリジナルの名称を付けますよね。
魔法陣の中央に出現したラビトットは固定されたようにじっとしています。どうやら、この部屋で呼び出した場合は、あそこでじっとするようです。出来を見てもらうのに、好き放題動かれたら大変ですからね。
「なるほど、因子の抽出はしっかりと出来ているな。しかし、少し荒い。君は魔力を操る術に長けているようだな」
どうやら手動で流し込むMPを増やすとデメリットがありそうですね。出来上がった合成獣のステータスを見ていないので、何がどうなっているのか全く分かりませんが。
そして、小さいMOBであるラビトットを嘗め回すように見たNPCがこちらへとやってきました。
「合格だ。荒さも設備を強化すれば問題なくなる。これを持っていけば、売店で応用理論を購入できるぞ」
ああ、また買うんですね。錬金はお金がかかるイメージがありますが、その通りとは。
そして、売店へ行き、許可証を提示して、【合成獣に関する応用理論】を入手しました。
ピコン!
――――クエスト【合成獣作成】クリア――――――
抽出機の合成機能が使えるようになりました
抽出機のアップグレードが出来るようになりました
――――――――――――――――――――――――
ほう、因子の合成は抽出機を使って行うわけですか。確かに、工房での錬金は4点錬金なので、それを超える数の因子を使うとなれば、別の手段が必要になりますよね。アップグレードの内容を確認して、するかどうか決めましょう。
リーゼロッテ:ハヅチ、錬金工房のアップグレードしていい?
一応、確認を取る必要があるので、連絡は入れておきましょう。
アップグレードの申し込みは受付で出来ますし、そこで内容の確認も出来るので、一度見に行きましょう。
「すみません。抽出機のアップグレードの内容を知りたいのですが」
「かしこまりました。こちらをご確認ください」
出現したウィンドウによると、いくつかの段階があるようです。段階によって金額も性能も違いますね。
一番安いものだと、MPを流し込む量をほんの少し増やせるだけで、一番高いものだと、MPを流し込む量をかなり増やせるうえに、安全弁付きで、素材ごとの最大量を自動的に判別してくれるそうです。やるなら、一番高い奴ですね。MPを流し込む量は抽出にかかる時間に直結しますから。
ハヅチ:工房関連の仕様わかってると思うが、それでいいなら好きにしろ
リーゼロッテ:りょーかい
クランハウスの工房の場合、クランに寄付するという形になるというアレですね。何の問題もないので、アップグレードしてしまいましょう。
えーと、申し込みたい内容を選択して、……5,000,000Gですか。まぁ、本格的に錬金をやっていて、ここまで育っているプレイヤーからすれば端金でしょう。
ポチっとな。
おや、完了まで10分ですか。終わるまで工房自体が使えないようですが、私達の中で錬金工房を使うのは私だけなので、問題ありませんね。
アップグレードした抽出機を確認してからログアウトしましょう。
木曜には今やっているキャンペーンも終わってしまいますが、その後には冬イベが始まります。内容はまったく公開されていませんが、サンタクロースやトナカイのシルエットがあるので、クリスマスイベントでもあるようです。まぁ、期間も長いので、ゆっくりやるとしましょうかね。
クランハウスへ戻り、アップグレードした抽出機を確認すると、メモリやら何やら、ごてごてとした機材らしきものが増えています。まぁ、使い方はメニューを見ればいいのでこまることはありません。
それでは、ログアウトです。
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