7-6
土曜日の午後、ログインの時間です。
お昼の後にハヅチから聞いたのですが、参加者予定者全員の都合が付くのが日曜の夜ということで、全員がそれまでに例のアクセサリを入手しておこうということです。まぁ、内容は園長さんから聞いてあるので素材さえ集まればすぐに終わります。
そんなわけで、必要素材にインゴットがあるので、それの調達を待つ間の時間を自由に使うという理由でゴンドラのクエストの続きをしましょう。
「たのもー」
「おう、嬢ちゃん遅かったな」
「いやー、カクカクシカジカウマウマで来れなかったんですよ」
「全くわからんが、そこにある部品をマギストの冒険者ギルドへもって行ってくれ」
棟梁が示した先にはなんだかよくわからない部品が鎮座しています。これをどうするのかはまったくわかりませんが、言われたとおりにするだけですね。
「その後はどうすればいいんですか?」
「ギルドで部品の加工依頼で来たといえば、加工先を教えてくれるから、嬢ちゃんが行ける場所を選んでくれ」
「いえっさ」
早速【収納加工部品】をしまい、マギストへ向かいましょう。
マギストの冒険者ギルドへやってきました。
「すみません、ハーバスの造船所から部品の加工依頼で来ました」
「はい、では、この2ヵ所からお選びください」
えーと、学院か研究所ですか。
「この2ヵ所、それぞれに違いはあるんですか?」
「学院の場合、加工を専攻している学生が行うので、必ず成功するとは限りません。ただ、この部品が壊れることはないので、成功するまで学生が代わる代わる挑戦します。ある程度の試行回数を行ってもうまくいかなかった場合、教授が行いますので、最大で6日ほどかかります。早ければ1日もかかりませんが。研究所の場合は研究員が行いますので、確実に1回で成功しますが、手を付けるまでに時間がかかるので、3日ほどかかると思います。どちらにしろ、面識のある方しだいにはなりますが」
ほう。運が全ての学院とほぼ固定の研究所ですか。ただ、教授や研究員からの評価しだいで、多少の補正がかかるのでしょう。教授の場合は腕のいい学生に頼み、研究員の場合は早めに手を付けてくれる、といったところですね。
うーむ。クエストの進み的には学院の方ですかね。
「では、学院に行きます」
「それでは、こちらをお持ちください」
依頼状を受け取ったので、素早く向かいましょう。
「教授教授ー」
「君は相変わらず騒がしいな」
「今日は依頼があります」
「ふむ、何かね?」
相変わらず髭を撫でていますね。
「これが依頼状です」
依頼状を受け取ったシス教授が中身を確認しています。
「ふむ。収納加工か……。確か、得意な者がいた……が」
今、ちらっとこちらを見ましたよ。ここは静かにしている場面ですね。ここで騒いだり催促したりしたら失敗しそうなNPCを紹介されてしまいますから。
「……なら、あの者にしようかね」
今、またこちらを見ましたよ。ですが、ここで食いついてはいけません。
「それでは、出来上がりしだい連絡を入れる。なに、学生が失敗しても私が行えばすぐだ。3日後までには完成させよう」
「ありがとうございます。それで、この部品はどこに置きますか?」
「そこに置いておいてくれ」
「わかりました」
最大で6日とのことでしたが、どうやらそれよりも早く行ってくれるようです。現実の時間で言えば明日には出来ているということなので、それまでにはアクセサリに必要な素材も集まっていることでしょう。
とか思っていると、時雨からインゴットが集まったといわれたので、クランハウスに立ち寄り、必要素材を受け取りました。
今日は移動が激しいですが、エンストへとやってきました。この前は途中で会話を打ち切ったので、会話がどこから再開されるのかはわかりませんが、同じNPCに話しかければ済むことです。
「貴女はこの前の」
おや、覚えている設定ですか。なら、話は早いですね。
「冒険者ギルドのランクCになったんですよ」
「それは素晴らしい。信頼のおける冒険者の方でも、ここに興味を持って来てくれる方もそうはいないんですよ。是非ともあのアクセサリの作成に協力していただけませんか?」
ピコン!
――――クエスト【火から身を守る研究】が開始されます――――
クエストを受注しますか?
【はい】【いいえ】
―――――――――――――――――――――――――――――
でましたね。
「はい」
ボタンを押してもいいですし、口で答えてもいい。とても便利なシステムですねぇ。
「では、まずはこちらの一覧のアイテムを用意してきてください」
紙を貰ったのですが、すぐに消えたので、メニューのクエストから確認しましょう。
――――クエスト【火から身を守る研究】――――
赤色の結晶 【20/10】
青色の結晶 【20/10】
銀のインゴット 【20/10】
魔石(中) 【150/10】
―――――――――――――――――――――――
とある理由から必要数の倍を持って来ています。いえ、実際は倍の素材が必要なわけですよ。
「この素材、持ってます」
「ありがとうございます。これで、新しいアミュレットを作れます」
最後に報酬として多少のゴールドをもらうことで、このクエストは終了です。
ちなみに、この後のNPCの話をまとめると、急にアミュレットが一つ必要になったそうですが、生憎と在庫を切らしていたとかで困っていたところに私が来たという設定らしいです。そうでもなければ、集める素材は大量になりますよね。
「これであそこの人達が使っているアクセサリが作れるんですよね?」
「いえ、これで作れるのは防火のアミュレットという基本のアクセサリで、発魔設備の一番外側の職員が使うものです。これを元に強化していくことで、あそこの職員が使うものになります」
「なるほど。あの一番暑そうな場所で使うには力が足りないんですね」
「そうなんです」
「ちなみに、私がアミュレットを手に入れる方法ってありますか?」
「今後、素材を持ち込んでいただければ、お作りしますよ」
「ありがとうございます。ちなみに、素材はさっき持ってきたのと同じですか?」
「ええ、それで大丈夫です」
ふむ、予定通りです。
まぁ、作る前にちょっと聞いてみましょう。
「ちなみに、強化の方は?」
「強化はアミュレットを手に入れたら詳細を聞いてください」
「わかりました。では、これで作成をお願いします」
こういうクエストは話の流れとして素材を要求してから持ってくるまでの間にある程度の時間が経過しているとうい前提が存在します。そのため、今回の様に前もって素材を用意している場合、一つ、不思議なことが起こります。
「少々時間がかかるので、こちらをお持ちください」
ええ、無いはずの在庫が存在するという現象です。大昔のゲームならまだしも、今の時代のゲームですらこうなるとは、わざとでしょうかね。
まぁ、アミュレットを手に入れることが出来たのですから、文句はありません。
ちなみに、強化に使う素材を聞くと、魔糸系以外にもいろいろと必要で、ハヅチと時雨に任せた方がいいと判断しました。
さて、一度報告のためにクランハウスの戻ります。
「作ってきたよ。後、これ強化に必要な素材」
素材を聞いたらメッセージが出て来たので、ウィンドウを可視化して見せました。これを人数分集めるので、それはクラン資金を握っているハヅチに任せます。
「リーゼロッテ、ついでだ、これに刻印と魔石を頼む」
「どしたの? 豪華な受注生産でも始めたの?」
「とりあえず、見てみろ」
――――――――――――――――――――
【特製肩掛け鞄】
肩から斜めに掛ける鞄
素材から厳選され、多くのものが入る
――――――――――――――――――――
うーむ、前に頑丈な皮を使った時はだめでしたが、それより上の素材が見つかったのか、他の素材も厳選したのか、よくわかりませんね。
まぁ、インベントリを付ければいいので、まずは刻印をして、次に魔石(中)を――。
「魔石は(大)な」
「ん? ああ、はいはい。そうだよね」
わざわざ試すのですから、大でなければ意味がありませんよね。
「【魔石融合】」
その結果。
――――――――――――――――――――
【特製肩掛け鞄・インベントリ(大)】
肩から斜めに掛ける鞄
素材から厳選され、多くのものが入る
刻印:インベントリ(大)
――――――――――――――――――――
おお、成功ですね。
「インベントリの大、出来たよ」
「よっしゃ」
「皮以外もいいのにしてよかったね」
どうやら時雨も協力したようです。
「何したの?」
「ほら、魔糸、あるでしょ。魔宝石で作れるようになったから、試しにそれ使って作ってもらったの」
「ほー。そんじゃ、クエスト用に10本売って」
これでマギストのクエストも進みますね。
「はい、10本」
「はい、これ魔宝石」
ついでなので、手持ちのも渡しておきましょう。代金替わりにもなるはずですし。
「よし、リーゼロッテ、この試作品もって値段をつけられる人のとこ行ってくれ」
「あー、シェリスさんに聞けばいいのね」
前からそうですし、今回もそうするということです。
一応、必要素材を聞いたところ、前より豪華なので、頑丈な皮を5枚、魔宝石糸5本だそうです。他の魔糸でもいいのかもしれませんが、時雨が作れるのが魔宝石糸だけなので、今はわかりません。
「欲しいって言ったらそれ売っていいからな」
「りょーかい」
シェリスさんはログインしているので、メッセージを送って生産クランへ向かいましょう。
道中、シェリスさんからの返信で受付付近にいると言っていたので向かっていると、近くに何やらプレイヤーの塊がありました。何やら騒がしいですが、問題はありませんね。
えーと、シェリスさんはどこでしょうかね。あ、いました。
「シェリスさーん」
「早かったね。それで、聞きたいことがあるってどうしたの?」
「実は、見て欲しいものがあるんですよ」
何よりもまずは見てもらいましょう。
普段の鞄よりもあきらかに手間暇がかかっている鞄を見たシェリスさんは、何かに思い当たることがある様子を見せました。
「もしかして……」
「百聞は一見に如かず、ですよ」
鑑定してもらうのが一番ですから。すぐに申請が来たので、許可しました。
すぐにシェリスさんの表情が変化したので、私が聞きたいこともわかってくれるといいのですが。
「……リーゼロッテ、ちょっと場所変えよ」
そういってシェリスさんが歩き出したので、近くに騒がしい集団のいる場所からシェリスさんの工房の方へと移動しました。
そして、ゆっくり出来る様に準備を整えると、先にシェリスさんが口を開きました。
「聞きたいことに見当がつくけど、先に聞かせて。これ、量産出来るの?」
「もちろんです」
「そう。とうとう出来たんだ。……そっか、これから出るっていうのに」
微かに聞こえただけなので、何が出るのかは聞かないでおきましょう。
「それで、これ、いくらで出せばいいですかね?」
そんなわけで、本題に入ります。
「あーうん、そんな気はしてた。これの素材は聞いてもいい?」
前もって聞かれたら答えていいと言われてもいるので、隠す必要はありません。
「頑丈な皮が5枚、魔宝石糸が5本だそうですよ。後はインベントリを使えるようにするのに魔石(大)です」
「皮の使用枚数増加に……魔宝石糸……? そういえば、鍛冶と錬金の方から特殊糸とかいうジャンルの素材が流れ始めたけど、あれは宝石糸だし……」
おや? 妙ですね。アイテムの名称が微妙に違うのは、シェリスさんの記憶違いなのか、分岐したのか。まぁ、魔宝石を入手していないだけという可能性もありますね。研究所ではあまりプレイヤーを見かけませんから。
「その魔宝石糸の素材って知ってる?」
「魔宝石ですよ。まぁ、どうやるのかは知りませんが」
スロットエンチャントを見付けてからは魔力屋本部にプレイヤーが集まっていて、研究所の方ではあまりプレイヤーを見ないんですよね。そのせいであまり広まっていない可能性はあります。だって、名前そのままな素材ですから。
「……うーん、流通してない素材をほぼ知られていない方法で加工か。……ちなみに、鞄の販売、三ヵ所目が出たけど、それも考慮する?」
「悪徳組合の他にも出て来たんですね。……気にしなくていいですよ。売れなければ作らないだけですから」
「わかった。……なら、10,000,000G?」
「ではそれで」
「ちょっと待ってちょっと待って、それでいいの?」
「バカ高くして買えなければ意味がありませんし、シェリスさんが考えて思いついた金額なら問題ありませんよ」
リーゼロッテ:10,000,000Gだってさ。後、鞄の販売、三ヵ所目が出たってさ
ハヅチ:わかった。ついでに、生産クランの関係者も欲しいんなら、優先販売するって言っといくれ。あと、三ヵ所目の話は知ってる
リーゼロッテ:りょーかい
「ハヅチからも了解貰いましたし、三ヵ所目も知ってるそうです」
「あ、うん。あそこのクラン、情報を小出しにしてたから」
「それで、その鞄、買いますか?」
そういった瞬間、トレード申請で10,000,000Gが表示されました。私は手にしている鞄をウィンドウに放り込み、トレードが成立しました。
「早いですね」
「まぁ、買う準備は出来てるって言ってあったし」
「後、ハヅチから生産クランの関係者には優先販売するって伝言頼まれてますけど、どうしますか?」
「確認しとく。でも、確実に大半の人が欲しがるから。ところで、鞄とウェストポーチ以外のインベントリ付きのは作るつもりないの?」
「あー、どうしましょうかね。インベントリのサイズが違えば使えますけど、鞄2個は邪魔ですよね」
リーゼロッテ:シェリスさんが鞄とウェストポーチ以外の形はないかってさ
ハヅチ:悪徳組合のリュックでよくね?
「悪徳組合のリュックでいいんじゃないかって言ってます」
「……持ち込みを受け付けてくれない?」
「大型はさっきの素材が必要なので」
「中型の方で」
「全部持ち込みなら、私だけで出来ますよ。ただ、そんなに時間は取れませんけど。でも、三つも使います?」
インベントリの小と大を使っていますが、大があれば中は必要ないと思うんですよね。小はポーションだけとかすぐ使いそうなものを入れるのに使えますが。
「素材とか作った装備が増えると中型でも結構いっぱいになるんだよ」
「へー、まぁ、持ち帰って検討するということで」
「それ、断るの前提だよね」
「……シェリスさんには持ってきたら作ると言ってあるはずなので、シェリスさんの分は刻印しますよ」
まぁ、中型から魔石を引っぺがせば鞄を用意するだけで済みますし、そうでなくとも、魔石(中)なんて簡単に手に入れるでしょう。
「それじゃあ、何かいいのが出来たら頼むね」
「いえっさ」
それでは、やりたいクエストもありますが、そろそろ時間なのでログアウトです。
夜のログインの時間です。
クエストの前に内容が変更になった日課をこなしていると、メッセージが来ました。
ピコン!
――――クエストが進行しました――――
進行の通知を待っているクエストなんて一つしかありませんが、想像より早いですね。別の目的もあるのでちょうどいいですよ。
「教授教授ー」
いつものようにマギストにある魔法学院へとやってきました。
「ふむ、君は相変わらずだな。まぁ、いい。そこにあるから持っていきなさい」
「はい、ありがとうございます」
アイテムとしては【収納加工部品】のままのようです。見た目はまったく変わっていないので、何がどうなったのかはわかりません。
それでは、次です。
「たのもー」
「おや、君か」
「魔糸、……えっと、魔宝石糸を10本持ってきました」
「そうか。確かに、今の君が短時間で用意出来るのはそれくらいだろう。では、罠魔法について一つ実演しよう」
ドクトルが白衣をひるがえしながらどこからか用意した魔糸を床に広げはじめました。一見すると魔法陣のようですが、観察しても魔糸としか出ないので、完成するまで待つしかなさそうです。
しばらくすると、糸が赤く光ったので、完成したようです。
「これが罠魔法の一つ、【ファイアピラー】だ」
光った後には消えてしまったので、観察出来ていません。けれど、魔力視には反応があるので、魔力があることだけはわかります。
ドクトルが手近にあったゴミを投げ込み、それが床に落ちると同時に火柱が立ちました。
「おおー」
「今回は安全のために基本魔法の威力に抑えたが、下級魔法を使いこなせる場合、下級魔法並みの威力にすることも出来る」
「なるほど」
「これは複雑で最初はスキルスクロールでは覚えられない。故に、君が用意した魔糸で練習してくれ」
見本の図形は貰ったので、用意した魔宝石糸で魔法陣らしきものを描くことになりました。こんなところで私自身の器用さを試されるとは思いませんでしたよ。まぁ、DEXの値による補正が多少はあるようで、少し引っ張られる感覚があります。
その感覚に逆らわずに手を動かし、陣を描いた結果、糸が光ると同時に【ファイアピラー】へと変化しました。
ピコン!
――――クエスト【罠魔法】がクリアされました――――
【罠魔法】 SP3
このスキルが取得できます。
――――――――――――――――――――――――――
「ふむ、なかなか器用だな。一度使えるようになってしまえば、他の罠魔法は売店で売っているスクロールを買っても問題ない。許可を出しておこう」
「ありがとうございます」
さて、取得してからスキルの仕様を確認しましょう。
えーと、クエストで要求された魔糸はあくまでもスキル取得に必要なものであって、発動にはいらないようです。まぁ、用意した糸の質でも威力が変化したら面倒ですね。
今使えるのは【ピラー】系で、カンストしている魔法スキルの属性が使えます。ファイアだと基本魔法くらいの威力で、フレイムになると下級魔法くらいの威力になるそうです。まぁ、現状では使うとしたら下級魔法くらいの威力で使うことになるでしょう。
ちなみに、これはスキルレベル1で覚える属性発動というアビリティの効果によるものらしいですね。
後は、罠魔法全般に言えることですが、発動条件は設置した場所に誰か触れたら、だそうです。つまり、私やパーティーを組んでいる時のメンバーでも罠が発動するということです。……これは、ダメージもありそうですね。
他の罠魔法は売店で買えるそうですが、ここに売店なんてあったんですねぇ。
まぁ、他の魔法を買って、どこかで試してみましょう。
売店は研究所の奥まったところにあり、許可がないと入れないので、今まで気付かなかったようです。ポーションが数種類売っていますが、この辺りは自分で作れるので買う必要は無さそうです。後は……、棚に並んでいても許可がないので何かわかりませんね。そして、スクロールコーナーを発見しました。
「えーと、買えるのは……」
お、ありました。
罠魔法用スクロールがあり、【マイン】【ホール】の2つが買えます。他にもあるのですが、罠魔法のスキルレベルが足りないので、買えないそうです。
ピラーはあるので、マインとホールの二つを買いましょう。1個100,000Gなので、手軽な値段です。
さて、後は試射ですが、その前に一つやることがあります。
「たのもー」
マギストからハーバスへと移動し、棟梁のもとへやってきました。目的はもちろん、あれです。
「おう嬢ちゃん、うまくいったみたいだな」
「そうなんですよ。それで、これはどうすればいいんですか?」
【収納加工部品】を見せて、ここまで出来ていることを確認してもらいます。まぁ、私は運んだだけなので、何がどうなっているのかは全くわかりませんが。
「おう、丁寧に加工されてるな。担当者の腕がいいんだろう」
棟梁が収納加工部品を受け取り。私が出来ることは終わりました。後は、改造が終わるのを待つだけです。
「加工が終わったら連絡する」
「わかりました。ちなみに、他に協力できることはありますか?」
場合によってはこれで派生したりするのですが、どうでしょう。
「嬢ちゃんに出来ることはないから、後は任せておけ」
まぁ、ずぶの素人がいても邪魔ということでしょう。それでは、連絡を楽しみにしていましょう。
今日は本当に移動が激しいですが、久々にセンファストの南東にある森へとやってきました。場所はどこでもいいのですが、プレイヤーが多いと罠にかかってしまうかもしれないので、試し打ちは場所を選ぶ必要があります。
近くにはあまりプレイヤーがいませんし、ここのMOBはたいして強くないので、ヤタ達も召喚しています。
「【ファイアピラー】」
まずは普通に詠唱します。せっかくなので無詠唱をしてもよかったのですが、詠唱にどの程度の時間がかかるのかを確認する必要があるので、一回目は普通に詠唱することにしています。
これは座標指定で設置するのですが、ある程度固定されていないといけないので、空中には設置できません。
信楽とコッペリアが罠魔法に興味津々のようで、触ろうとしていますが、それは危ないのでしっかりと下がってもらいましょう。
ここは森なので、いろいろと植物が生えています。そのため、枝やら蔦やらもあるので、投げやすい大きさに切り落としましょう。
それでは、一本目、ポイっとな。
設置した場所に枝が落ちると、火柱が上がりました。うーむ、研究所でドクトルがやった時とあまりかわりませんね。
次は何にしましょうかね。……あ、魔法陣一覧に使える属性と強さが一括で登録されました。つまり、罠魔法は属性・威力問わず、一度使えばいいようです。なので、後はマインとホールだけです。
「【ファイアマイン】」
同じように詠唱しましたが、罠魔法は詠唱が長めですね。まぁ、罠というのは事前に設置しておくものなので、動いている相手の足元に瞬時に設置するのはそれなりの技量がいるということですね。これは、無詠唱を主軸にするのも手ですね。
ちなみに、枝を投げ込んだ結果、爆発しました。まぁ、マイン、つまり、地雷ですから。
そして、次が最後です。
「【ファイアホール】」
名前からして落とし穴だと思いますが、属性やら威力やらがあるので、どんな挙動をするのか全くの未知数です。先ほどから信楽とコッペリアがうずうずしていますが、ダメージがないとはいえ、罠にかける気はないので、しっかりと捕まえています。
困りましたね。両手がふさがっているので枝が投げられません。
どうするか考えていると、ヤタが用意していた枝をくわえて動き出しました。
ポイっとな。
おっと、ヤタが枝を投げ込んだのを見て信楽とコッペリアが羨ましそうにしています。まぁ、早い者勝ちですね。
枝が落ちると、落とし穴に蓋がしてあったようで、それと共に枝が落下し、上から火が降り注ぎました。これは、思った以上に攻撃的ですね。火属性なら熱いで済みますが、土なら埋められてしまいますし、水なら溺れてしまいます。鉄属性も、土以上に危険です。
次に、魔法陣で試し打ちをしましたが、やはり、これは詠唱専用ですね。
設置完了までの時間は魔法陣の方が早いのですが、設置場所がばればれです。設置をする時にパーティーメンバーにも教えるという意味ではいいですが、頭のいいMOBだと避けられそうですね。
仕様についてもいくつか確認しましたが、罠の効果範囲にプレイヤーやMOBがいる場所には設置が出来ないようです。つまり、設置直後に罠が発動とはいきません。
信楽とコッペリアも実験した罠に枝を投げ込んだので満足したようです。
途中、信楽のなつき度が80%になったので、最大MPとSTRを五分づつになりました。100%になったとして、今までの減少値を考えるとコストがなくなるとも思えないので、これが最終値になりそうですね。
それでは、そろそろログアウトです。
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