6-11 -2nd wave- その2

 建物の上を移動し、中央のポータルから西の門へ伸びる大通りに近付いてきました。あの大通りを飛び越えるのは大変ですが、魔女の位置によってはやる必要がありますね。

 せっかくの機会なので移動の際に【加速】を使ったお陰で思ったより早く来れましたね。おっと、そろそろクールタイムが終わりますね。それではもう一回……。


「へぎゃ」


 おのれ段差め。慣れたと思って油断しているところに引っ掛けに来るとは。

 まぁ、ここからは魔女を探しながら動かなければいけないので、一度マップを見て確認しましょう。

 おや、ちょうど西の門へ伸びる大通りを中央へ向かっていますね。確か、見付けたら報告するよう言われているので、連絡しましょう。


「ユリアさん、パンプキンウィッチ6体見付けました。西門へ伸びてる大通りの真ん中くらいです」

「わかったわ。一応、取り合いには注意してちょうだい」

「りょーかいです」


 マップには追っているプレイヤーがいますね。けれど、攻撃が飛んでいるようには見えないので大丈夫でしょう。

 それでは、先頭の魔女から始めましょう。


「【ライトニングランス】」


 まだ距離がありますが、注意の外から飛んできたライトニングランスを避けることは出来ず、1体の魔女が落下し始めました。

 ディレイが終わると同時に武器を切り替えながら加速を使用し、一気に近付きます。ふむ、中央よりも少し向こう側ですね。


「【ロックウォール】、【震脚】」


 地味にこのアーツ、性能確認以外では初めて使うんですよね。思いっきり踏み込んで一時的にSTRを上げるわけですが、STRは加速力に影響があるそうなので使ってみましたが、ちょうど足場にしていた屋根にひびが入ってしまいましたよ。……まぁ、終わってから特殊クエストが出るはずなので、問題ありませんね、

 少し斜めに作ったロックウォールを坂を下るように駆け、魔女へ向かって飛び出しました。そこから、懐のスクロールを使い、距離をつめ、更にもう一歩空中ジャンプです。そして箒を掴み、最後にはもちろん。


「【キック】」


 強撃も使用し、威力の底上げをします。箒を掴んで無理やり狙いをつけた結果、見事に魔女の顔面に命中しました。

 最後に、クリスタルボムの魔法陣を5つ描きます。

 どうやら魔女に気絶が入ったようで、箒を掴んでいた手から力が抜けて離れていきます。気絶の状態異常って初めてみましたね。何せ、頭の上でヒヨコがピヨピヨと回っていますから。

 本当の最後には勢いよく着地し、体全体が痺れましたよ。それに、かなりの勢いだったので、落下ダメージも今までで一番多い気がします。いえ、さっきザインさんに話を聞くために突っ込んだ時の方が多いかもしれませんね。

 魔女を踏み付けたままの私の周囲にクリスタルボムが落下し、爆発しました。


「ぐぁ……」


 全方向から衝撃を受けた結果、ダメージはありませんが影響は受けるので、倒れることが許されませんでした。

 さて、追加の一体目から箒を確保出来るとは、上々のスタートです。

 次の魔女の位置を確認しようとマップを確認したところ、西側から魔女を追っていたプレイヤーが近くに来ていました。


「もしかして君が南側のプレイヤーか?」

「そうですよ。ユリアさんに言われて来ました」

「そうか。それにしても、随分と無茶をするな」


 どうやら見られていたようですね。まぁ、今倒した魔女も西側から来たので、当たり前ですね。


「ところで、その箒、見間違えじゃなければ……」

「見間違いです」


 箒をしまい、杖を取り出しました。魔女はここから北へ移動しているので、屋根の上に登って建物の上を移動しましょう。

 ステアーとロックウォールを使い、足場を追加しました。元々足場になる場所があったので、ショートジャンプは必要ありませんね。


「あ、ちょっと待ってくれ」


 待てと言われて待つ人はいません、……いえ、知り合いなら待ちますね。つまり、知らない人相手なら待ちません。

 西から来たパーティーはほとんどのメンバーがまだ追いついておらず、目撃者は足の速い斥候系プレイヤーだけなので、放っておきましょう。

 さて、あっちですね。


「君を魔法使いにしとくのはもったいないな」


 おや、流石は斥候系プレイヤーです。私が追加した足場を利用し建物の上まで追いかけてきたようです。


「それはどうも。パーティー放置してますよね」

「どのみち、遭遇出来なきゃ意味がないんでな。それに、無理やり付いてきた配信者が足手まといでな。見せ場がどうとか言って邪魔されたが、何とか2体は倒したんだぜ。まー、残りには逃げられたがな」


 このプレイヤー、私よりも速いんですよね。まぁ、斥候系のプレイヤーが魔法使いである私よりも遅いとなると色々とやり直した方がよくなりますが。


「そうですか」


 ショートジャンプを使って一時的に引き離してもすぐに追いつかれるのでどうしましょうかね


「どうだ、あのモンスターの討伐、協力しないか?」

「お断りします」

「おいおい、俺は必要ないってか?」


 普段からソロの私に何をいっているんですかね。

「即席で協力出来るほどのプレイヤースキルなんて持ってませんよ」

「……お、おう。そうか。ところで、そっちにも配信者がいたと思うが、付いてきてないのか?」

「声をかけられる前に来ましたし、ネコにゃんさんとはフレンド登録してあるので、来たいなら勝手に来ると思いますよ」

「あー、あの人か。俺もそっちの人がよかったぜ。それじゃ、頼んだぜ」


 そういうと急に走る方向を変えました。方向から考えてパーティーメンバーの元へ向かったのでしょう。それでは私は魔女の元へ向かいましょう。ヤタが追っているため、居場所はわかっていますから。後は、倒しやすい場所を探すだけなのですが……。撃ち落としてから格闘系のスキルで強引に奪い取りましょう。下手に方法を変えるよりも上手く行っている方法を続けるべきですね。

 しばらくして一番後ろの魔女を射程圏内に捉えたので、行動開始です。


「【ライトニングランス】」


 後は落ちてきた魔女から震脚や強撃を使ったキックで気絶させ、クリスタルボムで爆破すれば終了です。

 少々時間がかかりましたが、西側から侵入した6体の魔女は全て倒しました。もちろん、箒も回収しましたし、操作の練習もしました。

 結果として、事前に軌道を設定するのと同様に発動してから操作するのも3発が限界ですね。まぁ、天之眼の視界内だとぎこちないですが、通常の視界ではスムーズに操作出来るので、そこは意識というか、慣れの問題でしょう。


「ユリアさん、西側からの6体、倒しましたよ」

「ええ、向こうから連絡を受けているわ。随分と強引な倒し方だったようね。……自分ごと爆破するなんて」

「自分にはダメージがないんですから、普通の手段だと思いますよ」


 爆風を利用した移動なんてものが大昔から使われているのですから、自分を巻き込むのなんて普通ですよ。


「……そうね。それで、北と東だけれど、北は自分達でやると言っているので、東を優先してちょうだい。東は後2体と聞いているのだけれど、二手に分かれて逃げたそうよ」


 残りの2体は南側と西側へ逃げたらしく、ここから近いのは西側なので、そちらへ向かうことにしました。東側の追手は追いかけるのが精一杯らしく、私が倒しても文句を言われることはないようです。

 来た道を戻る形になっていますが、移動に使っているスキルのレベル上げになるのでよしとしましょう。

 途中、赤を基調とした鎧の一団がちまちまと魔女達と戦っていましたが、手出し無用らしいので、放置ですね。箒を回収出来ないのは残念ですが、ああいう上下関係の厳しそうなクランとは関わりたくないものです。

 しばらくしてヤタが目的の魔女を発見してくれました。少し離れた位置の地上を数人のプレイヤーが走っていますが、どうやら魔女に翻弄されて近付けないようです。さっきの斥候系のプレイヤーは私の動きを見てすぐに建物の上に登ってきたというのに、何故地面しか走らないのでしょうか。

 さて、それでは始めましょう。

 ………………

 …………

 ……


「ユリアさん、追加の1体倒しましたよ」

「助かるわ。東のもう1体は向こうで倒したそうよ。北はまだ残っているそうだけれど、どうする? こちらも佳境に入ったわよ」


 うーむ、どうしましょうかね。向こうに戻ってもスキルレベルを上げられるスキルは杖術と魔法陣に関わるスキルくらいですが、こちらなら他の移動系や結晶魔法も上げることが出来ます。この単独行動がイベントの成績にどの程度反映するかはわかりませんし。


「北は魔女を倒しきれそうなんですか?」

「倒せるとは思うわよ。ただ、長引くでしょうけど」


 どうやら中央にある防衛設備を動かしているらしく、倒せないことはないそうです。こちらの方へ逃げてきてくれれば楽なのですが、どうしましょうかね。


「うーん……」

「リーゼロッテ、総大将から要請が来たわ。街に侵入した魔女に関しては、全て任せるそうよ。ロイヤルナイツのクランメンバーが文句を言っても、クランリーダーからの要請だと言えばいいって」


 おや、随分と太っ腹ですね。どうせならちゃんと下の方まで話を通しておいて欲しいですが、やっていいのであれば、やってしまいましょう。


「お土産、期待しててくださいね」

「そうね、どう倒したのか聞かせてもらうわ」


 さーて、残りは4体らしいので、倒しきってみせましょう。

 ちなみに、一度侵入を許してからも魔女の追加があったそうですが、追手にそこまでの人数を割けるわけではないので、街に入られる前に無理やり倒したそうです。前衛のプレイヤーには負担をかけたそうですが、前衛も大技を連発して派手な戦闘だったと聞かされました。

 どうせなら魔女の追加、欲しかったんですけどねぇ。

 魔女がいるらしい中央付近へと近付きながらヤタの視界を確認すると、ポータル付近にある砦から対空砲火をしているようで、あんまり近付きたくない状態です。砦の耐久が減るとバフの効果が減りますし、フィーネさんがどこかへ行くと大多数のバフが消えるそうです。そのため、あそこで直接指揮を執っているそうですが、動くことが許されない役目なんてやりたくありませんね。

 さて、射程圏内なので、始めましょう。

 1体目を倒した段階で、地上へと降りてしまったので、砦の壁を利用して上の方へと登りました。勢い余って一番上まで登ってしまいましたよ。


「リーゼロッテさんですね」


 赤を基調とした鎧の女性がウィンドウや設置してある操作盤を操作しながら声をかけてきました。


「あー……、そうです」

「私はフィーネと申します。正確にはお久しぶりというべきなのですが、その様子を見るに覚えてらっしゃらないのでしょう」


 ……まぁ、頭の上に名前が見えないので、知らない人という認識です。


「お邪魔しました」

「ご協力、感謝します」


 まだ魔女が3体残っているので、手早く倒してしまいましょう。……おっと、クリスタルボムのクールタイムが終わっていないので、まだ行けませんね。


「クールタイムの都合があるので、少し休ませてもらいます」

「わかりました。ここは安全なので、ゆっくりしていてください」


 いくらバフで短くなっているとはいえ、演奏系のバフはここまで届きません。そのため、施設バフだけなので、短くなっていても5倍すればそれなりの時間になります。


「魔女の装備を奪っているそうですね」

「ん……げふぉ、げふぉ、な、……何の、こと、です……か?」


 不意打ちとはやりますね。流石にこちらを見る余裕はないようなので、表情はわかりませんが、確信があるのでしょう。


「答えたくないのでしたら、無理には聞きません。ただ、特殊な装備だった場合、こちらにも流していただけたら、それ相応の対価をお支払いします」

「何のことかはわかりませんが、覚えておきます」


 肯定しない限りは認めたことになりません。ですが、余裕があったら持ち込むことを考えましょうかね。ええ、考えるだけですが。

 それではクールタイムも終わったので、次を倒しましょう。ちょっと休憩している間に残りが2体になってしまいましたが、仕方ありませんね。どうにもムキになったと思われる声がしましたし。

 ………………

 …………

 ……

 何とか残りの2体は私が倒しました。これで箒は14本です。赤い鎧のプレイヤー数人に凄い顔で見られましたが、フィーネさんが私に任せている以上、何も言えないようです。


「ユリアさん、こっちは終わりましたよ」

「え、ええ。ちょっと、……待って、ちょうだい」


 おや、取り込み中のようですね。こっちは終わったので南に戻……ああ、ここからならポータルを使った方が早いですね。

 そんなわけでポータルで南の砦へと移動し、元いた場所へ到着しました。


「おかえりなさい、助かったわ」

「いえいえ、お土産も用意してありますよ」

「そう。なら、後で聞かせてもらうわ」


 ユリアさんに終了報告した後にグリモア達に状況を聞きました。どうやらこちらも大詰めらしく、最初よりも大きなカボチャの馬車が出てきてパンプキンプリンセスが乗っているそうです。プリンスと行動は同じようですが、MOB自体の耐久とバフの上昇量が上がっているとのことです。それでも、残り2体なので、既にかかっているデバフが上回っているそうで、一般MOBは邪魔にならないそうです。

 それではグリモア達と同じ様に魔法を使いましょう。

 そして――。


 ――――Congratulation ――――


「疲れたー」

「此度も我々の勝利だ」

「これで第二ウェイブ終了ですね」

「最初よりは強かったね」


 これにて第二ウェイブ終了です。ドロップがないのはわかっていましたが、思いがけない収穫があり、スキルレベルも結構あがりました。


 ピコン!

 ――――System Message・所持スキルがLVMAXになりました―――――――

 【識別】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【観察】 SP5


 【看破】がLV50MAXになったため、上位スキルが開放されました。

 【直感】 SP5


 【識別】【看破】がLV50MAXになったため、複合スキルが開放されました。

 【解析】 SP5


 【識別】【看破】【探索】がLV50MAXになったため、複合スキルが開放されました。

 【感知】 SP5


 【識別】【探索】がLV50MAXになったため、複合スキルが開放されました。

 【生命感知】 SP5


 これらのスキルが取得出来ます。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 主に識別と看破系統のスキル群ですね。

 観察と直感はそれぞれの性能が強化されたもので、その複合である解析は鑑定系や発見系でもわからないものを調べる時に、MPを消費した量に応じて確率でわかるようになるというスキルです。まぁ、今のスキルレベルではわからないものでも、MPをつぎ込めばわかるかもよ、というものですね。成功するまでにMPがどれだけ必要になるかはわかりませんが。

 次の感知は凄いスキルです。何せ、広さはスキルレベル依存ですがマップ上で知っているMOBの位置と名前がわかるようになります。特定のMOBを探す時に便利そうですね。

 最後に生命感知ですが、これは条件を満たした一般MOBのHPバーが見えるようになるそうです。ふむふむ、ザインさんがHPバーが存在すると言っていたのはこういうことですか。ハヅチや時雨も知っていた可能性がありますが、私がその辺りのスキルを持っているので、黙っていてくれたのでしょう。

 ちなみに、条件とはそのMOBを倒した回数が関係しているようで、始めはまったくわかりませんが、倒せば倒すほどHPバーがはっきりと見えるようになるそうです。

 一気にSPを25も使いましたが、消費に見合う効果ですよ。きっと。

 新しいスキルの次は新しいアーツです。

 体術と闘技がLV11まで上がったので、新しいアーツを覚えました。

 体術の方は【受け流し】というアーツで、素手などの格闘系スキルが適応される部位や防具で防御する時に補正がかかるそうです。何とも拳法的なスキルですが、足の方は武器を持っていても適応されるので、足技を練習しましょうかね。

 闘技は【強靭】というアーツで、MP消費で一時的に防御力が上がるそうです。ただ、素手やそれに近い部位限定というととで、金属装備の部位にはほぼ意味がないようです。

 残念ながら結晶魔法はLV15まで届かなかったのでレーザー系はお預けですね。


『KAAA』


 そうですね。当然忘れていませんよ。なんとヤタのなつき度が80%を越えました。つまり、ヤタの召喚時の維持コストが最大MP2割から最大MP1割に減ったということです。最初はMPを半分持っていっていたヤタが1割で我慢出来るのか疑問ですが、私のMPの増加具合を考えると、むしろ増えている可能性もありますね。詳しい数値はわかりませんから。


「よっし、確認終わり」

「汝も新たな力を手に入れたようだな」

「まーね」


 みんなで雑談をしているとユリアさんの連絡が一段落したようです。


「ユリアさん、お土産いります?」

「ええ、聞かせてもらうわ」


 まぁ、今回のイベント、ドロップがないのでお土産話だと思ってもしかたありませんよね。


「じゃあこれ、みんなにも」


 当然グリモアとヒツジと花火にも1本づつ渡します。


「な、汝……」

「お姉様……」

「え、これ……」

「え?」


 ちなみに、識別の結果はこれです。


――――――――――――――――

【南瓜魔女の箒】

 耐久を消費し、飛行が可能になる

耐久:72%

 攻撃力:▼

 魔法攻撃力:▼

 INT:▼

 MND:▼

 MP:▼

――――――――――――――――


 願いの長杖から変更するとこうなるので、恐らくですがステータス補正がないのでしょう。素手から変更した場合は。


――――――――――――――――

【南瓜魔女の箒】

 耐久を消費し、飛行が可能になる

耐久:72%

 攻撃力:▲

 魔法攻撃力:▲

――――――――――――――――


 こうなので、ある程度の攻撃力はあるようです。


「いやー、凄いですよね。飛べるんですよ」


 ふむ、みんな驚きのあまりに返事が出来ないようです。


「あ、これの修理出来るかシェリスさんに聞いてきますね」


 耐久の消費がどの程度かはわかりませんが、修理できないのであれば、使い所は考えなければいけませんから。

 フレンドの居場所はわかるのでシェリスさんに会いに行きましょう。





 シェリスさんは中央付近にあるイベント専用の工房にいました。


「シェリスさ……」


 おっと、修理に集中していますね。よく考えてみるとシェリスさんの作業を見るのは初めてです。とりあえず、60分というカウントが進んでいますが、まだ余裕があるので待っていましょう。

 なつき度の上がったヤタと戯れているとシェリスさんがこちらに気付きました。


「あ、リーゼロッテ、いたなら声かけてくれればいいのに」

「急ぎじゃないですし、熱心に作業していたので」


 シェリスさんがウィンドウを操作するような仕草をしたので、修理の終わった装備を送ったのでしょう。


「それで、リーゼロッテも修理依頼?」

「そうなんですよ。これの修理を頼みたくて」


 インベントリから箒を一つ取り出し、シェリスさんに手渡します。さてさて、どんな反応をするのやら。


「箒型の……つ、……え?」


 何かを聞きたそうに私を見てきたので、そのまま無言で笑いかけておきました。


「リーゼロッテの、依頼は……、これの、修理?」


 ここでも無言で頷きます。もちろん笑顔は忘れません。


「えっと……」


 ここでシェリスさんが動きました。業を煮やし、内緒話モードに変更しました。


「この杖、素材がわからないから修理できそうにないよ。ごめん」


 あー、そういえば修理に何が必要か知らないんですよね。私は笑顔のまま内緒話モードで返事をします。


「それは残念です。今それを含めて10本持ってるんですけど、1本研究用に預けていいですか?」


 私の返事を聞いたシェリスさんの表情が引きつっています。全ての魔女から回収出来ていれば何本かお土産にしたのですが、グリモア達と違って魔法職ではないので、研究用が精一杯です。


「えっと、それは耐久を回復させる方法がわかったら依頼するってこと?」


 その通りなので大きくうなずいておきましょう。耐久がなくなると消滅するのでこの箒は特に気を付けなければいけません。


「では、それは預けておくので、何かわかったら教えて下さい。壊さなければ多少は使ってもいいですよ」


 それでは、砦に戻りましょう。

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